「損切りができない」という悩みは、株式投資を始めた人がほぼ必ず通る場所です。結論から書きます。損切りができないのは意志が弱いからではなく、決める順番が逆になっていることがほとんどです。買ったあとに「いくら下がったら売ろう」と考えるから決められないのであって、順番を逆にして「1回の取引でいくらまで損してよいか」を先に決めてしまえば、損切り価格も買う株数も自動的に決まります。
山崎正義は副業詐欺で300万円の借金を負った経験があり、その一部は「一発で取り返そう」とした判断から膨らみました。だからこそ、増やし方より先に減り方を管理する仕組みを作ることをおすすめしています。この記事では、初心者が最初に作る資金管理ルールの形を、順番どおりに整理します。
結論:先に決めるのは「1回いくらまで損してよいか」
資金管理ルールは、次の順番で決めると迷いが消えます。上から順に決めていくと、最後の「何株買うか」は計算で出てくるだけの数字になります。
| 順番 | 決めること | 決め方の例 |
|---|---|---|
| ① | 投資に回してよい総額 | 生活費・生活防衛資金を除いた余裕資金だけ |
| ② | 1回の取引で許容する損失額 | 投資総額の数%を上限として金額で決める |
| ③ | 損切りする価格 | 値幅(%)/チャートの節目/シナリオ崩れ |
| ④ | 買う株数 | ②÷(買値−③)で逆算する |
多くの人は④の「いくら分買うか」から入り、②を決めないまま保有します。すると下落したときに判断材料が何もなく、「もう少し待てば戻るかもしれない」という気持ちだけが残ります。これが塩漬けの正体です。
そもそも損切りとは何か
損切り(ロスカット)とは、含み損を抱えた株式を売却して損失を確定させることです。ポイントは「損を確定させる」行為そのものではなく、あらかじめ決めておいた条件に達したから実行するという点にあります。値動きを予測して当てる作業ではありません。
なぜ実行できなくなるのか
行動経済学では、人は同じ金額でも「得をする喜び」より「損をする痛み」を大きく感じるとされています。含み損の状態では、売れば痛みが確定し、持ち続ければ痛みを先送りできます。だから多くの人が後者を選びます。
やっかいなのは、先送りしている間もリスクは増え続けるという点です。損失が深くなるほど、元の金額に戻すために必要な上昇率は不釣り合いに大きくなります。
| 下落率 | 元の金額に戻るのに必要な上昇率 |
|---|---|
| -10% | 約 +11% |
| -20% | +25% |
| -30% | 約 +43% |
| -50% | +100% |
| -70% | 約 +233% |
10万円が9万円になったなら約11%の上昇で戻りますが、5万円まで下がると倍にしないと戻りません。「損切りは早いほうがよい」と言われる理由は、根性論ではなくこの算数にあります。
資金管理ルールの作り方(4ステップ)
ステップ1:生活防衛資金と投資資金を分ける
最初の作業は銘柄選びではなく、口座の区分けです。生活費・近い将来に使う予定のあるお金(学費、引っ越し費用など)・急な出費に備える生活防衛資金を先に取り分け、残った余裕資金だけを投資総額とします。
この分離ができていないと、相場が下がったときに「生活のために売らざるを得ない」状況が生まれます。自分の意思ではなく事情で売らされる状態が、いちばん不利な売り方です。証券口座の種類や使い分けについては証券口座の選び方入門|特定口座・一般口座・NISA口座の違いで整理しています。
ステップ2:1回の許容損失を「金額」で決める
次に、1回の取引で失ってもよい金額を決めます。相場の世界では投資総額の1〜2%程度に抑える考え方(いわゆる2%ルール)がよく紹介されます。これは「そうすれば増える」という話ではなく、連敗しても再起できる範囲に1回の損失を抑えるための発想です。
大切なのは%のまま置かず、最後に金額へ落とすことです。「投資総額100万円、1回の許容損失は2%=2万円」のように、数字で言い切れる形にします。曖昧な「なんとなく少しだけ」は、下落局面ではほぼ確実に拡大解釈されます。
ステップ3:損切り価格の決め方を1つ選ぶ
損切りの水準の決め方には、大きく3つの考え方があります。どれが正解というものではなく、自分が説明できるものを1つ選び、記録して使い続けることが重要です。
