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「副業を始めたけれど、帳簿って本当につけないといけないの?」「簿記なんて分からない」──相談室でいちばん多い税金まわりの質問のひとつです。
先に結論をお伝えします。会社員の副業の多くは「業務に係る雑所得」で、この場合は帳簿を作る法律上の義務はありません。ただし、申告が必要になったときに収入と経費を説明できる記録は必要で、収入が一定額を超えると書類の保存義務も生じます。つまり「何も残さなくていい」わけでも「本格的な帳簿が必須」なわけでもなく、自分の申告区分に合った最低ラインを満たせば足りるというのが答えです。
この記事では、雑所得・白色申告・青色申告の3つで求められる記録の違いを表で整理したうえで、山崎正義が8年間の副業で落ち着いた「月15分で続く最小限の記録方法」を紹介します。
※本記事は国税庁の公開情報をもとにした一般的な解説です。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。制度は改正されることがあるため、申告前に最新の情報を確認してください。
結論|帳簿の「最低ライン」は申告区分で決まる
副業の記録で迷う人の多くは、「自分がどの区分に当たるのか」を決めないまま、ネットで見かけた青色申告向けの説明(仕訳・複式簿記)を読んで挫折しています。まず区分ごとの違いを一覧にします。
| 区分 | 典型的な副業の例 | 記帳の義務 | 保存するもの・期間 |
|---|---|---|---|
| 業務に係る雑所得 | 会社員が小規模に受けるライティング、デザイン、物販など | 帳簿作成の義務なし | 前々年の収入が300万円を超える場合、現金・預金の取引に関する請求書・領収書などを5年間保存 |
| 事業所得(白色申告) | 開業届を出し、継続的に事業として行っている副業 | 簡易な記帳(収入・経費などを日付・相手・金額で記録) | 収入・経費を記載した帳簿は7年、請求書・領収書などの書類は5年 |
| 事業所得(青色申告) | 青色申告承認申請をして65万円・55万円・10万円の控除を受ける場合 | 正規の簿記(複式簿記)または簡易簿記 | 帳簿は7年、書類は種類により5年または7年 |
ポイントは2つです。1つは、「帳簿をつける義務があるか」と「記録を残しておくべきか」は別の話だということ。雑所得に記帳義務はありませんが、確定申告や住民税の申告で必要経費を差し引くなら、その金額を説明できる記録が要ります。
もう1つは、事業所得として扱われるかどうかにも帳簿が関係するという点です。2022年分以後の所得税基本通達の改正で、事業所得か業務に係る雑所得かは社会通念で判定するとされ、その際に帳簿書類の保存があるかどうかが判断の目安の一つになりました。収入が少ないうちは「雑所得」として扱われるのが一般的ですが、将来事業として伸ばしたい人ほど、早めに記録の習慣をつけておく意味があります。
そもそも申告が必要かどうか(いわゆる20万円ルール)は、副業の確定申告入門|「20万円ルール」の正しい意味と住民税の申告で詳しく整理しています。所得税の確定申告が不要でも住民税の申告は必要、というケースがあるので、記録はいずれにしても残しておくのが安全です。
すでに申し込んでしまった方、いま勧誘が届いている方へ。山崎の副業相談室(LINE・無料)では、届いているDMや契約の画面を送っていただければ、これまでに調査した事例と照合してお答えしています。返金・解約の進め方も個別にご案内します。友だち追加は無料で、いつでもブロックできます。

なぜ「記帳義務がなくても」記録が必要なのか
山崎正義が相談を受けてきた中で、記録を残していなかったことで困ったケースは大きく3つに分かれます。
① 経費を説明できず、所得が大きく見えてしまう
雑所得も「収入-必要経費」で計算します。経費の記録がなければ、実際には手元にほとんど残っていない副業でも、収入に近い金額が所得として扱われかねません。どこまでが経費になるかの考え方は副業の経費はどこまで認められる?スマホ代・家賃の按分で解説していますが、どの基準で計算するにしても、元になる記録がなければ始まりません。
② 支払調書や取引先の記録と数字が合わない
取引先から報酬を受け取る副業では、相手側にも支払いの記録が残ります。申告した金額と取引先の記録が食い違うと、税務署から問い合わせを受けたときに説明に困ります。報酬から源泉徴収されている場合は、その金額も記録しておくと還付の計算に使えます。
③ 年末にまとめてやろうとして、結局わからなくなる
これが一番多いパターンです。1年分のレシートや入金履歴を2月にまとめて見返しても、「この支払いは副業用だったか」を思い出せません。山崎正義自身も副業を始めた最初の年にこれをやり、結局いくつかの経費を諦めることになりました。
最低限記録する4項目と、記録しなくていいもの
国税庁は白色申告者の簡易な記帳について、収入や経費を日付・相手方・金額などで記録すればよいとしています。記帳義務のない雑所得でも、この水準にそろえておけば申告時に困ることはまずありません。
