こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「株を買った会社から株主総会の案内が届いたけれど、ハガキや数枚の紙だけで、業績や議案の詳しい説明が載っていない」「前はもっと分厚い冊子だった気がする」——株を持ち始めた会社員の方から、こうした声を聞くことがあります。
これは会社が手を抜いたのではなく、2023年3月から上場会社に義務づけられた「株主総会資料の電子提供制度」によるものです。この記事では、会社法の条文と法務省の案内をもとに、制度の仕組み、紙で受け取りたいときの「書面交付請求」の出し方、そして請求しても1年後に終わることがある点まで整理します。
株主総会や議決権の基本は株主総会と議決権のきほんで説明しています。この記事は電子提供制度と書面交付請求に絞ります。
結論:詳しい資料はウェブに載り、紙で欲しい人は基準日までに「書面交付請求」をする
先に要点をまとめます(2026年10月27日時点で、e-Gov法令検索に掲載されている会社法・社債株式振替法の条文と、法務省の案内で確認した内容です)。
- 上場会社(振替株式を発行する会社)は、電子提供制度を使うことが法律で義務づけられています(社債、株式等の振替に関する法律 第159条の2第1項)。法務省の案内では、令和5年(2023年)3月1日以降に開催される株主総会から使われています
- 会社は、総会の日の3週間前の日(または招集通知を出した日のいずれか早い日)から、総会の日の3か月後まで、資料をウェブサイトに載せ続けなければなりません(会社法 第325条の3)
- 郵送される招集通知には、資料が載っているウェブサイトのアドレスなどが書かれ、参考書類や事業報告そのものは同封しなくてよくなりました(会社法 第325条の4)
- 紙で受け取りたい株主は「書面交付請求」ができます。基準日までに請求しておけば、その総会から紙の資料が届きます(会社法 第325条の5第1項・第2項)
- 請求は口座のある証券会社経由でも出せます(社債株式振替法 第159条の2第2項)。手数料や受付方法は証券会社ごとに違います
- 請求から1年たつと、会社は「紙の送付をやめます」と通知できます。1か月以上の期間内に異議を出さないと、請求は効力を失います(会社法 第325条の5第4項・第5項)
電子提供制度とは:資料は「郵送」から「ウェブ掲載+お知らせ」へ
法務省の案内では、電子提供制度を「株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し、そのウェブサイトのアドレス等を書面により通知することによって、株主総会資料を提供することができる制度」と説明しています。令和元年の会社法改正で作られ、令和4年(2022年)9月1日に施行されました。
以前と今の違い
| 項目 | 制度の前 | 今(電子提供制度) |
|---|---|---|
| 参考書類・事業報告・計算書類 | 招集通知と一緒に郵送 | 会社のウェブサイトなどに掲載 |
| 郵送されるもの | 冊子一式 | 掲載先のアドレスなどを書いた招集通知(議決権行使書面を同封する会社もある) |
| 資料を見られる時期 | 総会の2週間前までに発送 | 遅くとも総会の3週間前の日から掲載 |
| 掲載の期間 | — | 総会の日後3か月を経過する日まで |
| 紙で読みたい場合 | 何もしなくても届く | 書面交付請求をしておく |
法務省は、会社側の印刷・郵送の時間や費用が減るだけでなく、株主にとっても以前より早く、充実した資料を見られることを制度の利点として挙げています。実際、条文上は掲載開始が「総会の3週間前の日」までとなり、紙の時代(2週間前までの発送)より1週間早く読めるようになりました。
ウェブに載るもの・載らなくてよいもの
会社法 第325条の3第1項は、ウェブに載せる情報として、招集の決定事項、株主総会参考書類と議決権行使書面に書くべき事項、定時総会の場合の計算書類と事業報告、連結計算書類などを挙げています。また、議決権行使書面を紙で同封する場合は、その内容をウェブに載せなくてもよい(同条第2項)とされています。届いた封筒に議決権行使書(ハガキ)が入っているのは、このためです。
有価証券報告書をEDINETで提出している会社は、総会資料の内容が有価証券報告書に含まれていれば、その部分をウェブに重ねて載せなくてよい特例もあります(同条第3項)。その場合は、招集通知にその旨が書かれます(第325条の4第2項)。
招集通知に書かれていること:まず「掲載先」を探す
