「この銘柄は必ず上がります」「元本は保証します」。株式投資を始めた直後の人ほど、こうしたメッセージが届きやすくなります。結論から書きます。届いた情報の中身が正しいかどうかを検証しようとしないでください。そこは相手が用意した土俵です。見るべきなのは情報の中身ではなく、その話を持ちかけてきた相手が金融商品取引業の登録を受けているかという一点です。ここだけで、典型的な手口の大半は入り口で止まります。
山崎正義は副業詐欺で300万円の借金を負い、その後に地道な副業で立て直した経験があります。当時いちばん時間を使ったのは「この話は本当か」を自分で調べることでした。ですが振り返ると、判断に必要だったのは中身の吟味ではなく、相手が名乗るべきものを名乗っているかという確認だけでした。この記事では、株や投資をめぐる勧誘の典型的な型と、その場でできる確認の手順を整理します。
結論:中身ではなく「登録の有無」から見る
日本国内で、他人に報酬を得て投資判断の助言をしたり、お金を預かって運用したりすることを業として行うには、金融商品取引業の登録が必要です(金融商品取引法)。登録業者かどうかは金融庁が公表している「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で誰でも検索できます。逆に、無登録で勧誘を行っている業者は「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」という形で公表されることがあります。
つまり、相手が本物かどうかを判断する材料は、相手の言葉の外側に用意されています。次の順番で見れば、専門知識がなくても入り口の判断はできます。
| 見る順番 | 確認すること | 当てはまったときの扱い |
|---|---|---|
| ① | 相手(法人名・屋号)が金融庁の登録業者一覧に載っているか | 載っていない相手からの運用・助言の勧誘は、そこで打ち切る |
| ② | 運営者情報・特定商取引法に基づく表記があるか | 所在地や代表者名が不明なら、それ以上進まない |
| ③ | 「元本保証」「必ず上がる」といった断定があるか | 断定そのものが問題のある勧誘のサイン |
| ④ | 入金より先に「出金」の条件を説明できるか | 出金の話を避ける・条件を後出しするなら止める |
①で止まる案件が非常に多い、というのが山崎正義の実感です。中身の議論に入るほど、相手のほうが話し慣れています。
なぜ「絶対儲かる株情報」が自分に届くのか
「なぜ自分のところに来たのか」と考える人は多いのですが、多くは個人を狙い撃ちしたものではなく、広告とメッセージによる大量接触の結果です。警察庁が2026年2月13日に公表した令和7年(2025年)の暫定値では、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件(前年比48.7%増)、被害額は約1,274.7億円(同46.3%増)とされています。接触のきっかけはバナー等の広告が3,760件、ダイレクトメッセージが3,576件で、この2つで全体のおよそ8割を占めます。
件数が増え続けているのは、送る側にとって費用がほとんどかからないためです。広告とDMは何万件送っても単価が変わらず、そのうち反応した数人と話を進めればよい構造になっています。届いたこと自体には意味がなく、返事をしたところから選別が始まると考えたほうが実態に近いです。
投資詐欺の典型手口5つ
山崎正義が130件以上の案件を調査してきたなかで、投資をうたう勧誘は次の5つの型にかなりの割合が収まります。名前や商品名は変わっても、構造は繰り返されます。
| 型 | 入り口 | 共通する特徴 |
|---|---|---|
| ①なりすまし広告 | SNS・動画サイトの広告 | 著名人や経済メディアの名前・画像を無断使用 |
| ②無料グループ誘導 | DM・オープンチャット | 先生役と「儲かった」役が同じ場にいる |
| ③未公開株・IPO前の割当 | 電話・知人経由 | 「あなただけ」「上場すれば数倍」 |
| ④偽の取引アプリ | グループ内で配布 | 画面上は増えるが出金できない |
| ⑤被害回復をうたう二次被害 | 被害後の連絡 | 「取り返せる」と言って着手金を求める |
①著名人・経済メディアになりすました広告
実在の投資家や経営者、テレビ番組の画像を無断で使い、「無料で銘柄情報を配っている」と見せる広告です。警察庁の資料でも、著名人の画像や動画を無断使用した広告が確認されており、「必ずもうかる」「元本保証」といった文言が含まれる例が報告されています。本人が出しているように見えること自体が、この手口の狙いです。広告からの遷移先がメッセージアプリの友だち追加である場合は、いったん止めてください。
②無料のグループチャットに誘導する
