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朝起きてニュースを見たら「日経平均、大幅下落」。証券アプリを開くと、評価額が見たことのない赤字になっている。こういう日に、頭で考えるより先に指が動いてしまうのが相場の急落です。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。振り返ると、損失を大きくしたのは下落そのものより、下がった直後に「早く取り返したい」と焦って打った手でした。急落の日は、普段なら選ばない行動を選びやすくなります。
この記事では、相場が急落したときにやりがちで、あとから後悔につながりやすい行動を7つに整理し、なぜそうなるのか、代わりに何を確認すればよいのかをまとめます。「売るべきか・持つべきか」の正解を示す記事ではありません。どちらを選ぶにしても、判断を誤りにくくするための手順の話です。
結論:急落の日に「新しい判断」をしない
先に結論をまとめます。
- 急落の日にやってはいけないのは、売ることそのものではなく、事前に決めていなかった行動をその場の感情で取ること
- とくに避けたいのは、①成行での投げ売り、②生活資金の追加、③信用取引などで取り返そうとする、④計画のないナンピン、⑤SNSの「今が底」情報に乗る、⑥積立の設定を衝動で変える、⑦一日中値動きを見続ける、の7つ
- 急落のあとに大きく戻る日もあれば、さらに下がり続ける局面もある。どちらになるかは事前にはわからない
- だから、急落の日に考えるのではなく、平時のうちに「下がったらどうするか」を一文で決めておくことが最大の備えになる
損失をどこまで受け入れるかのルール作りは損切りとリスク管理の基本|資金管理ルールの作り方で詳しく整理しています。この記事は、そのルールを「急落の当日に守れなくなる場面」に絞った内容です。
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急落の日、市場では何が起きているか
やってはいけないことの前に、急落の日の相場がふだんとどう違うかを押さえておきます。仕組みを知っているだけで、画面の数字に振り回される度合いが変わります。
実際にあった急落の例
記憶に新しいのは2024年8月です。日経平均株価は8月5日に前営業日比4451円28銭(12.40%)安と、1987年のブラックマンデー翌日を超える過去最大の下げ幅を記録しました。ところが翌6日には3217円04銭(10.22%)高と、今度は過去最大の上げ幅になっています。
| 日付 | 日経平均の終値の動き | その日に慌てて売った人から見ると |
|---|---|---|
| 2024年8月5日 | 4451円28銭安(-12.40%) | 大きく下がった価格で売ることになった |
| 2024年8月6日 | 3217円04銭高(+10.22%) | 売った翌日に大きく戻り、買い戻すかどうかでまた迷う |
ただし、これは「急落しても翌日には戻る」という意味ではありません。下落が数か月、数年と続いた局面も過去にはあります。ここから言えるのは、急落の日の値動きは上下どちらにも極端になりやすく、その日の判断は外れやすいということだけです。
値幅制限と取引停止のしくみ
| 市場 | しくみ | 急落の日に起きること |
|---|---|---|
| 日本株(東証) | 値幅制限(1日に動ける値段の上限と下限) | 下限まで下がる「ストップ安」になると、売り注文が買い注文を大きく上回り、売りたくても約定しないことがある |
| 米国株 | 市場全体のサーキットブレーカー(S&P500が前日終値から7%・13%・20%下落で発動) | 7%・13%では原則15分間、20%ではその日の残り時間、市場全体の取引が止まる |
取引が止まる・約定しないという事態は、ふだんの取引ではまず経験しません。「いつでも売れる」という前提が崩れる日があることを知っておくと、次に挙げる行動の危うさが見えやすくなります。
相場が急落したときにやってはいけない7つのこと
① 成行注文で慌てて全部売る
急落の日に最も多いのが、評価額の減り方に耐えられず、成行注文でまとめて売ってしまう行動です。成行注文は「値段を指定せず、いま出ている注文に合わせて売買する」方法なので、買い手が少ない急落の場面では、想定よりかなり安い値段で約定することがあります。
売ること自体が悪いわけではありません。事前に決めた損切りの条件に達したのなら、ルールどおりに売るのは筋の通った判断です。問題は、ルールがないまま「怖いから」で売ることです。注文方法の違いは株の注文方法の基本|成行注文と指値注文の使い分けで整理しています。
② 生活費や急な出費への備えを投資に回す
「こんなに下がったなら買い時だ」と、生活防衛資金や近いうちに使う予定のお金まで追加で入れる行動です。下落がさらに続けば、生活のために値下がりした状態で売らざるを得なくなり、損失を自分で確定させることになります。
