こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「米国株を海外の証券会社で直接買ってみたい」「SNSで『海外口座なら日本の税金はかからない』と聞いた」——投資に慣れてきた会社員の方から、海外の証券会社についての質問を受けることが増えました。
先に結論を言うと、日本に住んでいる人は、海外の証券会社で得た利益も日本で課税されます。そのうえ、海外の証券会社には日本の「特定口座」がないので、利益の計算も確定申告も自分で行うことになり、損失が出たときに使える仕組みも国内の証券会社より狭くなります。この記事では、国税庁・金融庁の公表資料と法令をもとに、海外の証券会社を使う前に知っておきたい税金と手続き、そして「海外口座」をうたう勧誘の注意点を整理します。
米国株の配当にかかる二重課税と外国税額控除の基本は米国株の税金と確定申告|配当の二重課税・外国税額控除と特定口座での扱いを整理で、投資の利益が税務署に伝わる仕組みは株や暗号資産の利益を申告しないと税務署にわかる?で説明しています。この記事は「海外の証券会社に口座を持つと何が変わるか」に絞ります。
結論:海外の証券会社では「税金のことは全部自分で」が前提になる
要点を先にまとめます(2026年10月20日時点で、国税庁・金融庁のサイトと法令で確認できた内容です)。
- 海外で株を売った利益も日本で課税される:居住者は国内外どこで生じた所得も日本で課税されるのが原則です(国税庁タックスアンサーNo.1937)
- 特定口座がないので、年間の損益を自分で計算して確定申告する:証券会社が税金を差し引いてくれる「源泉徴収ありの特定口座」は、日本の証券会社の制度です
- 損失の繰越控除と配当との損益通算が使えない:この特例は、日本で登録を受けた証券会社(第一種金融商品取引業者)や登録金融機関への売委託による売却などが対象です(租税特別措置法37条の12の2第2項)
- 海外の財産が年末に5,000万円を超えたら「国外財産調書」の提出が必要:期限は翌年6月30日。出さないと加算税が重くなり、罰則もあります(国税庁タックスアンサーNo.7456)
- 日本で登録のない海外業者からの勧誘には応じない:日本の居住者を相手に取引をする海外業者は、日本の金融商品取引法の登録が必要です(金融庁)
国内の証券会社と海外の証券会社で、税金の扱いはどう違うか
違いを表にまとめます。国内の証券会社の欄は、特定口座(源泉徴収あり)を使った場合です。
| 項目 | 国内の証券会社(特定口座・源泉徴収あり) | 海外の証券会社 |
|---|---|---|
| 売却益の税率 | 20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%) | 同じく日本で課税(自分で申告して納付) |
| 利益の計算 | 証券会社が計算し、年間取引報告書を発行 | 取引履歴から自分で計算(円換算も自分で) |
| 確定申告 | 原則不要(申告するかを選べる) | 利益が出たら原則必要 |
| 税金の天引き | 売却のたびに証券会社が差し引く | 日本の税金は差し引かれない |
| 損失の繰越控除(3年) | 確定申告すれば使える | 使えない |
| 配当との損益通算 | 使える | 使えない |
| NISA | 使える(NISA口座を開いた金融機関で) | 使えない |
税率は国税庁タックスアンサーNo.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」によります。復興特別所得税は、所得税とあわせて基準所得税額の2.1%を申告・納付します。
「海外なら日本の税金はかからない」は誤り
国税庁タックスアンサーNo.1937「居住者が海外で株式等を売却した場合の課税関係等」は、日本の居住者は国内で生じた所得だけでなく国外で生じた所得も日本で課税されること、海外で株を売った場合も国内で売った場合と同じように課税されることを示しています。
現地(たとえば米国)で税金が差し引かれた場合は、確定申告で外国税額控除を受けられることがあります(国税庁タックスアンサーNo.1240「外国税額控除(居住者の場合)」)。現地で税金を払ったからといって、日本で申告しなくてよいわけではありません。
損失が出たときに困る:繰越控除と損益通算が使えない理由
国内の証券会社で株を売って損をした場合、確定申告をすれば、その損失を同じ年の配当と相殺したり、翌年以降3年間に繰り越して将来の利益と相殺したりできます(国税庁タックスアンサーNo.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」)。