| 項目 | 書き方の例 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 日付 | 2026/9/15 | どの年分の収入・経費かを区別するため(年をまたぐ入金に注意) |
| 相手先 | 〇〇株式会社/書店 | 取引先の記録や支払調書と照合するため |
| 金額 | 報酬 11,000円(源泉徴収1,123円) | 所得の計算そのもの。源泉徴収額も分けて書く |
| 内容 | 記事執筆3本/参考書籍 | 経費として説明できるかどうかの根拠になる |
逆に、雑所得の人が最初から用意しなくていいものもあります。
- 複式簿記の仕訳(借方・貸方)
- 貸借対照表
- 勘定科目の細かい分類(「通信費」「消耗品費」程度の大まかな分類で十分)
- 本業の給与に関する記録(源泉徴収票があれば足ります)
「青色申告の65万円控除」の説明を読んで複式簿記が必要だと思い込み、手が止まっている人は少なくありません。青色申告を選ぶかどうかは、開業届を出すかどうかと合わせて判断するものです。判断材料は副業の開業届は出すべき?出さない場合との違いにまとめています。
月15分で続く、最小限の記録方法
山崎正義が8年間でいろいろ試して、最終的に落ち着いたのが次の手順です。ポイントは「毎日やらない」「お金の流れを1本にまとめる」の2つです。
手順1|副業用の口座とカードを1つずつ分ける
記録の手間の大半は「どれが副業の取引か」を仕分ける作業です。報酬の受け取りと副業の支払いを専用の口座・カードに寄せるだけで、通帳とカード明細がそのまま記録の下書きになります。新しく作る必要はなく、普段使っていない口座を副業専用にするだけでも効果があります。
手順2|領収書・請求書は「月ごとの封筒」か「月ごとのフォルダ」へ
紙の領収書は月ごとの封筒に入れるだけ。メールやサイトで受け取った請求書・領収書(PDFなど)は、パソコンやクラウドに「2026-09」のような月ごとのフォルダを作って保存します。ファイル名を「日付_相手先_金額」にしておくと、あとで探すときに困りません。
なお、電子データで受け取った取引情報の保存には電子帳簿保存法のルールがあります。自分が対象になるか、どの方法で保存すればよいかは、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」に副業(原稿料などの雑所得)の例も載っているので、一度目を通しておくと安心です。
手順3|月末に15分、表に転記する
月末に口座の入出金とカード明細を見ながら、上の4項目を表計算ソフトに1行ずつ書き写します。副業の規模が小さいうちは、1か月の行数は数行から十数行程度のはずです。
| 日付 | 区分 | 相手先 | 内容 | 金額 | 源泉徴収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9/5 | 経費 | 書店 | 参考書籍 | 1,980円 | - |
| 9/15 | 収入 | 〇〇株式会社 | 記事執筆3本 | 11,000円 | 1,123円 |
| 9/20 | 経費 | 通信会社 | スマホ代(按分30%) | 1,200円 | - |
※上の表は記入例で、金額は説明のための仮のものです。
手順4|年に1回、合計を出して申告に使う
1月になったら、12か月分の収入・経費・源泉徴収額の合計を出します。確定申告書や住民税の申告書に書く数字は、この合計がそのまま元になります。
表計算と会計ソフト、どちらで記録するか
記録の道具は、取引の量で選べば十分です。
| やり方 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 表計算ソフト(Excel・スプレッドシート) | 取引が月に十数件以内の雑所得の人 | 口座やカードの明細を手で写すので、件数が増えると転記漏れが出やすい |
| クラウド会計ソフト | 取引が多い人、開業届を出して青色申告を考えている人 | 月額・年額の費用がかかる。口座・カード連携の設定に最初だけ手間がかかる |
| 紙のノート(現金出納帳) | 現金取引が中心で、パソコンをあまり使わない人 | 合計の計算を自分でするため、転記・計算ミスに注意 |
山崎正義の経験では、取引が月20件を超えたあたりから表計算での転記がつらくなり、会計ソフトに切り替えた方が早くなりました。口座やカードと連携すれば明細が自動で取り込まれ、仕分けを確認するだけで済むからです。青色申告で複式簿記が必要になった場合も、会計ソフトなら仕訳を意識せずに入力できる仕組みが用意されています。
会計ソフトを使うなら、無料で試せる期間があるものから始めるのが無難です。たとえば freee会計 は、口座・カードの明細を取り込んで確定申告書の作成まで進められるクラウド会計ソフトです。料金や無料期間の条件は公式サイトで確認してください。
他の会計ソフトとの違い(料金・向いている人・確定申告の対応範囲)は、副業の確定申告が楽になる会計ソフト比較で比べています。ソフト選びに迷ったらこちらを参考にしてください。
