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「900円まで下がったら売る、と逆指値を入れておいたのに、約定したのは820円だった」——山崎の副業相談室には、はじめて逆指値を使った方からこうした相談が届きます。逆指値は「損切りを自動で入れられる注文」と紹介されることが多いため、設定した値段で必ず売れると思い込んでしまうのも無理はありません。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時の自分は、注文がどういう条件で動くのかを知らないまま「いざとなれば売れる」と考えていました。この記事では、逆指値注文が発動する仕組み、発動したあとの2つの型、有効期限、そして思った値段で売れない(滑る)ケースを順に整理します。成行・指値そのものの違いや、損切りラインの決め方は別の記事で扱っているので、ここでは「逆指値という注文の動き方」に絞ります。特定の銘柄の売買をすすめる記事ではありません。
結論:逆指値は「売値の約束」ではなく「注文を出す条件」
先に要点をまとめます。
- 逆指値とは:「株価が○円以下になったら売る」「○円以上になったら買う」という、条件を満たしたときに注文を出す仕組み。通常の指値(○円以上なら売る)とは条件の向きが逆になる
- 発動後の型は2つ:条件を満たしたら成行で出す「逆指値成行」と、指定した値段の指値で出す「逆指値指値」。前者は売れやすいが値段が滑る、後者は値段を守れるが売れ残ることがある
- 滑る代表例:寄り付きの窓開け、急落の途中、取引の少ない銘柄、ストップ安の張りつき
- 損切りに使うなら:「設定した値段より不利に約定する日がある」前提で、1銘柄あたりの金額を決めておく
つまり逆指値は、画面を見ていない間も損切りの判断を実行してくれる便利な道具ですが、損失の上限を保証する仕組みではありません。ここを取り違えると、「逆指値を入れているから大丈夫」と必要以上に大きな金額を1銘柄に入れてしまいます。
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逆指値注文の仕組み:条件の向きが「逆」になる
通常の指値注文は、売りなら「○円以上なら売る」、買いなら「○円以下なら買う」という、自分に有利な値段を指定する注文です。逆指値はこの向きが反対で、売りなら「○円以下になったら売る」、買いなら「○円以上になったら買う」という、値段が不利な方向へ動いたときに注文を出すものです。
| 注文 | 売りの場合 | 買いの場合 | 主な使い道 |
|---|---|---|---|
| 指値 | ○円以上になったら売る | ○円以下になったら買う | 有利な値段で売買したい |
| 逆指値 | ○円以下になったら売る | ○円以上になったら買う | 損失の拡大を抑える/上昇の勢いに乗る |
多くの証券会社では、逆指値は取引所にすぐ届くわけではありません。証券会社のシステムが株価を見張っていて、条件の値段に達した時点で取引所へ注文を出すしくみです。判定に使うのは原則として直近の約定値段(現在値)なので、気配だけが条件の値段に近づいても発動しないことがあります。判定の細かなルールは証券会社ごとに異なるため、利用中の会社の説明を確認してください。
買いの逆指値は、「1,100円を上抜けたら買う」のように、値動きに勢いが出たときだけ買いたい場合に使われます。ただしこの記事の主題は損切りなので、以下は売りの逆指値を中心に説明します。
発動したあとの2つの型:逆指値成行と逆指値指値
逆指値を設定するときは、「発動の条件(トリガー)」とは別に、発動したあとにどんな注文を出すかを選びます。
| 型 | 発動後の注文 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 逆指値成行 | 成行で売る | 買い手がいれば約定しやすい | 約定する値段が条件の値段より下になることがある(滑る) |
| 逆指値指値 | 指定した値段の指値で売る | 指定した値段より安くは売れない | 株価が一気に指値を下回ると売れずに残る |
具体的な数字で見てみます。1,000円で買った株に「900円以下になったら売る」逆指値を置いたとします。
- 逆指値成行:翌朝、悪材料で820円から取引が始まった。条件(900円以下)を満たしたので成行の売りが出て、820円前後で約定する
