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「今の証券会社は使いにくいから乗り換えたい。でも、持っている株を売ると税金がかかるし、買い直すのも面倒」——山崎の副業相談室には、こうした相談も届きます。答えを先に言うと、上場株式は売らずに別の証券会社へ移せます。これを「移管(いかん)」と呼びます。ただし、どの口座からどの口座へ移すかで、取得価額(買った値段)がそのまま引き継がれるかどうかが変わり、NISA口座の株や一部の商品は思いどおりに移せません。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時は口座の種類や取得価額の意味を理解しないまま売買していて、あとから損益の計算に困りました。この記事では、生きている本人が自分の意思で株を移す場合に絞って、移管の流れ・取得価額の扱い・手数料・移せない商品を整理します。親から相続した株を自分の口座へ移す手続きは、親が亡くなったら株はどうなる?相続した株の名義変更(移管)の手順と、評価額の決まり方で別に扱っています。
結論:特定口座どうしなら取得価額ごと移せる。NISAと外国株は別扱い
- 移管は「売らずに住所を変える」手続き:株数も取得日もそのままで、売却扱いにはならないため、移管そのものに税金はかかりません
- 特定口座→特定口座なら取得価額が引き継がれる:移管元の証券会社から移管先へ取得価額の情報が伝わり、移管先でも損益が自動で計算されます
- 一般口座から移すと取得価額は自分で管理:一般口座の株は、原則として他社の特定口座には入れられず、移管先でも一般口座での管理になります
- NISA口座の株は他社のNISA口座へは移せない:他社へ移すと課税口座(特定口座・一般口座)に入り、非課税の扱いは終わります
- 手数料と移せない商品は会社ごとに違う:出庫手数料が無料の会社もあれば、1銘柄ごとにかかる会社もあります。外国株・投資信託・単元未満株などは、移管先が受け入れない場合があります
- 移管中は売れない:手続きには通常1〜2週間ほどかかり、その間はどちらの口座でも売却できません
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移管とは何か:売却・買い直しとの違い
日本の上場株式は「株式振替制度」によって電子的に管理されています。株主名簿上の持ち主は本人のままで、どの証券会社の口座に記録されているかだけを付け替えるのが移管です。
| 比較項目 | 移管する | 売却して買い直す |
|---|---|---|
| 税金 | 移管そのものには税金がかからない | 利益が出ていれば売却時に課税される |
| 取得価額・取得日 | 原則として引き継がれる(口座の種類による) | 買い直した値段・日付に変わる |
| かかる費用 | 出庫手数料(無料〜1銘柄ごとに有料まで会社次第) | 売買手数料・スプレッド、売って買うまでの値動き |
| かかる時間 | 書類のやり取りで1〜2週間程度 | 即日も可能(受渡しは2営業日後) |
| 株主優待の長期保有 | 継続が途切れる場合がある(後述) | 一度手放すので途切れるのが通常 |
含み益が大きい株を「乗り換えのために売る」と、本来払わなくてよかったタイミングで税金を払うことになります。反対に、含み損がある株で損益通算をしたいなら、あえて売るほうが合う場面もあります。どちらが良いかは人によって違うため、まず「移せる」ことを知ったうえで選ぶのが順番です。
移管の手続きの流れ
細かい書類名は証券会社ごとに違いますが、流れはおおむね次のとおりです。
| 順番 | やること | 確認するポイント |
|---|---|---|
| ① | 移管先に口座を開く | 移管元と同じ名義・同じ住所であること。特定口座で受けたいなら移管先でも特定口座を開設しておく |
| ② | 移管先で受け入れ可否を確認する | 移す銘柄・商品を移管先が扱っているか(外国株・投資信託・単元未満株は特に注意) |
| ③ | 移管元に移管の依頼をする | 特定口座の株を移すときは、特定口座用の移管依頼書が必要になるのが一般的。移管先の口座番号などを記入する |
| ④ | 移管元から移管先へ株が振り替えられる | この間は売却できない。完了まで1〜2週間程度を見込む |
| ⑤ | 移管先で残高と取得価額を確認する | 株数・取得単価が移管元の表示と合っているかを必ず見る |
