こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。悪質なスクールや投資詐欺に引っかかった経験があるからこそ、いまは「安く買える」と聞いたときほど、仕組みを先に確かめることを勧めています。
証券会社のアプリやメールで「立会外分売(たちあいがいぶんばい)のお知らせ」を見かけて、こう思ったことはないでしょうか。
- 前日の終値より安く買えるらしいけれど、なぜ安いのか
- 申し込みはいつまでに、どうやって出すのか
- 安く買えたなら、損をすることはないのか
この記事では、日本取引所グループ(JPX)の公表資料と、上場会社が実際に出した開示資料をもとに、立会外分売の仕組みと、申し込む前に確認することを整理します。
結論:大株主の売り株を、取引時間の前に「少し割り引いた固定価格」で分けて売る仕組み
先に答えを表にまとめます。
| 疑問 | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 立会外分売とは? | 取引時間(立会)の外で、大量の売り注文を多くの買い手に小分けにして売る方法 | JPX用語集 |
| なぜ行われる? | 株主の数を増やす・株の分布を改善する(とくに個人株主を増やす)ため | JPX用語集・各社の開示資料 |
| 値段の決まり方は? | 届出日(実施日の前営業日)の終値を基準に、最大10%まで割り引いた範囲の固定価格 | 東京証券取引所 業務規程 第43条 |
| 申し込みはいつ? | 取引所では、条件発表の翌日の午前8時00分〜8時45分に買付けの申込みを受け付ける。証券会社の締切はそれより早いことが多い | JPX用語集・各証券会社の案内 |
| 必ず買える? | 買えるとは限らない。申込みが多いと抽選になることが多く、1人あたりの上限もある | 各社の開示資料・証券会社の案内 |
| 損はしない? | 損をすることはある。割引があっても、当日の株価が分売価格を下回ることがある | ― |
用語の定義は日本取引所グループ「用語集:立会外分売」で確認できます。
立会外分売とは:取引時間の外で、大口の売りを小口に分ける
株の売買は通常、取引所の取引時間(立会)の中で、板に並んだ注文どうしが成立していきます。板の仕組みは株の「板」の見方で解説しています。
ところが、大株主(創業者・役員・取引先の会社など)が何万株もまとめて売ろうとすると、板の買い注文を次々に食いつぶし、株価が大きく下がるおそれがあります。そこで使われるのが立会外分売です。JPXの用語集では、次の流れで行うと説明されています。
- 売りを受けた証券会社が、取引所に届け出る
- その日の取引(売買立会)が終わった後に、分売の条件を発表する
- 翌日の午前8時00分から8時45分までに買付けの申込みを受ける
- 届出日の終値を基準にした固定の値段で、売買を成立させる
つまり、取引が始まる前に「この値段で、この株数を、申し込んだ人に配る」という形で売り切ってしまう方法です。大株主にとっては株価を大きく崩さずに売れ、会社にとっては株主の数が増える、という仕組みになっています。
会社が株主を増やしたい理由:上場維持基準
上場会社には、上場を続けるための基準(上場維持基準)があります。そのひとつが株主数で、JPXの公表では次のとおりです。
| 市場 | 株主数 | 流通株式比率 |
|---|---|---|
| プライム市場 | 800人以上 | 35%以上 |
| スタンダード市場 | 400人以上 | 25%以上 |
| グロース市場 | 150人以上 | 25%以上 |
株主数は「1単位以上の株を持つ人の数」で、通常は年1回、事業年度末の状況で審査されます(JPX「上場維持基準の詳細:株主数」・同「流通株式」)。大株主の持ち分が多い会社は、立会外分売で株を個人に分けることで、こうした基準に近づけようとすることがあります。基準を満たせない状態が続いた場合の流れは上場廃止になった株はどうなる?で整理しています。
値段の決まり方:前日終値から最大10%の範囲で割り引く
分売の値段は、東京証券取引所の業務規程第43条で決められています。要点は次の2つです。
- 基準は、取引所が届出を受理した日(実施日の前営業日)の最終値段(終値)
- その値段から、10%相当額を減じた値段までの範囲で、売り手が指定し取引所が適当と認めた値段にする