- 逆指値指値(890円で指値):同じく820円から始まった。条件は満たしたので890円の売り指値が出るが、株価は890円より下にあるため約定しない。その後さらに下がれば、売れないまま含み損が広がる
「確実に手放すこと」を優先するなら逆指値成行、「この値段より安くは売りたくない」を優先するなら逆指値指値、という選び方になります。どちらが正解というものではなく、どちらのリスクを受け入れるかの選択です。成行と指値そのものの違いは株の注文方法の基本|成行注文と指値注文の使い分けで整理しています。
思った値段で売れない(滑る)4つのケース
「滑る」とは、注文を出したときに想定していた値段と、実際に約定した値段がずれることをいいます。逆指値で滑りやすい場面は、おおむね次の4つです。
ケース1:寄り付きの窓開け
夜間や休日に決算発表・不祥事などのニュースが出ると、翌朝の最初の値段(始値)が前日の終値から大きく離れて始まることがあります。チャート上で前日との間に空白ができるので「窓開け」と呼ばれます。取引が始まる前に条件の値段を飛び越えてしまうため、逆指値成行は始値付近で約定し、設定した値段よりかなり下で売れることになります。逆指値の滑りで最も起きやすいのがこのケースです。
ケース2:急落の途中
取引時間中に大きな売りが続くと、条件に達して成行の売りが出た瞬間にはすでに値段がもう一段下がっている、ということが起きます。同じ値段に逆指値を置いている人が多いと、発動した売りがさらに売りを呼ぶこともあります。
ケース3:取引の少ない銘柄
1日の出来高が少ない銘柄は、板(売り買いの注文の並び)に並んでいる買い注文がまばらです。成行の売りが出ると、近い値段の買いを食い尽くして、離れた値段まで約定が進むことがあります。
ケース4:ストップ安の張りつき
株価がその日の値幅制限の下限に張りつくと、その値段で買う人が売る人より少ない限り、逆指値が発動しても売り注文の大半は約定しません。売れなかった分は翌日以降に持ち越され、さらに下がることもあります。仕組みはストップ安で売れないのはなぜ?値幅制限の仕組みで詳しく説明しています。
反対に、一時的な急落で条件に達して売れたあと、すぐに株価が戻ることもあります。これは滑りとは別の「意図しない発動」で、条件の値段をふだんの値動きの幅に近すぎる位置に置くと起きやすくなります。
有効期限と、取引時間外の扱い
逆指値にも通常の注文と同じく有効期限があり、「当日中」か「期間指定」を選ぶのが一般的です。当日中を選ぶと、その日の取引が終われば注文は消えます。翌日も損切りを続けたいのに出し直しを忘れると、逆指値がない状態で持ち続けることになるので注意してください。
期間指定で設定できる最長の日数や、権利落ち・株式分割などで注文が自動で取り消される条件は、証券会社ごとに違います。利用している証券会社の注文画面やヘルプで確認してください。
また、逆指値が判定されるのは原則として取引所の取引時間中です。夜間に条件の値段まで下がる材料が出ても、実際に発動するのは翌朝の取引開始時点になります。東京証券取引所の立会時間は、午前立会(前場)が9時〜11時30分、午後立会(後場)が12時30分〜15時30分です(日本取引所グループ「売買立会時(立会時間)」、2026年10月時点)。これが「ケース1:窓開け」で滑りが大きくなる理由です。米国株でも逆指値を使える証券会社はありますが、使える注文の種類や時間帯は日本株と異なるため、事前に確認してください。米国株の取引時間は米国株取引の基本|取引時間・為替・手数料の仕組みにまとめています。
損切りに逆指値を使うときに決めておく3つのこと
逆指値の動き方を踏まえると、使う前に決めておきたいのは次の3つです。
| 決めること | 考え方 |
|---|---|
| どちらの型を使うか | 確実に手放したいなら逆指値成行、値段を守りたいなら逆指値指値。指値型なら、条件の値段と指値の間に少し幅を持たせると売れ残りを減らせる |
| 条件の値段をどこに置くか | ふだんの値動きの幅より近すぎると、一時的な下げで発動しやすい。遠すぎると損失が大きくなる |
| 1銘柄にいくら入れるか | 「条件の値段よりさらに下で約定する日がある」前提で、それでも生活や資金計画が崩れない金額にする |