依頼を出す先が「移管先」ではなく「移管元」である点は、間違えやすいところです。移管先の証券会社が案内ページで手順を説明していることも多いので、両方の案内を見比べてから書類を用意すると迷いにくくなります。
取得価額はどうなるか:口座の組み合わせ別に整理
移管で一番大事なのが取得価額です。取得価額がわからなくなると、売ったときの利益を正しく計算できなくなります。移す前と移した後の口座の種類で、扱いは次のように分かれます。
| 移管元 → 移管先 | 移せるか | 取得価額の扱い |
|---|---|---|
| 特定口座 → 特定口座 | 移せる | 移管元から通知され、そのまま引き継がれる。移管先でも源泉徴収・年間取引報告書の対象になる |
| 特定口座 → 一般口座 | 移せる | 取得価額の情報は通知されるが、以後の損益計算と申告は自分で行う |
| 一般口座 → 特定口座 | 原則できない | —(移管先でも一般口座に入れるのが通常) |
| 一般口座 → 一般口座 | 移せる | 自分で管理。取引報告書などの記録を保管しておく |
| NISA口座 → 他社のNISA口座 | できない | — |
| NISA口座 → 他社の課税口座 | 会社による | 非課税の扱いが終わり、取得価額は移した時点の時価に置き換わる扱いになる |
移管先ですでに同じ銘柄を持っている場合
移管先の特定口座にすでに同じ銘柄がある場合、取得単価は移してきた株と合わせた平均で計算し直されます(総平均法に準じた方法)。移管後の取得単価が移管元の表示と違って見えても、これが理由のことがあります。どちらの口座で何株をいくらで買ったのかを、移管前にメモしておくと確認が楽になります。
取得価額がわからなくなったときの扱い
一般口座で古くから持っている株などで取得価額がわからない場合、売却代金の5%を取得費とみなす「概算取得費」という方法があります。ただしこの方法だと、実際の取得価額より利益が大きく計算されることが多く、税金が増えがちです。取引報告書や証券会社の取引履歴で調べられるうちに、取得価額を確認しておきましょう。
手数料はどこでかかるか
移管の費用は、主に移管元の証券会社が出す「出庫手数料」です。移管先で受け入れるための手数料(入庫手数料)は、無料にしている会社が多い傾向です。
| 費用 | 誰が取るか | 目安 |
|---|---|---|
| 出庫手数料 | 移管元 | 無料の会社もあれば、1銘柄ごとに数千円かかる会社もある |
| 入庫手数料 | 移管先 | 無料が多い |
| 書類の郵送費 | 本人 | 書類での手続きの場合 |
移管の費用が1銘柄ごとにかかる場合、少額の銘柄をたくさん持っている人ほど負担が重くなります。「移管にかかる費用」と「売って買い直した場合の税金・手数料」を並べて比べてから決めるのが安全です。
移せない・移しにくい4つの商品
① NISA口座の株・投資信託
上の表のとおり、NISA口座の中身を他社のNISA口座へそのまま移すことはできません。NISAを使う証券会社自体を変えたい場合は「金融機関変更」という別の手続きになり、変更後に新しく買う分から新しい証券会社で非課税になります。金融庁のNISA特設ウェブサイトのよくある質問によると、金融機関の変更は年単位で可能で、変更後の金融機関でNISA口座を設けたい年の前年10月1日からその年の9月30日までに届出が必要です。ただし、その年分にすでに変更前の金融機関のNISA口座で買付け(受入れ)をしていると、その年分は変更できません(2026年10月時点)。持っている商品は元の証券会社に残したまま、売却できるのを待つ形が基本です。
② 外国株(米国株など)
外国株は、国内株とは管理の仕組みが違い、他社への移管を受け付けていない証券会社や、受け入れ可能な銘柄を限定している証券会社があります。移管できない場合は、売却して移管先で買い直すしかありません。米国株の仕組みは米国株取引の基本|取引時間・為替・手数料の仕組みも参考にしてください。
③ 投資信託
投資信託は、移管先の証券会社がその商品を取り扱っていなければ移せません。取り扱いがあっても、運用会社や販売会社の組み合わせによって受け付けない場合があります。
④ 単元未満株・信用取引の建玉
1株単位の単元未満株は、移管先が単元未満株の取引を扱っていないと受け入れてもらえないことがあります。また、信用取引で建てているポジション(建玉)は移管の対象外で、決済してからでないと移せません。