| 決め方 | 内容 | 向いている人・注意点 |
|---|---|---|
| 値幅(%)で決める | 買値から◯%下がったら売る | いちばん単純。ただし値動きの大きい銘柄では浅すぎて頻繁に当たることがある |
| チャートの節目で決める | 直近安値・移動平均線などを下回ったら売る | 根拠を説明しやすい。ローソク足と出来高の基本を先に把握しておくと決めやすい |
| シナリオ崩れで決める | 買った理由(業績・材料)が崩れたら売る | 価格ではなく事実で判断する。決算書の見方の理解が前提になる |
ステップ4:株数を逆算する
ここまで決まれば、買う株数は計算するだけです。式は次のとおりです。
買える株数 = 1回の許容損失額 ÷(買値 − 損切り価格)
| 項目 | ケースA | ケースB |
|---|---|---|
| 投資総額 | 100万円 | 100万円 |
| 1回の許容損失(2%) | 2万円 | 2万円 |
| 買値 | 2,000円 | 2,000円 |
| 損切り価格 | 1,900円(-5%) | 1,800円(-10%) |
| 1株あたりの損失 | 100円 | 200円 |
| 買える株数 | 200株 | 100株 |
同じ許容損失でも、損切りを深くとるなら株数は減ります。「損切り幅を広くとりたい」と「たくさん買いたい」は同時には成立しない、という関係が数字で見えるのがこの計算の効用です。なお日本株は原則100株単位(単元株)で取引されるため、計算結果は単元に合わせて切り下げます。単元未満株を扱う証券会社もありますが、取扱いは会社によって異なります。
ルールを「注文」として仕組み化する
ルールは頭の中にあるだけでは実行されません。相場が動いている最中の判断ほど、感情に引っ張られるからです。そこで、決めた損切り価格は逆指値注文として先に発注しておく方法があります。「指定した価格以下になったら売り注文を出す」という条件付きの注文です。
注文の基本である成行・指値の違いは株の注文方法の基本|成行注文と指値注文の使い分けで解説しています。あわせて押さえておきたい注意点は次の2つです。
- 指定した価格ちょうどで売れるとは限らない:悪材料が出た翌朝など、株価が窓を開けて大きく下に飛ぶことがあります。逆指値は「その価格を下回ったら注文を出す」仕組みであり、約定価格を保証するものではありません
- 米国株は取引時間帯と為替の影響を受ける:日本時間の夜間に動くため、日中に値動きを見られない人ほど注文での仕組み化が効きます。仕組みは米国株取引の基本|取引時間・為替・手数料を参照してください
よくある失敗パターン
| 失敗 | 何が起きるか | 対処の方向 |
|---|---|---|
| ルールを後から広げる | 「あと5%だけ待つ」を繰り返し、許容損失が青天井になる | 損切り価格は買う前に決め、買った後は動かさない |
| 安易なナンピン買い | 平均取得単価は下がるが、1銘柄への投資額と損失額は増える | 買い増しも「新しい取引」として許容損失の枠内で考える |
| 損切り貧乏 | 損切り幅が浅すぎて、通常の値動きで何度も売らされる | 幅ではなく株数で調整する(ステップ4の逆算) |
| 1銘柄に集中させる | その1社の業績悪化や不祥事で資産全体が傾く | 1銘柄あたりの上限比率もあらかじめ決めておく |
| 記録を残さない | 同じ失敗を繰り返し、改善点が見えない | 買った理由・損切り価格・結果をメモに残す |
セルフチェック:買う前に答えられますか
| 質問 | 答えられない場合 |
|---|---|
| この取引で最大いくら失う可能性がありますか | ステップ2に戻る |
| いくらになったら売りますか | ステップ3に戻る |
| なぜその株数なのですか | ステップ4に戻る |
| そのお金は数年以内に使う予定がありますか | ステップ1に戻る |
| 買った理由を一文で言えますか | 今回は買うのを見送る |
「損切りは不要」という誘い文句には注意
山崎正義が調査してきた投資勧誘のなかには、「損切り不要の手法」「下がっても持ち続ければ元本は保証される」といった説明を売り文句にするものが少なくありません。損失を確定させたくないという心理は誰にでもあるため、そこを突く言葉はよく効きます。