損切りラインや資金配分の決め方そのものは、損切りとリスク管理の基本|資金管理ルールの作り方で整理しています。逆指値は、そこで決めたルールを画面を見られない時間にも実行するための道具と位置づけると、過信せずに使えます。
証券会社によっては、逆指値と指値を組み合わせた注文(OCO注文:利益確定の指値と損切りの逆指値を同時に出し、片方が約定したらもう片方を取り消す、など)を用意しているところもあります。使える注文の種類は会社ごとに違うので、口座を選ぶ段階なら、注文の種類と有効期限を比べる材料に入れてください。証券会社のひとつとして、DMM 株(DMM.com証券)があります。
どの証券会社を使う場合でも、手数料と注文の種類は公式サイトの最新情報で確認してから決めてください。
「損切り不要の自動売買」には近づかない
逆指値の話をしていると、「損切りしなくても勝てるツールがある」「プロが代わりに注文を入れてくれる」という勧誘に出会うことがあります。山崎正義が130件以上の案件を調査してきたなかでも、損失を避けたい気持ちにつけ込んで高額なツールやサロンに誘う形は繰り返し確認されています。損失が出ない注文方法はありません。他人の口座で売買の判断をする、あるいは有料で売買を助言するには金融商品取引業の登録が必要なので、相手に登録があるかを金融庁の登録一覧で確かめてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 逆指値を入れておけば、損失は設定した値段までで止まりますか
止まるとは限りません。逆指値成行は条件に達したあと成行で売るため、窓開けや急落のときは設定した値段より下で約定します。逆指値指値は値段を守れる代わりに、売れずに残ることがあります。どちらの場合も「設定した値段=損失の上限」にはなりません。
Q2. 逆指値の手数料は通常の注文より高いですか
多くの証券会社では、逆指値で約定した場合も通常の売買と同じ手数料体系が適用されます。ただし会社や料金プランによって扱いが異なることがあるので、利用中の証券会社の手数料表で確認してください。手数料を比べるときの見方は株の売買手数料の仕組みにまとめています。
Q3. NISA口座の株にも逆指値は使えますか
多くの証券会社で使えます。逆指値は注文の出し方の話なので、NISA口座・特定口座のどちらで保有していても仕組みは同じです。ただしNISAで売却すると、その年のうちは売った分の枠を使い直せない点に注意してください。
Q4. 逆指値が発動したのに一部しか売れていません
買い注文が足りず、一部だけ約定した状態です。残りは注文の有効期限まで残り、期限が切れると消えます。ストップ安などで売れ残った場合は、翌日以降の扱いを注文照会で確認し、必要なら出し直してください。
相談先まとめ
投資の勧誘や取引についての不安があるときは、次の窓口が使えます。
- 消費者ホットライン(188):最寄りの消費生活センターにつながります
- 警察相談専用電話(#9110):詐欺被害の疑いがあるとき
- 法テラス:お金のトラブルについて法的な相談先を知りたいとき
- 金融庁 金融サービス利用者相談室:金融商品取引業者に関する相談・無登録業者の確認
- 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC):証券会社との取引に関する苦情・紛争の相談
山崎から一言
300万円を失った頃の山崎正義は、損切りを「決めておけば守れるもの」だと思っていました。実際には、決めた値段で売れない朝があり、売れない日が続くこともあります。逆指値は、感情に負けて損切りを先送りしてしまう自分を助けてくれる、よい道具です。ただ、道具が守ってくれるのは「判断の実行」までで、「損失の上限」までは守ってくれません。設定した値段より下で売れる日があっても困らない金額で持つこと。それが逆指値をいちばん確かに使う方法だと考えています。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。本文中の注文の仕組みは2026年9月時点で一般的な取り扱いを整理したものであり、証券会社ごとの仕様やサービス内容の変更によって異なることがあります。最新の内容は各証券会社の公式情報でご確認ください。
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