移管する前に確認したい3つのタイミング
権利確定日の前後
移管しても株主であることは変わりませんが、手続き中は売却できず、株主優待の「長期保有」の判定では株主番号が変わって継続が途切れるケースがあります。長期保有特典がある銘柄を持っている人は、移管前に会社側の条件を確認しておきましょう。
年内にすでに売買している年
移管元の特定口座で今年すでに利益を確定し、移管先で損失が出た場合、2つの口座の損益は自動では通算されません。相殺したいときは確定申告が必要です。仕組みは損益通算と繰越控除の基本|複数口座・複数年にまたがる損失の扱い方で整理しています。
移管元の口座を閉じるタイミング
移管が完了してすぐ口座を解約すると、配当金の支払いや年間取引報告書の送付が行き違うことがあります。年をまたいで報告書を受け取るまでは、口座を残しておくほうが確認しやすくなります。
乗り換え先の証券会社を選ぶときに見ること
移管は手間がかかる手続きなので、何度もやりたいものではありません。乗り換え先を選ぶときは、売買手数料のほかに、特定口座・NISA口座の有無、単元未満株や米国株の取扱い、出庫手数料の条件を確認しておくと、将来また移管が必要になったときにも困りにくくなります。手数料の比べ方は株の売買手数料の仕組み|比較するときに見る5つの場所にまとめています。
国内株・米国株・NISAを1つの口座で扱える証券会社のひとつに、DMM.com証券の「DMM 株」があります。移管の受け入れ条件や手数料は各社で異なるため、口座を開く前に公式サイトの案内で確認してください。
なお、「今の証券会社は危ないので、こちらの口座に株を移してください」とSNSや電話で持ちかけてくる相手には注意してください。移管先に指定されるのが金融庁の登録のない業者だったり、個人名義の口座へ株や現金を送らせる手口だったりすることがあります。移管は自分名義の口座から自分名義の口座へしか行えない手続きです。他人名義の口座へ移すよう求められた時点で、話を止めてください。
NISAを使う証券会社そのものを変える金融機関変更の期限や手続きは、NISAの金融機関変更の手順で3つのステップに分けて解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 移管すると、株を買った日(取得日)も変わりますか?
特定口座どうしの移管では、取得価額とあわせて取得日も引き継がれるのが通常です。売却扱いにはならないので、移管した日に買い直したことにはなりません。
Q. 一部の銘柄だけ、または一部の株数だけ移すことはできますか?
多くの証券会社で、銘柄や株数を指定して移管できます。ただし、単元未満の端数だけを移す場合は、移管先の受け入れ条件を確認してください。
Q. 移管の途中で株価が急落したら売れますか?
移管手続きの間は、移管元でも移管先でも売却できません。値動きが気になる銘柄がある場合は、相場が落ち着いている時期を選ぶか、その銘柄だけ移管を見送る判断もあります。
Q. 家族の口座へ株を移すことはできますか?
移管は同じ名義の口座どうしで行う手続きです。家族の口座へ移す場合は「贈与」や「相続」として扱われ、別の手続きと税金の確認が必要になります。
Q. 移管したら特定口座の「源泉徴収あり・なし」はどうなりますか?
源泉徴収の有無は、移管先の特定口座で選んでいる設定に従います。年の途中で変更できるかどうかは会社によって違うため、移管前に移管先の設定を確認しておきましょう。
山崎から一言
移管は「売らずに証券会社を変えられる」便利な手続きですが、取得価額の扱いは口座の種類次第で、NISAや外国株は思いどおりにいかないことがあります。山崎が300万円を失った頃は、口座の中身を把握しないまま「とにかく儲かりそうな所へ」と資金を動かしていました。証券会社を乗り換えるときほど、今どの口座に何をいくらで持っているかを一度書き出してから動くのが安全です。
そして、「株を移せば得をする」と急かしてくる相手の話には乗らないでください。移管は、自分のペースで、自分名義の口座の間でだけ行う手続きです。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。移管の可否・手数料・税金の取り扱いは証券会社や個別の状況、法令の改正によって変わるため、具体的な手続きは各証券会社・税務署にご確認ください。
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