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「持っている米国株の株価はほとんど動いていないのに、証券口座の評価額が数万円も減っている」——米国株を始めたばかりの方が最初に戸惑うのが、この現象です。原因の多くは株価ではなく、円とドルの為替レートにあります。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時の自分は、値動きの「理由」を分けて考えることができず、画面の数字が減るたびに慌てて売り買いを繰り返していました。何が原因で資産額が動いているのかを分解できれば、慌てずに済む場面はずっと増えます。
この記事では、円高・円安が米国株の資産額にどう効くのかを、計算式・税金・持ち方の順に整理します。為替の予想や、特定の銘柄をすすめる記事ではありません。
結論:円で見た資産額は「ドル建ての評価額×為替レート」で決まる
先に結論をまとめます。
- 円安(1ドル=150円→165円など)になると、株価が同じでも円で見た資産額は増える
- 円高(1ドル=150円→135円など)になると、株価が同じでも円で見た資産額は減る
- 株価の変化と為替の変化は足し算ではなく掛け算で効く。株価+10%・円高10%は「ゼロ」ではなく約−1%になる
- 影響は評価額だけでなく、配当の受取額・新しく買える株数・税金の計算にも及ぶ。税金は円換算した損益にかかる
- 為替の先行きは誰にも当てられない前提で、買う時期を分ける・近く使うお金は円で持つといった「持ち方」で影響を和らげるのが現実的
米国株の取引時間や手数料など、そもそもの仕組みから確認したい方は、米国株取引の基本|取引時間・為替・手数料の仕組みを先に読むと、この記事の位置づけが分かりやすくなります。
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計算の基本:資産額は「株価」と「為替」の2つで動く
米国株はドルで値段がついています。証券口座に表示される「円での評価額」は、次の式で計算されています。
円での評価額 = 株価(ドル)× 保有株数 × 為替レート(1ドルあたりの円)
株価が上がっていても、それ以上に円高が進めば、円での評価額は減ります。
数字で見ると:1,000ドル分の米国株はこう動く
株価100ドルの銘柄を10株(1,000ドル分)、1ドル=150円のときに持っていた場合を基準に、株価と為替の組み合わせごとの評価額を並べます。数字はしくみを示すための仮定です。
| ケース | ドル建ての評価額 | 為替レート | 円での評価額 | 基準からの変化 |
|---|---|---|---|---|
| 基準 | 1,000ドル | 150円 | 150,000円 | — |
| 株価そのまま・円安 | 1,000ドル | 165円 | 165,000円 | +10% |
| 株価そのまま・円高 | 1,000ドル | 135円 | 135,000円 | −10% |
| 株価+10%・円高 | 1,100ドル | 135円 | 148,500円 | −1% |
| 株価−10%・円安 | 900ドル | 165円 | 148,500円 | −1% |
| 株価+10%・円安 | 1,100ドル | 165円 | 181,500円 | +21% |
| 株価−10%・円高 | 900ドル | 135円 | 121,500円 | −19% |
変化は「足し算」ではなく「掛け算」で効く
表の4行目と5行目に注目してください。株価が10%上がって為替が10%円高になると、感覚的には「プラスマイナスゼロ」に思えますが、実際は1.1×0.9=0.99で、約1%のマイナスです。下の2行のように、株価と為替が同じ方向に動くと、変化は大きく増幅されます。
ここから分かるのは、米国株を持つことは「米国企業の株」と「ドルという通貨」の2つを同時に持つことでもあるという点です。銘柄の見立てが当たっていても、円で見た成績が期待どおりにならないことがあるのは、この二重構造のためです。
円高・円安が効くのは評価額だけではない
為替の影響は、口座の評価額以外にもいくつかの場面に出てきます。
| 場面 | 円安のとき | 円高のとき |
|---|---|---|
| 保有株の評価額(円) | 増える | 減る |
| ドルで受け取る配当(円換算) | 同じ配当額でも円では多くなる | 同じ配当額でも円では少なくなる |
| 新しく株を買うとき | 同じ円の金額で買える株数が減る | 同じ円の金額で買える株数が増える |
| 売却して円に戻すとき | 手取りの円が増える | 手取りの円が減る |