ただし、日本国内で投資助言や運用の勧誘を業として行うには金融商品取引業の登録が必要です。登録の有無は金融庁が公表している「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で誰でも確認できます。SNSやメッセージアプリで運用を持ちかけられた場合、まずここを確認するだけでも避けられるものがあります。ツールを絡めた勧誘の構造についてはFX自動売買ツールの勧誘が危険な理由で詳しく整理しました。
副業歴8年・130件以上の調査経験から言えるのは、リスクの話を先にしない相手ほど危ないということです。資金管理ルールを自分で持っている人は、「損切りしなくていい」という言葉に違和感を持てます。ルールを作ることは、詐欺まがいと指摘されるような勧誘に対する防具にもなります。
資金管理を含む全体の順番は株式投資の始め方ロードマップのステップ4で位置づけています。
レバレッジがかかる取引では同じ値動きでも資金への効き方が変わるため、FXとは?仕組み・レバレッジ・損失リスクを山崎正義がフラットに整理もあわせて確認しておくと、許容損失額の決め方が具体的になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 損切りの目安は「-8%」など決まった数字があるのですか
広く紹介されている数字はありますが、すべての人・すべての銘柄に当てはまる正解の数値はありません。値動きの大きさは銘柄によって違うためです。数字を借りてくるより、この記事のステップ2〜4のように自分の許容損失額から逆算するほうが、実行できるルールになります。
Q. 長期の積立でも損切りは必要ですか
個別株の短中期の売買と、指数連動型の商品を長期で積み立てる方法とでは、リスク管理の考え方が異なります。積立は下落局面も買い付ける前提のため、価格による損切りよりも「積立額が生活を圧迫していないか」の管理が中心になります。どちらの方法を取るにせよ、先に決めた枠の中でやるという点は共通です。
Q. 損切りした損失は税金の面で何かできますか
同じ年の利益と損失を相殺する損益通算や、損失を翌年以降に繰り越す制度があります。ただし口座の種類や申告の要否で扱いが変わるため、株の税金入門|特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?で前提を確認したうえで、個別の判断は税務署や税理士にご相談ください。
Q. ルールを決めても実行できません
意志で解決しようとせず、注文で解決するのが現実的です。買い注文と同時に逆指値を入れておけば、判断する場面そのものが減ります。それでも難しい場合は、1回の許容損失額が自分にとって大きすぎる可能性があります。金額を下げると実行しやすくなります。
Q. 資金管理ルールはいつ見直せばよいですか
相場が下がっている最中の見直しは、たいてい「ルールを緩める」方向に働きます。見直すなら、保有していない時期や、四半期・半年ごとなどあらかじめ決めたタイミングで行うことをおすすめします。
困ったときの相談先
| 相談先 | 連絡先 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 188 | 契約・勧誘のトラブル全般 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 詐欺被害の疑いがある場合 |
| 法テラス | 0570-078374 | 法的トラブルの相談窓口の案内 |
| 日本弁護士連合会 | 各地の弁護士会 | 弁護士への相談 |
| 金融庁 金融サービス利用者相談室 | 0570-016811 | 無登録業者・金融商品の勧誘に関する相談 |
山崎から一言
資金管理ルールは、勝つための道具ではありません。間違えたときに、次の判断ができる状態で残るための道具です。山崎正義が300万円の借金を負ったときも、取り返そうとしてさらに条件の悪い話に乗りました。あのとき止められるとしたら、気合いではなく事前に決めた金額だったはずです。最初の1回を買う前に、紙でもスマホのメモでもいいので「投資総額」「1回の許容損失」「損切り価格の決め方」の3行を書いてみてください。ここから始めるので十分です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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