こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「勤務先からストックオプションをもらったけれど、行使したら税金がかかるのか分からない」「上場したので株を売りたいが、利益をいくらで計算すればいいのか」。会社員ならではのこの疑問は、勤め先がスタートアップや上場企業だと決して珍しくありません。
ストックオプションの税金は、そのストックオプションが「税制適格」か「税制非適格」かで、課税されるタイミングも税金の種類も大きく変わります。この記事では、国税庁のタックスアンサーと租税特別措置法の条文をもとに、違いと売るときの取得価額を整理します。
結論:税制適格なら売るまで課税なし、非適格なら行使した時点で給与として課税
| 項目 | 税制適格 | 税制非適格 |
|---|---|---|
| もらったとき(付与時) | 課税なし | 課税なし |
| 行使したとき | 課税なし(経済的利益に所得税を課さない) | (行使時の株価 − 権利行使価額)が原則として給与所得 |
| 株を売ったとき | (売却価格 − 権利行使価額)が譲渡所得 | (売却価格 − 行使時の株価)が譲渡所得 |
| 売るときの取得価額 | 権利行使価額(払い込んだ額) | 行使時の株価 |
| いちばんの注意点 | 保管口座から株を移すと、その時の時価で売ったとみなされる | 行使後に株価が下がっても、行使時の利益への課税は消えない |
出典は、国税庁のタックスアンサー「No.1540 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合」、「No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について」、そして租税特別措置法第29条の2です。
自分のストックオプションが「税制適格」かどうかを確かめる
税制適格とは、租税特別措置法第29条の2の要件を満たすストックオプションのことです。条文では、要件が「付与に係る契約」に定められていることが前提になっています。つまり、自分で判断するより、会社から受け取った新株予約権の割当契約書(付与契約書)を見るのが確実です。
条文から、取締役・従業員に付与される場合の主な要件を抜き出すと次のとおりです。
| 要件 | 内容(租税特別措置法29条の2第1項より) |
|---|---|
| 対象者 | 付与した会社(または一定の子会社関係にある法人)の取締役・執行役・使用人。付与決議の日に大口株主だった人とその特別関係者は除く |
| 行使できる期間 | 付与決議の日後2年を経過した日から、10年を経過する日まで(設立5年未満などの要件を満たす会社は15年) |
| 年間の権利行使価額 | 1年間の合計が1,200万円以内(設立5年未満の会社は行使価額を2で割って、5年以上20年未満などの会社は3で割って判定) |
| 行使価額の水準 | 1株あたりの権利行使価額が、契約したときの1株あたりの株価以上 |
| 譲渡 | 新株予約権を譲渡してはならないと定められている |
| 株の管理 | 行使で取得した株を、証券会社などの専用口座で管理する(譲渡制限株式なら発行会社による管理も可) |
年間の権利行使価額は、2で割る会社なら実質2,400万円、3で割る会社なら実質3,600万円まで行使できる計算です。上限を超えて行使した分は、特例の対象外になります(同条第1項ただし書)。
また国税庁の質疑応答事例「ストックオプション契約の内容を税制非適格から税制適格に変更した場合」では、付与のときに要件を満たしていなかった契約を、行使の前に変更しても特例は使えないとされています。適格かどうかは、もらった時点の契約で決まると考えてください。

契約書に「税制適格」と書かれていなくても、上の要件が並んでいれば適格の可能性が高いです。迷ったら人事・総務の担当部署に「租税特別措置法29条の2の要件を満たした契約か」と聞くのが早道です。
税制適格の場合:課税は売ったときにまとめて
税制適格のストックオプションを行使して株を取得しても、その時点の「株価と行使価額の差」には所得税がかかりません。国税庁のNo.1540によると、取得した株(特定株式)を売ったときに、譲渡所得として申告分離課税の対象になります。