ところが、この特例の対象になる「上場株式等の譲渡」は法律で範囲が決まっています。租税特別措置法37条の12の2第2項1号は、対象を金融商品取引法に規定する金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)または登録金融機関への売委託による譲渡などとしています。日本で登録を受けていない海外の証券会社に直接注文して売った場合は、この号に当たりません。
つまり、海外の証券会社で出した損失は、翌年に繰り越せず、配当とも相殺できないということです。「利益が出たら課税され、損をしたら救済が小さい」という非対称な扱いになる点は、口座を選ぶ前に知っておきたいところです。
同じ年に別の株を売って出た利益と差し引けるかなど、個別の計算は取引の内容で変わります。申告の前に、税務署か税理士に確認してください。国内口座での損益通算と繰越控除の基本は損益通算と繰越控除の基本|複数口座・複数年にまたがる損失の扱い方で整理しています。
自分で計算するときに必要になるもの
海外の証券会社では、日本の「特定口座年間取引報告書」にあたる書類は出ません。確定申告の「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」は、自分の取引記録から作ることになります。
| 必要なもの | なぜ必要か |
|---|---|
| 年間の売買履歴(約定日・数量・単価・手数料) | 銘柄ごとの取得費と売却額を出すため |
| 約定日ごとの為替レート | 外貨の金額を円に直すため。国税庁の通達では、売却代金は約定日のTTB(対顧客直物電信買相場)、取得価額は約定日のTTS(対顧客直物電信売相場)で換算するのが原則です |
| 配当の受取明細と現地で差し引かれた税額 | 配当所得の申告と外国税額控除のため |
| 同じ銘柄を何回かに分けて買った記録 | 取得費を平均の単価(総平均法に準ずる方法)で計算するため |
為替の動きで、ドル建てでは損なのに円に直すと利益になる(またはその逆の)こともあります。株価と為替の両方で資産額が動く仕組みは円高・円安で米国株の資産額はどう変わる?で説明しています。
会社員の「20万円」の扱い
給与を1か所から受けている会社員は、給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告が不要になる場合があります。ただし、この場合も住民税の申告は別に必要です。海外の証券会社の利益は特定口座の利益と違って「申告しない」を選ぶ仕組みがないので、20万円の判定に入ります。詳しくは株の利益が20万円以下なら確定申告は不要?で説明しています。
年末に5,000万円を超えたら「国外財産調書」
海外の口座の残高が大きくなると、税金の申告とは別に、国外財産調書の提出が必要になることがあります。国税庁タックスアンサーNo.7456「国外財産調書の提出義務」(令和8年4月1日現在法令等)の内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出する人 | 居住者(非永住者を除く)で、その年の12月31日に、価額の合計が5,000万円を超える国外財産を持っている人 |
| 期限・提出先 | 翌年の6月30日まで、所得税の納税地の税務署長へ(国外財産調書合計表も添付) |
| 書くこと | 国外財産の種類・数量・価額など |
| 出していた場合 | 記載した国外財産について申告漏れがあったとき、過少申告加算税などが5%軽減される |
| 出していない・記載が不十分な場合 | 国外財産に関する申告漏れについて、過少申告加算税などが5%加重される(税務調査で関係書類を提示しないなどの場合は10%加重) |
| 罰則 | 偽りの記載や、正当な理由なく期限までに出さなかった場合、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(期限内に出さなかった場合は情状により刑を免除できる) |
会社員で5,000万円を超える人は多くないかもしれませんが、「年末時点の時価で判定する」こと、「海外の預金や不動産も合計する」ことは覚えておいてください。
海外とのお金の出入りは記録に残る
国内の金融機関を通じて100万円を超える国外送金や国外からの受け取りをすると、金融機関は「国外送金等調書」を税務署に提出します(国外送金等調書法)。また、各国の税務当局は、外国の居住者が持つ金融口座の情報を共通報告基準(CRS)で毎年交換しています。海外の口座だから税務署に知られない、という前提では考えないほうが安全です。