条文は東証が公表した業務規程の一部改正新旧対照表(2009年11月施行分)で確認できます。改正が重ねられているため、最新の条文はJPXの規則集で確かめてください。
実際の割引率は、10%いっぱいではなく数%台にとどまる例が多く見られます。開示資料の実例を見てみましょう。
実例:上場会社の開示資料に書かれていること
立会外分売は、2回に分けて開示されることがあります。1回目は「分売を予定している」というお知らせ、2回目は「実施日と値段が決まった」というお知らせです。2018年に株式会社東京自働機械製作所が公表した資料を例にすると、次のような項目が並んでいます。
| 項目 | 1回目(予定の開示) | 2回目(実施の開示) |
|---|---|---|
| 分売予定株式数 | 72,000株 | 72,000株 |
| 時期 | 分売予定期間:2018年8月17日〜8月23日 | 分売実施日:2018年8月17日 |
| 値段 | 実施日前日の終値もしくは最終気配値を基準に決める予定 | 1,721円(前日終値1,775円・ディスカウント率3.04%) |
| 買付申込数量の限度 | 1人につき2,000株(売買単位100株) | 同じ |
| 目的 | 株式の分布状況の改善及び流動性向上 | |
出典:同社の開示資料(株式の立会外分売に関するお知らせ・株式の立会外分売実施に関するお知らせ)。ここでの社名は開示資料の読み方を示す例で、この銘柄の売買をすすめるものではありません。
1回目の開示には「株式市場の急激な変動により実施が困難となった場合には、中止または延期する可能性があります」という一文もあります。予定が出ても、実施されるとは限りません。開示資料は、JPXの適時開示情報閲覧サービスで会社名や銘柄コードから探せます。
申し込みの流れ:受付は「前日の夕方〜当日の朝」と短い
個人が分売に申し込むときの一般的な流れは次のとおりです。証券会社ごとに取り扱う分売・受付時間・抽選の方法が違うので、必ず自分の証券会社の案内で確認してください。
| タイミング | 起きること | 自分がすること |
|---|---|---|
| 数日〜1週間ほど前 | 会社が「分売予定」を開示する | 予定期間・株数・1人あたりの上限を読む |
| 実施日の前営業日・取引終了後 | 値段と実施日が決まり、条件が発表される | 値段とディスカウント率を確認する |
| 前営業日の夕方〜実施日の朝 | 証券会社が申込みを受け付ける | 締切までに株数を指定して申し込む。代金分の資金を口座に入れておく |
| 実施日の朝(取引開始前) | 申込みが多ければ抽選。当選分が約定する | 約定したかどうかを取引履歴で確認する |
取引所の申込み受付は午前8時45分までですが、証券会社はそれより前に締め切ります。たとえば楽天証券の案内では、分売の取扱いと申込みの方法を立会外分売のページで説明しています。会社員なら、前日の夜に申し込みを済ませておくのが現実的です。
NISAの成長投資枠で申し込めるかどうかも証券会社によって違います。楽天証券は成長投資枠の対象商品に立会外分売を含めていますが(楽天証券「成長投資枠」)、他社の扱いは各社の案内を見てください。
申し込む前に確認する5つのこと
「前日より安く買える」と聞くと得な話に見えますが、分売は大株主が株を売りたい場面です。次の5点を確認してから申し込んでください。
① 当日の株価が分売価格を下回ることがある
分売で買った人の一部は、取引が始まるとすぐに売ろうとします。売りが重なると、当日の株価が分売価格より下がることがあります。割引は「その日に利益が出る」ことの保証ではありません。分売の発表そのものが、売りが増える材料として受け止められることもあります。
② なぜ大株主が売るのかを開示で読む
開示資料の「目的」欄は「分布状況の改善」などの定型文が多いですが、同じ時期に大株主の異動や業績の修正が出ていないか、適時開示の一覧で前後も見てください。株を増やす・減らす動きの読み方は、公募増資が発表されると株価が下がるのはなぜ?や自社株買いとは?も参考になります。なお立会外分売はすでにある株の売り出しで、公募増資のように株数そのものが増えるわけではありません。
③ 1人あたりの上限と抽選がある
実例のように「1人につき2,000株まで」といった上限があり、申込みが多ければ抽選になり、希望した株数より少なく割り当てられることもあります。全部買えるつもりで資金計画を立てないことです。