| 税金の計算 | 円換算で利益が出やすくなる | 円換算で損失が出やすくなる |
見落とされやすいのが「新しく買うとき」の行です。円安は保有中の資産額を押し上げる一方で、これから買う人にとっては同じ金額で買える量が減ることを意味します。円安・円高は、持っている人と、これから買う人とで、見え方が逆になります。
税金は「円換算した損益」にかかる
日本の税金は円で計算されます。米国株の売却益は、買ったときの金額と売ったときの金額を、それぞれその時点の為替レートで円に換算し、その差額で計算します。為替の変動による差額も、株式の譲渡損益に含めて扱われます。
| 例 | 買ったとき | 売ったとき | 円換算の損益 |
|---|---|---|---|
| ドルでは損益ゼロ・円安が進んだ | 1,000ドル×150円=150,000円 | 1,000ドル×165円=165,000円 | +15,000円(課税対象) |
| ドルでは+5%・円高が進んだ | 1,000ドル×150円=150,000円 | 1,050ドル×135円=141,750円 | −8,250円(損失) |
1行目は、ドルで見れば1円も増えていないのに、円では15,000円の利益が出て、約20.315%の税金(この例で約3,000円)がかかるケースです。2行目は反対に、ドルでは増えているのに円では損失になり、課税されないケースです。税金の計算は「自分が感じている損益」ではなく「円換算した記録」で行われると覚えておいてください。
円換算で損失が出た場合、課税口座(特定口座・一般口座)であれば、ほかの上場株式等の利益と相殺できます。口座をまたぐ場合の手続きは損益通算と繰越控除の基本で、配当にかかる米国と日本の二重課税については米国株の税金|二重課税と外国税額控除の基本で整理しています。なお、NISA口座での売却は為替による利益も含めて非課税ですが、損失が出ても損益通算はできません。
決済方法や商品の種類で、為替の影響は消えるのか
「円で買えば為替は関係ない」「投資信託なら円建てだから安心」と考える方がいますが、どちらも誤解です。
| 持ち方 | 為替の影響 | 補足 |
|---|---|---|
| 円貨決済で米国株を買う | 受ける | 円で注文しても、内部でドルに両替されて株を買っている。持っている間は為替で評価額が動く |
| 外貨決済で米国株を買う | 受ける | 両替のタイミングを自分で選べるだけで、ドル資産を持つことに変わりはない |
| 売却後もドルのまま持っておく | 受け続ける | 株を売っても、円に戻すまでは為替の影響が残る |
| 米国株に投資する投資信託・ETF(為替ヘッジなし) | 受ける | 基準価額が円で表示されていても、中身はドル資産。為替の変動が基準価額に反映される |
| 為替ヘッジありの投資信託・ETF | 大部分を抑える | 完全にゼロにはならず、主に日米の金利差に応じたヘッジコストがかかる |
円貨決済と外貨決済の手順の違い、往復でかかる為替手数料については米国株取引の基本で詳しく扱っています。為替手数料は両替のたびに発生するので、為替を避けたくて両替を繰り返すと、コストだけが積み上がります。
為替に振り回されないための4つの考え方
為替の影響そのものを消す方法はありません。できるのは、影響を理解したうえで、自分の生活や計画が揺さぶられにくい持ち方を選ぶことです。
① 為替の先行きは当てられない前提で考える
為替レートは金利・景気・政策など多くの要因で動き、専門家の見通しも頻繁に外れます。為替のタイミングまで当てにいくと、株価と為替の両方を予想することになり、判断が倍難しくなります。当サイトとして「今が買い時」「待つべき」といった判断は示せません。
② 買う時期を分ける
一度にまとめて買うと、その日の為替レートに結果が大きく左右されます。毎月など時期を分けて少しずつ買うと、円高のときも円安のときも買うことになり、取得時の為替水準が平均に近づきます。ただし、これは為替の影響を「ならす」考え方であって、損失を防ぐ仕組みではありません。
③ 近いうちに円で使うお金は、円のまま置いておく
生活防衛資金や、数年以内に使う予定がある教育費・住宅資金などは、使う通貨である円で持っておくのが基本です。使う直前に円高が進むと、同じドル資産でも受け取れる円が減ってしまうからです。ドル資産に回すのは、為替で1〜2割目減りしても生活が困らない範囲に留めると、慌てて売る場面を減らせます。
④ 「ドル建て」と「円建て」の2つの数字を見る
多くの証券口座では、評価損益をドル建てと円建ての両方で確認できます。円での評価額が減ったときに、株価が下がったのか、円高が進んだのかを分けて見る習慣をつけると、値動きへの反応が落ち着きます。損失を広げないための売却ルールは損切りとリスク管理の基本で整理していますが、為替だけを理由にルールを曲げないことも大切です。