このときの取得価額は、行使した日の株価ではなく、払い込んだ権利行使価額です(No.1540、所得税法施行令109条)。行使時の値上がり分と、行使後の値上がり分が、売却時にまとめて譲渡所得になるイメージです。
保管口座から株を移すと「売った」とみなされる
税制適格の株は、証券会社などの専用口座(または発行会社)で管理されます。租税特別措置法29条の2第4項では、この株の返還や移転があった場合、その時の価額で譲渡があったものとみなすと定めています。「別の証券会社に移してから売ろう」と動かした時点で課税が起きることがあるので、売るときは専用口座のまま手続きするのが基本です。
なお、No.1540では、この特定株式は特定口座やNISAの対象にならないとされています。証券会社が税金を計算してくれる特定口座とは違うので、売って利益が出たら自分で確定申告を考える必要があります(「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)」を使います)。
税制非適格の場合:行使した時点で給与として課税
国税庁のNo.1543では、税制非適格のストックオプションについて、行使時の株価と権利行使価格の差額が経済的利益として課税されると説明しています。雇用関係に基づいて与えられたものは給与所得になり、給与と合算して累進税率で課税されます。
退職後に行使した場合でも、原則は給与所得です。ただしNo.1543では、付与のあと短期間で退職が予定されていて、行使で得た利益の大部分が長期間の株価上昇によるものといった場合には、雑所得になるとしています(所得税基本通達23〜35共-6)。
行使で取得した株を売るときは、行使時の株価が取得価額になります。行使時に給与として課税された分を、売却時にもう一度課税しないための仕組みです。
勤務先が国内の会社なら、行使益が給与として源泉徴収票に含まれているかを確認してください。外国の親会社から付与された場合などで源泉徴収票に含まれていなければ、確定申告が必要になります。海外の証券口座で株を管理している場合の申告は海外の証券会社で株を買ったら税金はどうなる?も参考にしてください。
計算例:同じ株価の動きでも税金はこう違う
数字はすべて仮の例です。権利行使価額500円で1,000株を行使し、行使時の株価が2,000円、その後2,500円で売った場合を比べます。譲渡所得の税率は所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計20.315%、給与所得の税率は仮に合計30%としています(実際の税率は年収などで変わります)。
| 項目 | 税制適格 | 税制非適格 |
|---|---|---|
| 行使時の課税対象 | なし | (2,000円−500円)×1,000株=150万円(給与所得) |
| 行使時の税金 | 0円 | 約45万円(仮に30%) |
| 売却時の課税対象 | (2,500円−500円)×1,000株=200万円 | (2,500円−2,000円)×1,000株=50万円 |
| 売却時の税金(20.315%) | 約40.6万円 | 約10.2万円 |
| 合計 | 約40.6万円 | 約55.2万円 |
非適格で行使後に株価が下がると何が起きるか
同じ非適格の例で、行使後に株価が1,200円まで下がって売った場合を考えます。行使時の150万円には給与として課税されたままで、売却では(1,200円−2,000円)×1,000株=80万円の損失になります。株の売却損は給与所得と相殺できないので、「税金だけ払って、株では損をした」という形になりかねません。行使のタイミングと、行使後すぐに売るかどうかは、納税資金も含めて考えておくべきポイントです。
損失の扱いの基本は株の利益が20万円以下なら確定申告は不要?や、取得価額の考え方は取得価額がわからない株を売ったら税金はどうなる?でも整理しています。
売る前に確認したい3つのこと
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| インサイダー取引の規制 | 自社株の売買は、未公表の重要事実を知っている期間はできない。社内の売買ルール(売買禁止期間・事前申請)も確認 |
| 売れる時期(ロックアップなど) | 上場直後は、一定期間売却が制限される契約になっていることがある |
| 納税資金 | 非適格は行使した年の給与として課税されるので、翌年の確定申告や住民税の支払いに備える |