④ 買った後は、ふつうの株と同じ扱い
分売で買った株は、市場で買った株と同じように持ったり売ったりできます。税金も同じで、売って利益が出れば譲渡所得として課税されます。特定口座(源泉徴収あり)なら口座の中で計算されます。税金の基本は株の税金入門で解説しています。手数料は証券会社によって、買付けが無料でも売却時には通常の手数料がかかる場合があります。
⑤ 申込みの取消し・資金の拘束を確認する
締切後の取消しができるかどうかは証券会社によって違うので、申し込む前に確認してください。申込み時に代金分の資金が拘束されることもあるので、生活費とは分けたお金で申し込んでください。投資に回すお金の考え方は株式投資の始め方ロードマップから順に確認できます。
「分売の株を優先して回します」という勧誘には乗らない
立会外分売の申込みは、自分が口座を持つ証券会社の画面から、自分で出すものです。SNSやメッセージアプリで「分売の株を優先的に回せる」「確実に当たる枠がある」「代わりに申し込むので先に資金を送って」と持ちかけてくる話は、山崎正義が300万円を失った頃から形を変えて続く「特別な枠」型の手口です。
登録のある証券会社かどうかは、金融庁「金融商品取引業者登録一覧」で確かめられます。調べ方は無登録業者の見分け方で手順を載せています。

分売は「安く買える日」ではなく「大株主が売る日」です。割引率だけで飛びつかず、開示資料を1枚読んでから申し込むかどうかを決めてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 立会外分売と、公募増資・売出し(PO)は何が違いますか?
どちらも株を多くの投資家に配る方法ですが、立会外分売は取引所の仕組みを使い、前日終値を基準にした固定価格で、翌朝の取引開始前に売買を成立させます。公募増資は会社が新しく株を発行してお金を集める方法で、株数が増えます。売出しは既存の株を、証券会社が期間を設けて販売する方法です。
Q2. 分売で買った株は、その日のうちに売れますか?
分売は取引開始前に約定するため、当日の取引時間中に売り注文を出せる場合があります。ただし扱いは証券会社によって違うので事前に確認が必要で、売ったときの値段が分売価格を上回るとは限りません。
Q3. 分売の予定が出たのに、実施されないことはありますか?
あります。開示資料にも「中止または延期する可能性」が書かれていることが多く、相場が大きく動いたときなどに中止・延期されます。申込みをしていた場合の扱いは証券会社の案内に従います。
Q4. 申込みに手数料はかかりますか?
買付けの手数料を無料にしている証券会社もありますが、一律ではありません。売るときは通常の売買手数料がかかります。手数料の見方は株の売買手数料の仕組みも参考にしてください。
Q5. 単元未満(1株単位)で申し込めますか?
分売は売買単位(多くは100株)で申し込むのが基本です。開示資料にも「売買単位:100株」と書かれています。1株単位で買いたい場合は、単元未満株(ミニ株)の仕組みを使うことになります。
まとめ
- 立会外分売は、大株主などの大口の売りを、取引開始前に多くの買い手へ小分けにして売る方法
- 値段は前営業日の終値を基準に、最大10%の範囲で割り引いた固定価格(業務規程第43条)。実例では数%台が多い
- 取引所の申込み受付は翌日8:00〜8:45。証券会社の締切はもっと早いので、前日の夜に申し込むのが現実的
- 1人あたりの上限と抽選があり、予定が出ても中止・延期されることがある
- 割引があっても、当日の株価が分売価格を下回ることがある。「大株主が売る日」だと理解して判断する
- 「分売の枠を回します」という勧誘には乗らない。申込みは自分の証券口座から
山崎から一言



私が投資で失敗した頃は、「安く買える」「今だけ」という言葉に弱く、仕組みを確かめる前に飛びついていました。立会外分売は取引所の正式な仕組みですが、割引の裏には売りたい人がいます。開示資料を1枚読むだけで、判断の材料はぐっと増えます。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年10月時点の公表資料に基づきます。最新の取扱いは取引所・各証券会社の案内をご確認ください。