参加すると、講師役の人物、質問する参加者、利益画面を投稿する参加者がすでにそろっています。この構成は、自分だけが判断しているつもりで実際には周囲に合わせて判断させるための場づくりです。最初は無料で、少額の利益が出たという体験を挟んでから、金額の大きい話に移るのが典型的な流れです。SNSのメッセージから始まる勧誘への対処はSNSのDMで届く副業勧誘への正しい対処法で段階別に整理しています。
③「未公開株」「上場前の割当」を持ちかける
上場していない会社の株を、限られた人にだけ譲るという形の勧誘です。上場していない株式には市場価格がないため、提示された金額が高いのか安いのかを買う側が検証できません。検証できない価格を提示できることが、この型が長く残っている理由です。「上場が決まっている」と言われた場合も、決まっていることを確認する手段が相手の説明しかないなら、判断材料としては使えません。
④画面上は増えるが出金できない取引アプリ
グループ内で配布されるアプリやWebサイトに入金すると、資産額が増えていく画面が表示されます。ところが出金しようとすると「税金の前払いが必要」「手数料を先に入れれば解除される」といった条件が後から出てきます。追加入金を促す口実であることが多く、払うほど出金までの距離が遠くなるという構造になっています。少額でも出金を試して確認する、という段階を最初に踏むだけで気づけるものがあります。
⑤「被害を取り返せます」という二次被害
一度お金を出してしまった人に対して、回収や返金の代行を持ちかけるものです。被害者の名簿が出回っているケースもあり、山崎正義が300万円の被害を受けた頃から続く典型的な手口です。公的な相談窓口は着手金を求めません。返金を口実に費用を求められた時点で、後述の相談先に連絡してください。
その場でできる4つの確認
ここからは実際の手順です。相手と会話を続けながらでも、数分あれば終わります。
手順1:相手の正式名称を聞き、金融庁の一覧で検索する
「会社名と登録番号を教えてください」と聞くだけです。金融庁のサイトにある登録業者一覧で名称を検索し、出てこなければそこで終わりにします。名称を教えない、個人名しか出てこない、海外法人だから登録は不要だと説明される——このいずれも、続ける理由にはなりません。
手順2:運営者情報と特定商取引法の表記を見る
サイトやアプリの下部に、事業者名・所在地・連絡先が書かれているかを確認します。所在地がバーチャルオフィスのみ、連絡先がメールフォームだけ、という状態は、トラブルになったときに連絡がつかなくなる構造です。この見方は投資に限らず共通で、副業詐欺の見分け方7つのチェックポイントで使っている調査基準7項目と同じものです。
手順3:使われている言葉を機械的に拾う
次の表現が1つでも出てきたら、内容の是非を考える前に距離を取ってよいと山崎正義は考えています。投資である以上、損失の可能性を説明できないことはないためです。
| 出てきたら止める表現 | なぜ問題か |
|---|---|
| 元本保証/損はさせない | 価格が変動する商品で保証はできない |
| 必ず上がる/勝率100% | 断定的判断の提供にあたるおそれがある |
| 今日中に/今だけ/枠が残り2名 | 確認する時間を奪うための設定 |
| あなただけに特別に | 同じ文面が多数に送られている場合が多い |
| 知識は不要・自動で増える | 仕組みを説明させない口実になっている |
「自動で増える」という説明の構造については、FX自動売買ツールの勧誘が危険な理由でツールを絡めた勧誘の型として詳しく整理しました。広告そのものの成り立ちに関心がある方は「誰でも簡単に稼げる」広告のカラクリもあわせてどうぞ。
手順4:入金の前に、出金の条件を先に聞く
「増えた分はどうやって、いつ、どこの口座に出せますか」と先に聞きます。正規の証券会社であれば、口座の種類や出金手続きは公開情報として説明されています。口座の区分けの考え方は証券口座の選び方入門|特定口座・一般口座・NISA口座の違いで整理しています。出金の話になると答えが曖昧になる相手は、そこが弱点だと考えて差し支えありません。
山崎の見解:本体は「情報」ではなく「断りにくさ」
副業歴8年・300万円の詐欺被害・130件以上の調査経験から判断すると、この種の勧誘で本当に機能しているのは銘柄情報ではありません。親切にしてくれた相手を疑うことへの抵抗感です。毎日あいさつを交わし、無料で情報をくれた人に対して、登録番号を聞くのは気まずい。その気まずさが判断を遅らせます。
ですから、断り文句はあらかじめ決めておくのが現実的です。相手を説得する必要はなく、会話を終わらせられれば十分です。
- 「家族と決めた方針で、勧誘された投資はすべて断っています」
- 「登録業者の一覧で確認できなかったので、今回は見送ります」
- 「余裕資金の枠を使い切っているので、追加の入金はしません」