自社株ならではの規制は取引先や自社の株を買うとインサイダー取引になる?で詳しく解説しています。従業員持株会の株も持っている人は会社を辞めたら従業員持株会の株はどうなる?もあわせてどうぞ。
「上場前のストックオプションを譲る」という勧誘には乗らない
ストックオプションや未公開株は「上場すれば何倍にもなる」という話と結びつけやすく、投資詐欺の題材になりやすい分野です。山崎正義が300万円の被害を受けた頃から、「特別にあなただけ」「上場が決まっている」と言って未公開の権利や株を売りつけるのは典型的な手口のひとつです。
- 税制適格のストックオプションは、要件として譲渡が禁止されています。「ストックオプションを譲ります」「権利を買い取ります」という話自体を疑ってください
- 未公開株の売買を勧誘してくる相手が金融商品取引業者かどうかは、金融庁の免許・許可・登録等を受けている業者一覧で確認できます。ただし登録があることと、勧誘内容が安全かどうかは別の話です
- 勤務先のストックオプションについての情報は、人事・総務部門や会社が指定した証券会社から受け取るのが基本です
外資系の親会社から株そのものを受け取るRSU(譲渡制限付株式)の場合は、外資系の親会社からRSU(譲渡制限付株式)をもらったら確定申告は必要?給与になるタイミングと、海外口座の株を売るときの計算で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. ストックオプションをもらっただけで税金はかかりますか?
無償で付与された場合、税制適格・非適格のどちらでも付与時には課税されません(No.1543)。課税のタイミングは、適格なら売却時、非適格なら行使時と売却時です。なお、時価で払い込んで取得する「有償ストックオプション」は扱いが異なるため、会社の説明資料で確認してください。
Q2. 税制適格の株を売ったら、確定申告は必要ですか?
No.1540では、特定株式は特定口座の対象外とされています。利益が出た場合は、確定申告の要否を自分で確認する必要があります。給与所得者の申告不要の基準や住民税の扱いは、株の利益や配当で会社に知られる?の記事も参考にしてください。
Q3. 年間の行使上限を超えてしまったらどうなりますか?
租税特別措置法29条の2第1項ただし書では、上限を超えることとなる行使による株の取得については特例を適用しないと定めています。複数回に分けて行使する予定がある人は、その年の行使額の合計を事前に確認しておきましょう。
Q4. 退職したら、ストックオプションはどうなりますか?
退職すると行使できなくなる、または一定期間内に行使する必要がある、といった条件は会社ごとの契約で決まります。税金の面では、非適格の場合、退職後の行使でも原則は給与所得で、一定の場合に雑所得になります(No.1543)。
Q5. 海外に赴任することになりました。何か手続きは必要ですか?
租税特別措置法29条の2第1項第7号では、契約から行使までの間に国外転出する場合、会社に通知することが要件として定められています。赴任前に人事部門と、行使や保有の扱いを確認してください。
まとめ
- ストックオプションの税金は、税制適格か非適格かで課税のタイミングが変わる
- 税制適格は行使時に課税されず、売却時に(売却価格−権利行使価額)が譲渡所得になる
- 税制非適格は行使時に(株価−権利行使価額)が原則として給与所得になり、売却時の取得価額は行使時の株価
- 適格の株を専用口座から移すと、その時の時価で譲渡したとみなされることがある
- 「上場前のストックオプションを譲る」という勧誘は疑う。適格なら譲渡は禁止されている
山崎から一言



ストックオプションは「もらった」だけで安心しがちですが、税金のタイミングを知らないまま行使すると、株価が下がったときに税金だけが残ることがあります。行使の前に、契約書と人事の説明を一度落ち着いて読み直してください。
相談先まとめ
- 税金の個別の判断:お住まいの地域を管轄する税務署、または税理士
- 投資の勧誘トラブル:消費者ホットライン(188)、金融庁 金融サービス利用者相談室
- 詐欺の疑いがある場合:警察相談専用電話(#9110)
- 法的な相談:法テラス、日本弁護士連合会
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。