記録のセルフチェック表
次の項目に当てはまらないものがあれば、今月から手当てしておきましょう。
| チェック項目 | できていない場合の手当て |
|---|---|
| 自分の区分(雑所得・白色・青色)を把握している | 開業届と青色申告承認申請を出していなければ、多くは雑所得か白色 |
| 副業の入出金が1つの口座・カードにまとまっている | 使っていない口座を副業専用にする |
| 電子で受け取った請求書・領収書を月ごとに保存している | 月ごとのフォルダを作り、ファイル名を「日付_相手先_金額」に |
| 報酬の源泉徴収額を分けて記録している | 取引先の支払明細や支払調書で確認して追記する |
| 前々年の副業収入が300万円を超えていないか確認した | 超えている場合は、請求書・領収書などを5年間保存する |
| 過去の記録を消さずに残している | 白色の帳簿は7年、書類は5年が目安。申告書の控えも一緒に保管 |
帳簿づけを口実にした勧誘に注意
最後に、検証メディアとしてひとつ注意をお伝えします。「副業の確定申告が不安な人向け」をうたって、高額な記帳サポートや「節税ノウハウ」の教材を売り込む勧誘が見られます。記帳そのものは、この記事で紹介したように自分でできる範囲がほとんどです。
- 「帳簿をつけないと税務調査で追徴される」と不安をあおり、その場での契約を迫る
- 一般的な会計ソフトの利用料と比べて、明らかに高額なサポート料金を請求する
- 「経費にすれば税金がゼロになる」など、根拠のない節税効果をうたう
こうした勧誘に当てはまる場合は、契約前に立ち止まってください。副業にまつわる勧誘の見分け方は安全な副業の探し方、実際の被害パターンは副業トラブル注意喚起ガイドで解説しています。税金の相談は、最寄りの税務署の電話相談や、税理士会の無料相談を利用するのが確実です。
報酬から源泉徴収された税金を取り戻す具体的な手順は、副業の報酬から源泉徴収されていたら?支払調書が届かないときの還付の受け方で解説しています。
記録をつけてみて副業が赤字だった年の申告の考え方は、副業の赤字は給与と相殺できる?雑所得と事業所得で変わる損益通算にまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 副業の所得が20万円以下なら、記録は何も残さなくていいですか?
所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要です。また、20万円以下かどうかを判断するには、収入から経費を引いた所得を計算する必要があります。そのためにも、最低限の記録は残しておくことをおすすめします。
Q2. 雑所得なのに、帳簿を「つけたほうが得」になることはありますか?
記帳そのもので税額が下がるわけではありませんが、経費の記録が正確であれば、所得を正しく計算できます。また、将来事業所得として申告したい場合、帳簿書類の保存があることが判断の目安の一つになります。
Q3. レシートをなくしてしまった支払いは経費にできませんか?
レシートがなくても、口座やカードの明細、取引先とのやり取りなどで支払いの事実と内容を説明できれば、経費として扱える場合があります。ただし説明の根拠が弱くなるので、今後は保存を習慣にしておきましょう。判断に迷う場合は税務署に確認してください。
Q4. 帳簿や領収書は紙で保存しないといけませんか?
紙で受け取ったものは紙のまま保存するのが基本で、スキャンしてデータで保存する場合は別のルールがあります。メールやWebで電子的に受け取ったものは電子データのまま保存するのが原則です。具体的な要件は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトで確認してください。
Q5. 家族名義の口座で副業の報酬を受け取っても大丈夫ですか?
報酬は副業をしている本人の所得です。家族名義の口座に入金すると、記録の照合が難しくなり、別の問題を招くおそれもあります。本人名義の口座で受け取るのが無難です。
相談先まとめ
- ① 消費者ホットライン(188)…記帳サポート・教材などの勧誘や契約のトラブル
- ② 警察相談専用電話(#9110)…詐欺の疑いがある勧誘を受けたとき
- ③ 法テラス…契約トラブルで法的な相談をしたいとき
- ④ 日本弁護士連合会…弁護士への相談窓口を探すとき
- ⑤ 最寄りの税務署(電話相談センター)…記帳・申告の個別の判断
山崎から一言
帳簿と聞くと身構えてしまいますが、会社員の副業で求められるのは「いつ、誰から・誰に、いくら、何のために」を後から説明できることです。完璧な帳簿を目指して手が止まるより、口座を分けて月末に15分だけ転記する方が、ずっと確実に続きます。
山崎正義は300万円の被害から立て直す過程で、お金の出入りを記録する習慣に何度も助けられました。記録は税金のためだけでなく、「この副業は本当に割に合っているか」を冷静に判断する材料にもなります。今月の分から、4項目だけ書き始めてみてください。
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