こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「親が亡くなって実家を相続したけれど、登記は急がなくていいと聞いた」「兄弟で分け方が決まらないうちは、名義はそのままでいいのでは」——株や投資信託の相続を調べている会社員の方から、不動産の名義についてこうした声を聞くことがあります。
実は、2024年4月1日から相続登記は法律上の義務になっています。期限を過ぎて放置すると過料の対象になり、しかも2024年4月より前に相続して名義を変えていない不動産も対象です。この記事では、法務省と法務局が公表している資料をもとに、期限の数え方、遺産分割がまとまらないときの「相続人申告登記」、親の不動産を一覧で調べられる「所有不動産記録証明制度」までを整理します。
相続した株の名義変更は親が亡くなったら株はどうなる?相続した株の名義変更(移管)の手順で、実家の評価額の決まり方は実家を相続したら土地と建物はいくらで評価される?で説明しています。この記事は不動産の名義(登記)の手続きと期限に絞ります。
結論:相続を知った日から3年以内に登記。間に合わなければ相続人申告登記
先に要点をまとめます(2026年11月1日時点で法務省・法務局のサイトで確認できた内容です)。
- 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務がある
- 遺産分割で取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容で登記する
- 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象。ただし、いきなり科されるのではなく、まず登記官から催告がある
- 2024年4月1日より前の相続も対象。名義が変わっていない不動産は2027年3月31日までに登記する必要がある
- 分け方が決まらないときは、相続人が1人で申し出られる「相続人申告登記」で義務を果たせる(ただし効果は限定的)
- 2026年2月2日から、亡くなった人名義の不動産を一覧にした証明書を請求できる「所有不動産記録証明制度」が始まっている
相続登記の義務化とは:何が変わったのか
相続登記とは、亡くなった人(被相続人)名義になっている土地・建物の名義を、相続した人に変える手続きです。以前は期限も罰則もなく、「売るときに直せばいい」と放置されることが多くありました。その結果、持ち主がわからない土地(所有者不明土地)が増え、公共事業や災害復旧の妨げになっていたことが、法改正の背景です。
法務省「相続登記の申請義務化について」によると、2024年(令和6年)4月1日から、相続人は不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務になりました。
| 場面 | 期限 | やること |
|---|---|---|
| 相続で不動産を取得したと知った(遺言や法定相続分で取得) | 知った日から3年以内 | 相続登記を申請 |
| 遺産分割で不動産を取得した | 遺産分割が成立した日から3年以内 | 分割の内容で相続登記を申請 |
| 3年以内に遺産分割がまとまりそうにない | 知った日から3年以内 | 相続人申告登記を申し出る(分割成立後は、成立日から3年以内に登記) |
| 2024年4月1日より前に相続していた(名義が未変更) | 2027年3月31日まで(※) | 相続登記または相続人申告登記 |
出典:法務省「相続登記の申請義務化について」・「相続登記の申請義務化に関するQ&A」。※相続を知った日が遅い場合など、期限が2027年3月31日より後になることがあります。個別の期限は法務局で確認してください。
「知った日」から数える点に注意
期限は「亡くなった日」ではなく、自分のために相続が始まったことと、その不動産を取得したことを知った日から数えます。たとえば、疎遠だった親族の相続で、あとから不動産の存在を知った場合は、その知った日が起点です。逆に言えば、親が亡くなり実家があることを知っているなら、その時点から3年の時計は動いています。
過料はいきなり科される?催告と「正当な理由」
法務省のQ&Aによると、正当な理由なく申請を怠ったときは10万円以下の過料の対象になります。ただし流れは次のとおりで、登記官からの催告に応じて申請すれば、裁判所への通知は行われないとされています。
- 登記官が義務違反を把握する
- 登記官が、期限を定めて登記するよう催告する
- 期限までに申請がなく、正当な理由もない場合に、登記官が裁判所へ通知する
- 裁判所が過料を科すかどうかと金額(10万円以下)を決める
Q&Aでは「正当な理由」の例として、相続人が極めて多数で戸籍の収集や相続人の把握に時間がかかる場合、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている場合、申請する人自身が重い病気の場合などが挙げられています。「忙しかった」「知らなかった」は、正当な理由として挙げられていません。
分け方が決まらないときの「相続人申告登記」
兄弟で実家を誰が継ぐか決まらない、相続人の1人と連絡が取れない——こうした事情で3年以内に遺産分割がまとまらないことは珍しくありません。そのための仕組みが相続人申告登記です。
- 登記官に「自分がこの不動産の名義人の相続人である」と申し出る手続き
- 相続人が1人で申し出られる(他の相続人の同意はいらない)
- 3年以内に申し出れば、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされる
ただし法務省は、相続人申告登記は不動産の権利関係を公示するものではなく、効果は限定的だと注意しています。この登記だけでは不動産を売ったり、担保に入れたりはできません。また、その後に遺産分割が成立したら、成立した日から3年以内に分割の内容で相続登記をする必要があります。あくまで「話し合いの時間を確保するための手続き」と考えるのが正確です。
親の不動産を一覧で調べる「所有不動産記録証明制度」
相続登記で意外に困るのが、「親がどこに何の不動産を持っていたのか全部はわからない」という点です。固定資産税の課税明細書は市町村ごとに届くため、別の市町村にある山林や、共有持分などを見落とすことがあります。
2026年(令和8年)2月2日から、登記官が特定の人が登記簿上の所有者になっている不動産を一覧にして証明する「所有不動産記録証明制度」が始まりました(法務省民事局長通達「令和8年2月2日付け法務省民二第81号」、新潟地方法務局「所有不動産記録証明制度」について)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求できる人 | 所有権の登記名義人本人、その相続人などの一般承継人 |
| 請求先 | 全国どこの法務局でも可(書面またはオンライン) |