追加で買うかどうかを考えるのは、生活費と備えを除いた余裕資金の範囲に限る。これは急落の日でも変わりません。
③ 信用取引やレバレッジで「一気に取り返す」
山崎正義が300万円を失ったときに踏んだのが、まさにこれでした。手元の資金以上の金額を動かせる信用取引やFX・CFDなどのレバレッジ取引は、読みが外れたときの損失も同じ倍率で大きくなります。
信用取引では、株価が下がって担保の割合が一定の水準を下回ると、追加の保証金(いわゆる追証)を求められます。期限までに入れられなければ、証券会社の判断で強制的に決済されることがあります。急落の日はこの水準を割り込みやすく、取り返すつもりの取引が、損失を確定させる取引に変わりやすいのです。
レバレッジの仕組みと損失の出方はFXとは?仕組み・レバレッジ・損失リスクを整理でも解説しています。
④ 計画のないナンピン買いを繰り返す
値下がりした銘柄を買い増して平均の取得単価を下げる「ナンピン」は、あらかじめ「どこまで下がったら、いくら買い増すか、合計でいくらまで」と決めている場合と、下がるたびに場当たりで買い増す場合とで、意味がまったく違います。
後者は、同じ銘柄への集中が下がるほど強まるということです。平均単価は下がって見えても、その銘柄がさらに下がれば損失の額はふくらみ続けます。「平均単価を下げる」ことは、損失を小さくすることとは別です。
⑤ SNSや掲示板の「今が底」「この銘柄が反発する」に乗る
急落の日には、SNSに「ここが底」「今こそ買い」「この銘柄だけは戻る」といった投稿が一気に増えます。根拠が示されていないか、あっても後から検証できないものがほとんどです。底がどこだったかは、あとになってからしかわかりません。
さらに注意が必要なのは、そこから個別のメッセージや投資グループへの誘導につながるケースです。これについては後の「山崎の見解」で詳しく触れます。
⑥ 積立やNISAの設定を衝動的に止める・変える
毎月の積立を急落の日に止めてしまう、あるいは逆に「安いうちに」と金額を大きく引き上げる行動です。定額の積立は、値下がりした時期に多くの口数を買う性質があるため、下落を理由に止めると、その性質を使わないことになります。
とはいえ、家計が苦しくなって続けられないなら、減額や停止は正当な判断です。避けたいのは、家計の事情ではなく画面の赤い数字を理由に、その日のうちに設定を変えることです。設定の決め方は積立投資の設定の決め方|金額・頻度・銘柄の分け方にまとめています。
⑦ 一日中、株価の画面を見続ける
数分おきにアプリを開き、評価額が増えた・減ったで気持ちが上下する状態です。見る回数が増えるほど、①〜⑥の行動を取るきっかけも増えます。長期の積立や分散投資をしているなら、その日の値動きを見ても、やるべきことは変わらない場合がほとんどです。
米国株を持っている場合は、株価の下落と同時に円高が進み、円での評価額が二重に減って見えることもあります。この仕組みは円高・円安で米国株の資産額はどう変わる?で整理しています。
7つの行動をまとめて確認する
| やりがちな行動 | 起きやすいこと | 代わりに確認すること |
|---|---|---|
| ① 成行で全部売る | 想定より安い値段で約定する | 事前に決めた損切りの条件に達しているか |
| ② 生活資金を追加する | 下落が続くと取り崩しで損失が確定する | 追加するお金が余裕資金の範囲か |
| ③ レバレッジで取り返す | 追証・強制決済で損失が拡大する | その取引の最大損失額を金額で言えるか |
| ④ 場当たりのナンピン | 1銘柄への集中が強まる | 買い増しの上限を事前に決めているか |
| ⑤ SNSの「今が底」に乗る | 根拠のない情報や勧誘に誘導される | 発信者の根拠と、登録の有無を確認できるか |
| ⑥ 積立を衝動で変える | 続ける前提の計画が崩れる | 変える理由が家計か、値動きか |
| ⑦ 画面を見続ける | ①〜⑥のきっかけが増える | 今日の値動きで、やるべきことが変わるか |
急落に備えて平時に決めておく3つのこと
急落の日に冷静になるのは、ほとんどの人にとって難しいことです。山崎正義もそうでした。だからこそ、判断は落ち着いているうちに済ませ、急落の日は決めたことを実行するだけにするのが現実的です。
| 決めておくこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 投資に回さないお金 | 「生活費の◯か月分と、◯年以内に使うお金は投資に入れない」 |
| 保有しているものごとの方針 | 「積立の投資信託は、下落しても家計が続く限り設定を変えない」「個別株は購入価格から◯%下がったら売る」 |
| 急落の日の行動 | 「当日は注文を出さない。翌営業日以降に、上の方針に照らして判断する」 |
