こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「親の家を相続することになったけれど、相続税の計算では建物が思っていたよりずっと安い金額になっていた」「兄弟で実家を分けるとき、どの値段を基準に話せばいいのかわからない」——株や投資信託の相続を調べている会社員の方から、実家の値段についてこうした疑問を聞くことがあります。
実家の「値段」には、相続税を計算するための評価額、固定資産税を計算するための評価額、実際に売れる値段の少なくとも3種類があり、目的ごとに決め方が違います。この記事では、国税庁と総務省、裁判所が公表している資料をもとに、それぞれの決まり方と、家族で遺産を分けるときに値段で揉めないための考え方を整理します。
相続した株の名義変更や評価額は親が亡くなったら株はどうなる?で、実家の土地の評価を下げる特例は実家の土地を相続したら評価が8割減る?小規模宅地等の特例で説明しています。この記事は土地と建物の評価額そのものの決まり方に絞ります。
結論:相続税の評価は「土地は路線価、建物は固定資産税評価額」。分けるときの値段は家族で決める
先に要点をまとめます(2026年10月25日時点で各機関のサイトで確認できた内容です。国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)。
- 相続税の計算では、土地は「路線価方式」か「倍率方式」で評価する:路線価が決まっている地域は路線価、決まっていない地域は固定資産税評価額に倍率を掛けます
- 建物(家屋)は、固定資産税評価額×1.0:相続税の評価額は固定資産税評価額と同じ金額になります
- 路線価は地価公示価格等の80%程度、固定資産税の宅地評価は7割程度が目途:どちらも「売れる値段」より低めに出るように作られています
- 古い建物は評価額が低くなりやすい:固定資産税の家屋評価は、建て直したときの建築費から、築年数に応じた減価を差し引いて求めるためです
- 遺産分割で使う値段は、相続税の評価額に縛られない:相続人全員の話し合いで決め、まとまらなければ家庭裁判所の調停で、必要に応じて鑑定が行われます
実家の「値段」は3種類ある
同じ家でも、何のための値段かによって金額が変わります。まず全体像を表で整理します。
| 値段の種類 | 何に使うか | だれが決めるか | 水準の目安 |
|---|---|---|---|
| 相続税評価額 | 相続税・贈与税の計算 | 国税庁の評価ルール(財産評価基本通達)にもとづいて計算 | 土地は路線価=地価公示価格等の80%程度が目途 |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税などの計算。家屋の相続税評価にもそのまま使う | 市町村長(東京23区は都)が固定資産評価基準にもとづいて決定 | 宅地は地価公示価格等の7割が目途 |
| 実際に売れる値段(時価) | 売却・遺産分割の話し合い | 買い手との取引で決まる。調停では鑑定を行うこともある | 立地・建物の状態・売る時期で大きく変わる |
出典:国税庁「令和8年分の路線価等について」、総務省「固定資産税の概要」
「相続税の計算では1,000万円にもならなかった実家が、不動産会社の査定ではもっと高かった」という話が起きるのは、この3つが別々の物差しだからです。どれかが間違っているわけではありません。
相続税を計算するときの土地の評価:路線価方式と倍率方式
国税庁のタックスアンサーNo.4602「土地家屋の評価」によると、土地は宅地・田・畑・山林などの地目ごとに評価し、宅地は次のどちらかの方式で計算します。
| 方式 | 使う地域 | 計算のしかた |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 路線価が定められている地域(主に市街地) | 路線価(道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額)に、奥行価格補正率などの補正率を掛け、面積を掛ける |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域 | その土地の固定資産税評価額に、国税局長が地域ごとに定めた倍率を掛ける |
路線価はいつの時点の、どのくらいの水準か
国税庁は令和8年分の路線価等を2026年7月1日に公開しました。路線価は1月1日を評価時点とし、1年間の地価変動などを考慮して、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めているとしています(国税庁「令和8年分の路線価等について」)。
路線価図と評価倍率表は、国税庁の「財産評価基準書」で誰でも見られます。亡くなった年の分を使う点に注意してください。2026年中の相続なら令和8年分です。