| 手数料 | 窓口での請求は1通1,600円(オンラインなど他の方法の額は法務局で確認) |
| 注意点 | 検索に使う氏名・住所が登記簿の記載と一致しない不動産は抽出されない |
出典:旭川地方法務局「所有不動産記録証明制度が令和8年2月2日から運用開始」、法務省民二第81号(令和8年2月2日)
最後の注意点は重要です。登記簿の住所は、不動産を買ったときの住所のまま更新されていないことがよくあります。親が引っ越しを重ねていた場合は、昔の住所でも検索してもらう必要があります。戸籍の附票などで過去の住所を確認しておくと安心です。
登録免許税と、100万円以下の土地の免税措置
相続登記には登録免許税がかかります。国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」では、相続による所有権の移転登記の税率は不動産の価額の1000分の4(0.4%)です。価額は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格を使います。
ただし法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」によると、令和7年度の税制改正で、不動産の価額が100万円以下の土地であれば、2027年(令和9年)3月31日までに受ける相続登記の登録免許税が免除されます(全国の土地が対象)。共有持分の場合は、土地全体の価額に持分の割合を掛けた額で判定します。
免税を受けるには、申請書に根拠となる租税特別措置法の条項を記載する必要があり、記載がないと免税されません。記載のしかたは法務局の案内で確認してから申請してください。地方の小さな土地や、実家の私道部分などは対象になりやすいので、期限前に整理しておく価値があります。
会社員が今日からできる準備
相続登記は自分で申請することもできますし、司法書士に依頼することもできます。どちらにしても、次の順で準備しておくと、3年の期限に追われずにすみます。
- 親の不動産を把握する:課税明細書、権利証(登記識別情報)、所有不動産記録証明書で、どこに何があるかを洗い出す
- 登記簿を確認する:今の名義人が誰か(祖父母名義のまま、ということもある)を登記事項証明書で確かめる
- 相続人を確定する:戸籍を集め、相続人が誰かを確認する
- 分け方を話し合う:まとまらなければ、期限内に相続人申告登記をしておく
- 申請する:管轄の法務局へ。100万円以下の土地は免税措置の期限(2027年3月31日)も意識する
実家の土地の評価や相続税の特例は、小規模宅地等の特例を別居の会社員が使える条件で整理しています。
相続の場面で狙われる詐欺にも注意
山崎がこれまでの調査で見てきた限り、詐欺は「期限」と「罰則」を口実に近づいてきます。相続登記の義務化も例外ではありません。
- 「相続登記をしないと過料になる。今すぐ手数料を振り込めば代わりに手続きする」という電話やSMS
- 法務局や役所を名乗り、口座番号や暗証番号を聞き出そうとする連絡
- 「相続した土地を高く買い取る」と言って、測量費や広告費などを先に払わせる勧誘
過料の前には登記官からの催告があり、手数料をその場で振り込ませるような仕組みではありません。不審な連絡は、管轄の法務局に直接問い合わせるか、消費者ホットライン(188)に相談してください。
山崎の見解:「3年ある」ではなく「3年しかない」
副業歴8年・300万円の詐欺被害・130件以上の調査経験から言えるのは、お金の手続きは「急がなくていい」と言われたものほど、気づいたときには選択肢が減っているという点です。相続登記も、3年は長いようで、戸籍集めと家族の話し合いをしていると意外に早く過ぎます。
山崎正義としては、親が元気なうちに「どこに不動産があり、今の名義は誰か」だけでも一緒に確認しておくことをすすめます。株や投資信託の口座と同じで、存在がわかっていれば手続きの半分は終わっています。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「一体、父は何を隠していた?税務調査で「開かずの金庫」から出てきた“他人名義の権利書”」
よくある質問
Q1. 親が亡くなったのは2020年です。相続登記はまだ間に合いますか?
2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、相続登記がされていないものは、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります(法務省Q&A)。期限までに遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記で義務を果たすこともできます。
Q2. 相続人申告登記をすれば、もう相続登記はしなくていいですか?
いいえ。相続人申告登記は権利関係を公示するものではなく効果が限定的で、売却などはできません。その後に遺産分割が成立したら、成立した日から3年以内に、その内容で相続登記をする必要があります。
Q3. 相続登記は自分でできますか?
できます。法務局では申請書の様式や記載例を公開しており、手続案内(予約制のところが多い)も行っています。相続人が多い、昔の名義のまま何代も経っているといった場合は、司法書士への依頼も検討してください。
Q4. 所有不動産記録証明書があれば、親の不動産はすべてわかりますか?
検索に使った氏名・住所が登記簿の記載と一致しない不動産は抽出されません。登記簿の住所が古いままのことも多いので、過去の住所でも請求する、課税明細書と照らし合わせるといった確認を併用してください。
Q5. 相続する不動産がいらない場合はどうなりますか?
相続放棄をすれば、その不動産を含めて最初から相続人でなかったことになります。ただし相続放棄は預金や株などすべての財産が対象で、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条)。土地だけを手放したい場合は、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」もあります。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
相続登記の手続きや期限は管轄の法務局(登記手続案内)や司法書士に、遺産の分け方で揉めている場合は弁護士や家庭裁判所の手続案内に、相続税の申告は税務署や税理士に相談してください。
山崎から一言

相続登記は「いつかやる」ではなく、期限のある手続きになりました。まずは親の不動産がどこにあり、今の名義が誰かを確かめるところから始めてみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年11月1日時点で法務省・法務局・国税庁が公表している資料にもとづきます。個別の期限や申請方法は、管轄の法務局・司法書士・弁護士にご確認ください。