電子提供制度のもとで届く招集通知には、総会の日時・場所・議題などに加えて、電子提供措置をとっている旨と、資料を見るためのアドレスなどが書かれます(会社法 第325条の4第2項、会社法施行規則 第95条の3)。会社によっては、自社サイトのほかに、東京証券取引所のサイトなど複数の掲載先を案内していることもあります。
届いた通知を読むときの順番は、次のとおりです。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 総会の日時と、議決権行使の期限(郵送・インターネットの締切) |
| 2 | 議案の一覧(何を決める総会か) |
| 3 | 資料の掲載先(アドレスやQRコード) |
| 4 | 掲載先で、参考書類(議案の詳しい説明)と事業報告を読む |
| 5 | 賛否を決めて、議決権行使書を返送するかインターネットで行使する |

招集通知は会社から株主名簿の住所に郵送で届くのが基本です。メールやSMSで「株主総会資料はこちら」と届き、証券口座のIDやパスワードの入力を求められた場合は、開かずに会社の公式サイトから確かめてください。
議決権行使サイトや会社の掲載ページで、証券口座のログイン情報を求められることは通常ありません。偽サイトで証券口座の情報を盗む手口については、証券口座が乗っ取られたらどうなる?で手口と防ぎ方をまとめています。
紙で受け取りたいとき:書面交付請求の出し方
「パソコンやスマホで長い資料を読むのはつらい」「紙に書き込みながら読みたい」という方のために、会社法は書面交付請求を用意しています。株主は、会社に対して、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求できます(会社法 第325条の5第1項)。
請求の窓口は2つ
| 窓口 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 口座のある証券会社 | 証券会社を経由して会社に請求を取り次いでもらう(社債株式振替法 第159条の2第2項) | その証券会社で預けている株だけが対象。手数料や申出書の取り寄せ方は証券会社ごとに違う |
| 会社の株主名簿管理人(信託銀行など) | 招集通知や会社のIRページに書かれた株主名簿管理人に直接申し出る | 株主番号などが必要になることがある。手続き・手数料は各管理人に確認する |
手数料の一例として、松井証券のよくある質問では、同社で手続きする場合は1銘柄につき1,100円(税込)と案内されています(松井証券「株主総会資料の書面交付請求の方法を教えてください」)。無料で受け付ける窓口もあるため、請求前に自分の口座がある証券会社の案内を確かめてください。
期限は「基準日」まで
会社が紙を送らなければならないのは、その総会の議決権の基準日までに書面交付請求をした株主です(会社法 第325条の5第2項)。3月決算の会社なら、定時総会の基準日は3月末日とされていることが多いため、6月の総会で紙を受け取りたいなら、3月末までに会社側へ請求が届いている必要があります。基準日(権利確定日)と、株主名簿に載るために必要な買付日の関係は配当金はいつもらえる?権利確定日・権利付最終日から受け取りまでの流れで説明しています。
証券会社を経由する場合は、取次の時間がかかります。松井証券の案内でも、基準日までに同社が書類を受け入れていれば直近の総会から、過ぎた場合は次の基準日の総会分からの扱いとされています。基準日の直前に出すと間に合わないことがあるので、余裕をもって手続きしてください。
紙でも「全部」が届くとは限らない
書面交付請求をしても、届く紙に資料のすべてが載るとは限りません。会社は、法務省令で定める事項について、交付する書面に記載しなくてよいと定款で定めることができます(会社法 第325条の5第3項)。会社法施行規則 第95条の4は、その対象として、議案以外の参考書類の記載事項、事業報告の一部、計算書類、連結計算書類などを挙げています。
つまり、紙で請求しても、議案と一部の事項だけが印刷され、計算書類などはウェブで見る、という形になる会社があります。どこまで紙に載るかは会社の定款と運用次第です。
見落としやすい点:請求は1年で終わることがある
書面交付請求は、一度出せばずっと続くとは限りません。会社法 第325条の5第4項・第5項の仕組みは次のとおりです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 請求から1年経過 | 会社は、紙の交付を終える旨を株主に通知し、異議があれば一定期間内に述べるよう催告できる |
| 2. 催告期間 | 1か月を下回ることはできない |