| セルフチェック | 確認できたか |
|---|---|
| 資産全体のうち、ドル資産(米国株・米国株の投資信託など)が何割あるか把握している | □ |
| ドル資産が為替で2割目減りしても、生活や近い予定の支出に困らない | □ |
| 評価額が減ったとき、株価と為替のどちらが原因か確認している | □ |
| 持っている投資信託・ETFが為替ヘッジありか、なしかを知っている | □ |
| 為替の予想だけを根拠に売買しようとしていない | □ |
山崎の見解:「円安で資産が目減りする」を入り口にした勧誘に注意
円安が話題になるたびに、「日本円だけで持っていると資産が溶ける」「ドルに換えれば確実に守れる」といった不安をあおる話が増えます。為替が資産に影響するのは事実ですが、山崎正義が130件以上の案件を調査してきた中では、この不安を入り口にして別の商品へ誘導する構図が繰り返し確認されてきました。
- 「円は紙くずになる」と危機感をあおり、高額なセミナーや情報商材へ誘導する
- 「海外口座ならドルで高利回り」と、日本で登録のない海外業者への送金を求める
- 「為替でも稼げる」と、仕組みの説明が少ないまま高レバレッジの取引や自動売買ツールをすすめる
為替は、円安にも円高にも動きます。「ドルなら安全」「確実に守れる」と一方向だけを語る話は、それだけで立ち止まる理由になります。業者の登録は金融庁の一覧で自分で確認できます。手順はFX会社の選び方|金融庁の登録を自分で確認する手順に、よくある手口のパターンは投資詐欺の典型手口と見分け方にまとめています。
米国株の取引条件(取扱銘柄・為替手数料・円貨決済と外貨決済の対応)は証券会社ごとに異なります。米国株を扱う証券会社のひとつに、DMM.com証券の「DMM 株」があります。口座を選ぶ際は、各社の公式サイトで往復の為替コストと決済方法を並べて確認してください。本記事は特定の証券会社を推奨するものではありません。
よくある質問
Q1. 円安のときに米国株を買うのは損ですか。
一概には言えません。円安のときは同じ金額で買える株数が減りますが、その後さらに円安が進むこともあれば、円高に戻ることもあります。為替の先行きは当てられないため、一度にまとめて買わず、時期を分けて買うという考え方が一般に知られています。
Q2. 円高で評価額が減りました。売ったほうがいいですか。
当サイトとして売買の判断は示せません。まず、減った原因が株価なのか為替なのかを分けて確認してください。為替による目減りが戻る保証はなく、そのお金をいつ円で使う予定かによって考え方が変わります。
Q3. ドルでは利益が出ているのに、円では損失です。税金はかかりますか。
日本の税金は円換算した損益で計算するため、円で損失であれば、その取引の売却益には課税されません。課税口座であれば、その損失をほかの上場株式等の利益と相殺することもできます。
Q4. 為替ヘッジありの商品を選べば、為替の影響はなくなりますか。
影響の大部分は抑えられますが、完全にゼロにはなりません。また、主に日米の金利差に応じたヘッジコストがかかり、その分が成績を押し下げます。円安のときに評価額が増える効果も、ヘッジによって得られなくなります。
困ったときの相談先
- 消費者ホットライン(188):勧誘トラブル・契約全般の相談窓口
- 警察相談専用電話(#9110):詐欺被害が疑われるとき
- 法テラス:法的な手続きや費用の相談
- 日本弁護士連合会:弁護士を探すとき
- 金融庁 金融サービス利用者相談室:業者の登録確認、無登録業者に関する情報提供
山崎から一言
米国株を持つということは、アメリカの企業と、ドルという通貨の両方に自分のお金を預けるということです。円安のときには得をしたように見え、円高のときには損をしたように見えますが、どちらも「株価とは別の理由で数字が動いている」だけという場面が少なくありません。
山崎正義が300万円を失ったとき、いちばん足りなかったのは、数字が動く理由を落ち着いて分解する習慣でした。為替を予想する力より、為替が動いても困らない持ち方を先に決めておくほうが、長く続けるうえではずっと役に立ちます。株式投資全体の流れは株式投資の始め方ロードマップにまとめてあります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。為替レート・税額の数字はしくみを示すための仮定の例です。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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