計算のイメージ(数字は説明用の仮定です)
路線価が1㎡あたり20万円の道路に面した、補正のない形のよい土地150㎡の場合
20万円 × 150㎡ = 3,000万円(相続税評価額)
実際の土地は、奥行きや形、角地かどうかで補正率が変わります。
建物(家屋)の評価:固定資産税評価額がそのまま使われる
同じくNo.4602では、家屋は固定資産税評価額に1.0を掛けた金額で評価するとしています。つまり、親の家の建物の相続税評価額は、固定資産税の評価額と同じです。
固定資産税評価額はどう決まっているか
総務省の「地方税制度|固定資産税」によると、固定資産税の評価額は市町村長が総務大臣の定めた固定資産評価基準にもとづいて決め、土地や家屋は3年に一度評価が見直されます。家屋の評価方法は次のとおりです。
- 再建築価格:その家と同じものを、評価時点にその場所で新築するとしたら必要になる建築費
- 経年減点補正率など:建ててからの年数に応じて生じる減価をもとに定めた率
- 家屋の評価額は、再建築価格にこの経年減点補正率などを掛けて計算します
このため、築年数の古い木造住宅は、建てたときの値段に比べて評価額がかなり低くなりやすいのです。逆に、建物の評価が低くても、土地の評価は立地しだいで高くなることがあります。実家の評価は、土地と建物を分けて見るのが基本です。
固定資産税評価額を確かめる方法
| 方法 | 見られるもの | ポイント |
|---|---|---|
| 固定資産税の納税通知書に同封される課税明細書 | 土地・家屋ごとの評価額(価格) | 親の家に毎年届いている書類。まず手元にないか探す |
| 固定資産評価証明書 | 土地・家屋ごとの評価額 | 市区町村(東京23区は都税事務所)で取得。相続人も申請できる |
たとえば東京23区の場合、東京都主税局の案内では、相続人は戸籍謄本などで相続人であることを示して評価証明書を申請でき、手数料は1件目400円、2件目以降は1件100円です(東京都主税局「【土地・家屋】相続人・受遺者」)。必要書類や手数料は自治体ごとに違うので、実家のある市区町村のサイトで確認してください。
相続税がかかるかどうかは、評価額の合計で決まる
土地と建物の評価額がわかったら、預貯金や株・投資信託などほかの財産と合わせて合計します。国税庁のタックスアンサーNo.4152「相続税の計算」では、課税価格の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた額が課税遺産総額になるとしています。
たとえば法定相続人が子ども2人なら、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。実家の評価が路線価ベースで想像より低く出ると、相続税がかからない家庭も少なくありません。逆に、都市部で土地の評価が高い場合は、小規模宅地等の特例が使えるかで結果が大きく変わります。
兄弟で分けるときの値段は、相続税の評価額と同じでなくてよい
ここが一番揉めやすいところです。相続税評価額は税金を計算するための物差しで、遺産をどう分けるかの値段とは役割が違います。
たとえば、兄が実家を引き継ぎ、妹が預貯金を受け取る分け方を考えるとします。実家を路線価ベースの評価額で数えると、実際に売れる値段より低くなりやすいため、妹から見ると「家を取った兄のほうが実質的に多くもらっている」と感じることがあります。反対に、不動産会社の高めの査定を基準にすると、兄の側が納得しにくくなります。
話し合いでの決め方
- どの値段を基準にするかを、先に相続人全員で決める:相続税評価額・固定資産税評価額・不動産会社の査定額などのどれを使うかを最初に合意しておくと、金額の議論がぶれにくくなります
- 査定を取るなら複数社から:1社の査定額だけでは、高めにも低めにも偏ることがあります
- 売る予定があるかどうかで考え方を分ける:売って現金で分ける(換価分割)なら、実際に売れた金額を基準にできます
まとまらないときは家庭裁判所の調停
裁判所の「遺産分割調停」の案内によると、相続人どうしの話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。調停では、当事者から事情を聴いたり、必要に応じて資料を出してもらったり、遺産について鑑定を行ったりして、解決案の提示や助言をしながら合意を目指します。合意できずに調停が不成立になると、自動的に審判の手続きに移ります。
| 項目 | 内容(裁判所の案内より) |
|---|---|
| 申し立てる人 | 相続人の1人または何人かが、ほかの相続人全員を相手方として申し立てる |
| 申立先 | 相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