そもそも余裕資金の枠を先に決めておけば、この会話は成立しにくくなります。枠の作り方は損切りとリスク管理の基本|資金管理ルールの作り方に書いたとおりで、資金管理は利益のためだけでなく、勧誘に対する防具としても働きます。
「もしかして」と思ったときの初動
すでに入金してしまった場合でも、順番を守ると打てる手が残ります。相手に連絡して問い詰めるのは、証拠を消される可能性があるため後回しにしてください。
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 追加の入金を止める | 「あと少しで出金できる」は追加入金の口実になりやすい |
| 2 | やり取り・振込明細・広告の画面を保存する | アカウントごと消えることがある |
| 3 | 振込先の金融機関に連絡する | 振込先口座の凍結手続きにつながる場合がある |
| 4 | 警察(#9110)・消費者ホットライン(188)に相談する | 被害届や助言の窓口。記録があるほど話が早い |
| 5 | 返金をうたう業者からの連絡には応じない | 二次被害の入り口になりやすい |
勧誘を見分ける前提となる基礎の順番は、株式投資の始め方ロードマップのステップ1〜4で扱っています。
「未公開株を特別に譲る」という勧誘と、正規のIPO(新規公開株)がどう違うかはIPO(新規公開株)の仕組みと抽選の流れで確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 相手は無登録でも「海外の会社だから日本の登録は不要」と言っています
日本国内の人に向けて勧誘を行う場合、海外に拠点があることは登録が不要な理由にはならないとされています。加えて、海外法人を相手にした場合は、トラブルになったときの手続きが国内の相手より難しくなります。断る材料が1つ増えたと考えるのが安全です。
Q. 実際に少額を出金できました。それでも危ないですか
少額の出金が通ることは、信用を作るための工程として使われる場合があります。金額を上げた段階で条件が増えるという流れが報告されています。出金できた事実は「安全である証明」ではなく、まだ検証が終わっていない状態と考えてください。
Q. 有料の投資情報サービスはすべて怪しいのですか
いいえ。投資助言・代理業の登録を受けて営業している事業者もあります。判断が分かれるのは「登録の有無」と「断定的な表現の有無」で、この2つを満たさない相手をまとめて避ける、という線引きが実務的です。登録があっても、利益を保証するような説明は本来できません。
Q. 家族が勧誘を受けているようです。どう伝えればよいですか
「騙されている」と否定から入ると、話してもらえなくなることが多いです。中身の是非には触れず、「登録業者かどうかだけ一緒に見よう」と手順の話にすると進めやすくなります。金融庁の一覧を一緒に開く、というところまでで十分です。
Q. 通報したいのですが、どこに言えばよいですか
無登録業者や金融商品の勧誘に関する情報は金融庁の相談室、被害の疑いがあるものは警察(#9110)が窓口です。証券会社との取引で生じた苦情・トラブルであれば、証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)という指定紛争解決機関もあります。次の表にまとめました。
困ったときの相談先
| 相談先 | 連絡先 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 188 | 契約・勧誘のトラブル全般 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 詐欺被害の疑いがある場合 |
| 法テラス | 0570-078374 | 法的トラブルの相談窓口の案内 |
| 日本弁護士連合会 | 各地の弁護士会 | 弁護士への相談 |
| 金融庁 金融サービス利用者相談室 | 0570-016811 | 無登録業者・金融商品の勧誘に関する相談 |
| 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC) | 0120-64-5005 | 証券会社等との取引に関する苦情・あっせん |
山崎から一言
山崎正義が300万円を失ったとき、いちばん悔しかったのは金額ではなく、怪しいと思った瞬間が何度もあったのに、確認する言葉を持っていなかったことでした。中身を見抜く力は経験を積まないと身につきませんが、「会社名と登録番号を教えてください」の一言は今日から使えます。株式投資そのものは、仕組みとリスクを理解したうえで自分の枠の中でやるなら、時間をかけて向き合える対象です。急がせてくる相手だけを、先に外していきましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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