数字は人によって違うので、ここでは空欄にしています。大事なのは数字の正しさより、紙やメモアプリに書いて、急落の日に読み返せる形にしておくことです。なお、急落の局面で損失を確定させた場合の税金の扱い(ほかの利益との相殺や、翌年以降への繰り越し)は損益通算と繰越控除の基本で確認できます。
山崎の見解:「暴落で失った分を取り戻せます」という勧誘に注意
山崎正義が130件以上の案件を調査してきた中で、急落の直後は勧誘が増えやすいタイミングだと感じています。損をして焦っている人ほど、「取り戻せる」という言葉に反応しやすいからです。次のような言い方が出てきたら、立ち止まる理由になります。
- 「暴落のときこそチャンス。この方法なら損失を取り戻せる」——将来の成果を約束している
- 「プロが選んだ反発銘柄を、グループ内だけで教える」——SNSやLINEの投資グループへの誘導
- 「元本保証で、相場に関係なく毎月◯%の配当」——値下がりの可能性がある投資で元本保証をうたっている
- 「損失の回復をサポートする」「取り返した利益の一部を報酬に」——被害回復を名目にした二次被害の典型
投資の助言や金融商品の取引を業として行うには、原則として金融庁への登録が必要です。登録の有無は誰でも確認できます。確認の手順はFX会社の選び方|金融庁の登録を自分で確認する手順つきに、勧誘の典型パターンは投資詐欺の典型手口と見分け方にまとめています。なお、登録があることは事実の確認にすぎず、それだけで提案の中身が安全だという意味にはなりません。
レバレッジをかけた取引で追加の担保を求められる「追証」の条件は、信用取引とは?現物取引との違いと、追証が発生する仕組みで確認できます。
急落の場面では、ストップ安に張りついて成行注文でも売れない日があります。その仕組みと翌日の扱いはストップ安で売れないのはなぜ?値幅制限の仕組みと、比例配分・翌日に起きることで詳しく解説しています。
よくある質問
Q1. 急落したら、すぐに売ったほうがいいのでしょうか。
当サイトとして一律の答えは示せません。事前に決めた損切りの条件に達しているなら、ルールどおりに売るのは筋の通った判断です。一方で、条件を決めていないまま「怖いから」という理由だけで売ると、あとから同じ迷いを繰り返しやすくなります。まずは自分の方針が何だったかを確認することが先です。
Q2. 急落は買い時だと聞きますが、本当ですか。
急落のあとに価格が戻った例もあれば、さらに下がり続けた例もあり、事前にどちらになるかはわかりません。「安くなった」ことと「これから上がる」ことは別の話です。買い増しを考える場合でも、生活費と備えを除いた余裕資金の範囲で、上限を決めてから行うことをすすめます。
Q3. 新NISAで買った投資信託が大きく値下がりしました。解約すべきですか。
解約するかどうかは、そのお金をいつ使う予定か、家計に影響が出ているかで考えるのが基本です。NISA口座で売却した場合、その年の非課税枠の扱いや、損失がほかの利益と相殺できない点など、課税口座とは違う点があります。制度の違いは新NISAの基本|つみたて投資枠と成長投資枠の違いで確認してください。
Q4. 急落に備えて、今からできることはありますか。
「投資に回さないお金」「保有しているものごとの方針」「急落の日の行動」の3つを、落ち着いているうちに書き出しておくことです。あわせて、自分が持っているものが1つの銘柄や1つの国に偏りすぎていないかを見直すと、急落の日の心理的な負担も変わります。株式投資全体の流れは株式投資の始め方ロードマップにまとめています。
困ったときの相談先
- 消費者ホットライン(188):勧誘トラブル・契約全般の相談窓口
- 警察相談専用電話(#9110):詐欺被害が疑われるとき
- 法テラス:法的な手続きや費用の相談
- 日本弁護士連合会:弁護士を探すとき
- 金融庁 金融サービス利用者相談室:業者の登録確認、無登録業者に関する情報提供
山崎から一言
相場の急落は、投資を長く続けていれば、いつか経験する可能性が高い出来事です。避けられないのは下落そのもので、避けられるのは下落した日に自分が取る行動のほうです。
山崎正義が300万円を失ったときは、下がった翌日に「取り返す」ことしか考えていませんでした。いま振り返ると、必要だったのは相場を読む力ではなく、何もしない日を自分に許すことだったと思います。急落の日に画面を閉じる勇気も、立派なリスク管理です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。記事中の過去の相場の数値は仕組みを説明するための例示であり、将来の値動きを示すものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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