| 費用 | 被相続人1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手(額は裁判所ごとに異なる) |
鑑定を行う場合は、別に鑑定の費用がかかります。調停に進む前に、まず「どの値段を基準にするか」だけでも家族で合意できると、時間も費用も抑えられます。
「相続した実家を活用して運用を」という勧誘に注意
相続の手続きが始まると、「実家を売ったお金を運用しませんか」「相続税対策に投資用マンションを」といった勧誘を受けることがあります。山崎正義が300万円の被害を受けた頃から、まとまったお金が入るタイミングを狙う勧誘は典型的な手口です。
- 「必ず増える」「元本保証で高利回り」と言われたら、その時点で疑う
- 金融商品をすすめる業者は、金融庁の登録業者一覧で登録の有無を確かめる
- 相続税の節税をうたう不動産の勧誘は、評価の仕組みと売るときの値段の差を自分で確認してから判断する
相続のときの不動産の評価の見直しについては、不動産小口化商品や買って5年以内の賃貸物件は、相続のときいくらで評価される?でも整理しています。
山崎の見解:まず「3つの値段」を並べて書き出す
副業歴8年・300万円の詐欺被害・130件以上の調査経験から言えるのは、お金の話で揉める原因の多くは「同じ言葉で違うものを指している」ことだという点です。実家の値段も同じで、兄弟の一方が相続税評価額を、もう一方が査定額を思い浮かべていれば、話はかみ合いません。
山崎正義としては、相続の話し合いの前に、①課税明細書の固定資産税評価額、②路線価から計算した土地の評価額、③不動産会社の査定額の3つを1枚の紙に並べることをすすめます。数字が並ぶだけで、「どれを基準にするか」という本当の論点が見えてきます。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「【相続の落とし穴】1000万円の家が600万円扱いに? 家族が揉める理由」
評価額とは別に、名義を変える登記には期限があります。詳しくは「親の家を相続したら登記はいつまで?相続登記の義務化(3年以内・10万円以下の過料)と、分け方が決まらないときの相続人申告登記」をご覧ください。
よくある質問
Q1. 親の家の建物の評価額が、建てたときの値段よりずっと低いのはなぜですか?
相続税では家屋を固定資産税評価額×1.0で評価し(No.4602)、固定資産税の家屋評価は再建築価格に築年数に応じた経年減点補正率などを掛けて計算するためです(総務省)。築年数がたつほど評価額は下がる仕組みです。
Q2. 路線価はどこで調べられますか?
国税庁の「財産評価基準書」のサイトで、都道府県・市区町村ごとの路線価図と評価倍率表を見られます。亡くなった年の年分を選んでください。令和8年分は2026年7月1日に公開されています。
Q3. 実家の地域に路線価がありません。どうやって評価しますか?
倍率方式で評価します。その土地の固定資産税評価額に、評価倍率表に載っている倍率を掛けて計算します(No.4602)。固定資産税評価額は課税明細書や評価証明書で確認できます。
Q4. 兄弟で分けるとき、相続税評価額で計算しなければいけませんか?
相続税評価額は税金を計算するための評価で、遺産分割では相続人全員が合意した値段で分けられます。合意できないときは家庭裁判所の遺産分割調停を利用でき、必要に応じて遺産の鑑定が行われます(裁判所「遺産分割調停」)。
Q5. 固定資産評価証明書は相続人でも取れますか?
多くの自治体で、相続人であることを戸籍謄本などで示せば申請できます。東京23区では都税事務所で申請でき、手数料は1件目400円・2件目以降1件100円です。必要書類や手数料は自治体ごとに違うので、事前に確認してください。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
相続税の申告が必要かどうかや評価額の計算は、税務署の電話相談センター(国税局電話相談センター)や税理士に、遺産の分け方で揉めている場合は弁護士や家庭裁判所の手続案内に相談してください。
山崎から一言

「家の値段」と言っても、税金用・固定資産税用・売るときの値段は別物です。家族で話す前に、3つの数字を並べてから始めてみてください。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年10月25日時点で国税庁・総務省・裁判所・東京都主税局が公表している資料(国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)にもとづきます。個別の申告の要否や評価額、遺産分割の進め方は、税務署・税理士・弁護士にご確認ください。