「海外口座」をうたう勧誘に注意:日本の登録がない業者とは取引しない
ここからは、300万円を失った山崎がいちばん伝えたいことです。「海外の証券会社なら税金がかからない」「日本では買えない高利回りの商品がある」という勧誘は、まず疑ってください。
金融庁は「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」で、海外にある業者であっても、日本の居住者のために、または日本の居住者を相手に金融商品取引を業として行う場合は、日本の金融商品取引法にもとづく登録が必要だと説明しています。日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは禁止されています。
同じページで金融庁は、無登録の海外業者は業務の実態がつかみにくく、トラブルが起きても業者を追及するのは極めて難しいと注意しています。出金を求めても応じてもらえず、そのうち連絡が取れなくなったという相談例も載っています。
勧誘を受けたら、次の3点を確かめてください。
- 金融庁の登録業者一覧に、その業者の商号と登録番号があるか(調べ方は無登録業者の見分け方|金融庁の登録一覧で確かめる4ステップ)
- 「税金がかからない」「元本が減らない」など、制度と矛盾する説明をしていないか:日本の居住者が海外で得た利益は、日本で課税されます
- SNSやマッチングアプリで知り合った人から、特定の海外サイトへの入金を勧められていないか:送金先が海外だと、取り戻すのはさらに難しくなります
日本の証券会社でも米国株は買えます。わざわざ海外の口座を使う理由が「税金」や「高利回り」なら、その時点で立ち止まるのが安全です。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「国税庁が「海外資産・仮想通貨・ライブ配信・シェアリングエコノミー・外国人雇用」を狙い撃ち!最新の課税戦略を国税庁・富裕層管理チームOBの税理士が徹底分析【前編】」
よくある質問
Q1. 海外の証券会社で買った株を、日本の証券会社に移せば特定口座で管理できますか?
移管を受け付けるかどうか、取得価額をどう扱うかは、受け入れる証券会社によって異なります。移す前に、受け入れ先の証券会社に条件を確認してください。なお、国内から海外へ株を移す場合は、国内の証券会社が「国外証券移管等調書」を税務署に提出する仕組みがあります。
Q2. 海外の証券会社の配当にも日本の税金はかかりますか?
かかります。国内の証券会社を通さずに受け取る配当は、日本の税金が差し引かれていないので、確定申告で申告します。現地で差し引かれた税金は、外国税額控除の対象になることがあります(No.1240)。
Q3. 現地で税金を払ったら、日本では申告しなくてよいですか?
いいえ。現地で課税されたかどうかにかかわらず、日本の居住者は日本で申告が必要です。二重に課税された分は、外国税額控除で調整します(No.1937、No.1240)。
Q4. 海外の口座の残高が5,000万円を超えなければ、何もしなくてよいですか?
国外財産調書は不要ですが、利益や配当の確定申告は別に必要です。調書の要否と、税金の申告の要否は分けて考えてください。
Q5. 海外の証券会社を使うのは違法ですか?
海外の証券会社に口座を持つこと自体が禁止されているわけではありません。ただし、日本の居住者を相手に業として取引する海外業者には日本の登録が必要で、登録のない業者とのトラブルは解決が非常に難しくなります。取引する前に、登録の有無を確かめてください。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
確定申告や国外財産調書の要否、税額の計算は、税務署の電話相談センター(国税局電話相談センター)や税理士に確認してください。
山崎から一言

「海外なら特別に儲かる」「海外なら税金がかからない」——山崎も昔、こうした言葉に心を動かされました。海外の口座は、手間もリスクも自分で引き受ける場所です。まずは日本の証券会社で、仕組みのわかる取引から始めてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度・数値は2026年10月20日時点で国税庁・金融庁が公表している資料と法令にもとづきます。個別の申告の要否や税額は、税務署または税理士にご確認ください。