| 3. 異議を述べなかった場合 | 催告期間が過ぎた時点で、書面交付請求は効力を失う |
| 4. 異議を述べた場合 | 請求は続く。次の1年は、異議を述べた日から数える |
会社から「書面交付を終了します」という通知が届き、引き続き紙で欲しい場合は、書かれている期限までに異議を出す必要があります。通知を読まずに捨ててしまうと、翌年から紙が届かなくなります。
また、松井証券の案内では、手続き後に基準日までにその銘柄をすべて売却すると、再度の手続きが必要になる場合があるとされています。一度売って買い直した銘柄は、請求が生きているか確かめてください。
山崎の見解:薄い封筒こそ、議案をきちんと読む習慣を
山崎正義が投資で300万円を失った頃は、「この株で一気に取り返す」ことばかり考えていて、株主総会の資料など開いたこともありませんでした。今振り返ると、会社が何を決めようとしているかを読まずに株を持つのは、契約書を読まずに判を押すのと同じです。
電子提供制度で封筒は薄くなりましたが、情報が減ったわけではなく、置き場所がウェブに移っただけです。むしろ早く読めるようになった分、議案の中身(役員の選任、配当、定款変更など)に目を通すきっかけにしてください。
一方で、「株主総会」「株主優待」「株主名簿」といった言葉は、投資勧誘の電話やメールの口実にも使われます。会社からの通知は株主名簿の住所に届くのが基本で、知らない業者から「あなたが株主の会社の情報があります」と連絡が来た場合は、話を聞かずに切ってください。
招集通知が届いたときのセルフチェック
| チェック項目 | 確認 |
|---|---|
| 封筒の差出人は、株を持っている会社か株主名簿管理人か | □ |
| 資料の掲載先(アドレス・QRコード)を見つけたか | □ |
| 議決権行使の期限(郵送・インターネット)を確認したか | □ |
| 紙で読みたい銘柄について、基準日までに書面交付請求を出したか | □ |
| 「書面交付終了」の通知が来ていないか(来ていたら異議の期限を確認) | □ |
| メール・SMSで証券口座のログインを求められていないか | □ |
参照した一次情報は次のとおりです。
- 法務省「令和5年3月1日以降に開催される株主総会から上場会社の株主総会資料は、ウェブサイトへの掲載等の方法によって提供されることになります」
- e-Gov法令検索「会社法」(第325条の2〜第325条の7)
- e-Gov法令検索「会社法施行規則」(第95条の3・第95条の4)
- e-Gov法令検索「社債、株式等の振替に関する法律」(第159条の2)
よくある質問
Q1. 書面交付請求をしないと、議決権を使えなくなりますか?
使えます。書面交付請求は「資料を紙で受け取るかどうか」の手続きで、議決権とは別です。招集通知とあわせて議決権行使書が届く会社が多く、インターネットで行使できる会社もあります。
Q2. NISA口座で持っている株にも招集通知は届きますか?
届きます。NISA口座でも、基準日に株主名簿に載っていれば株主として扱われます。書面交付請求も、その株を預けている証券会社の手続きに従って出せます。
Q3. 全部の銘柄について紙を受け取りたいのですが、まとめて請求できますか?
書面交付請求は銘柄(会社)ごとの手続きです。証券会社によっては1枚の申出書に複数銘柄を書けますが、手数料が銘柄ごとにかかる場合があります。読みたい銘柄に絞るのも一つの方法です。
Q4. 総会が終わったあとでも資料は読めますか?
会社法上、ウェブへの掲載は総会の日後3か月を経過する日まで続けることになっています。そのあとも会社のIRページに残している会社はありますが、義務ではありません。
Q5. 1年たったら必ず紙が止まるのですか?
必ずではありません。1年たったときに会社が「終了の通知と催告」をすることが「できる」という仕組みで、実際に通知するかは会社次第です。通知が来たら、期限内に異議を述べれば紙の交付は続きます。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 金融庁 金融サービス利用者相談室
- ④ 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)
山崎から一言



封筒が薄くなったのは、資料がなくなったからではなく、ウェブに引っ越したからです。紙が好きな方は、次の基準日までに証券会社の手続きを一度確認してみてください。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。条文と手続きは2026年10月27日時点で確認した内容です。












