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「親が持っている株を、元気なうちに自分に移したいと言ってくれている」「株をもらったら、贈与税はいくらかかるのか」「売るときの利益は、親が買った値段から計算するのか、もらった日の値段から計算するのか」——山崎の副業相談室には、親から株を受け取ることについてこうした相談が届きます。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験から、仕組みを知らないまま動くと後で跳ね返ってくることを痛感しています。株の生前贈与も、手続きは難しくありませんが、「贈与税の評価額」と「売るときの取得価額」が別の数字だと知らないと、売ったときの税金に驚くことになります。
この記事では、親から上場株式を生前贈与で受け取るときに押さえておきたい贈与税の評価額の決まり方・取得価額の引き継ぎ・名義変更(振替)の流れを、国税庁の公表資料をもとに整理します。親が亡くなって株を受け継ぐ場合は親が亡くなったら株はどうなる?相続した株の名義変更の手順と、評価額の決まり方、家族の名義を借りて取引することの問題は家族名義の証券口座で取引してもいい?借名取引が禁止される理由で説明しています。この記事は「親が生きているうちに株を譲り受ける」場面に絞ります。
結論:贈与税は「もらったときの評価額」、売るときの税金は「親が買った値段」で計算する
先に要点をまとめます。
- 贈与税の評価額:上場株式は、贈与を受けた日の終値と、その月・前月・前々月の終値の月平均額のうち、もっとも低い価額で評価するのが原則
- 贈与税がかかるか:暦年課税なら、1月1日〜12月31日にもらった財産の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要。超えた場合は翌年2月1日〜3月15日に、もらった人が申告・納税する
- 売るときの取得価額:贈与で受け取った株は、親(贈与者)の取得価額と取得した時期をそのまま引き継ぐ。贈与税の評価額が取得価額になるわけではない
- 例外:親のNISA口座に入っていた株を贈与で払い出した場合は、贈与の日の終値で取得したものとみなされる
- 名義変更:受け取る側が自分の証券口座を用意し、贈与の事実を書面に残したうえで、証券会社に振替(移管)を依頼する
いちばん誤解が多いのは3つ目です。「贈与税を払ったのだから、その評価額が自分の買値になる」と考える方がいますが、売ったときの利益は親が買った値段から計算されます。親が昔安く買った株ほど、受け取った人が売ったときの税金は大きくなります。
贈与税の評価額はどう決まる?上場株式は「4つの価額のうち最も低いもの」
評価の基本ルール
相続税・贈与税で上場株式を評価するときは、国税庁の財産評価基本通達169にもとづき、次の4つの価額のうちもっとも低い価額を使うのが原則です(国税庁「財産評価基本通達 第8章 第1節 株式及び出資」、2026年10月時点)。
| 候補 | 中身 |
|---|---|
| ①課税時期の最終価格 | 贈与を受けた日の終値 |
| ②課税時期の月の月平均額 | 贈与を受けた月の、毎日の終値の平均 |
| ③前月の月平均額 | 贈与を受けた月の前月の、毎日の終値の平均 |
| ④前々月の月平均額 | 贈与を受けた月の前々月の、毎日の終値の平均 |
株価が上がり続けている局面なら、前々月の平均額が採用されて、贈与の日の株価より低い評価額になることがあります。なお、配当落ち・権利落ちの時期や、贈与の日に終値がない場合には、どの日の終値を使うかの特例があります(同通達170〜172)。
「贈与を受けた日」はいつか
贈与で財産を取得した時期は、相続税法基本通達で、書面による贈与は契約の効力が発生した時、書面によらない贈与は履行の時とされています。株は契約から振替完了まで日数がかかることがあるので、契約書の日付と振替日の両方を記録に残しておくと安心です。
贈与税はいくら?暦年課税の計算と、相続時精算課税との違い
暦年課税:年110万円の基礎控除
贈与税は、もらった人が1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った財産の合計から、基礎控除110万円を差し引いた残りにかかります。株だけでなく、同じ年に現金などをもらっていれば合計します(国税庁タックスアンサーNo.4402「贈与税がかかる場合」)。
税率は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の人が、父母・祖父母など直系尊属から受け取る場合は「特例税率」、それ以外(18歳未満の子への贈与、夫婦間、兄弟間など)は「一般税率」を使います(国税庁タックスアンサーNo.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」、令和8年4月1日現在法令等)。
| 基礎控除後の金額 | 特例税率(18歳以上の子・孫が親・祖父母から) | 一般税率(それ以外) |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 10% |
| 300万円以下 | 15%-10万円 | 15%-10万円 |
| 400万円以下 | 15%-10万円 | 20%-25万円 |
| 600万円以下 | 20%-30万円 | 30%-65万円 |
| 1,000万円以下 | 30%-90万円 | 40%-125万円 |
| 1,500万円以下 | 40%-190万円 | 45%-175万円 |
| 3,000万円以下 | 45%-265万円 | 50%-250万円 |
| 4,500万円以下 | 50%-415万円 | 55%-400万円(3,000万円超) |
| 4,500万円超 | 55%-640万円 |
「%-◯万円」は速算表の控除額です。たとえば特例税率で基礎控除後が390万円なら、390万円×15%-10万円=48.5万円になります(国税庁の計算例と同じ)。
相続時精算課税:2,500万円まで贈与時は課税されないが、相続時に合算される
もう1つの方法が相続時精算課税です。贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与で選択でき、年110万円の基礎控除と、累計2,500万円の特別控除を超えた部分に一律20%の贈与税がかかります(国税庁タックスアンサーNo.4103「相続時精算課税の選択」)。
ただし、親が亡くなったときに、この制度で受け取った財産の贈与時の価額(2024年以降の贈与は年110万円の基礎控除を引いた残り)が相続財産に足し戻されます。また、一度選ぶと、その親からの贈与は暦年課税に戻せません。選択する年は、翌年の申告期間内に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。
| 比べる点 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 非課税の枠 | 年110万円 | 年110万円+累計2,500万円 |
| 税率 | 10〜55%の累進 | 枠を超えた部分に一律20% |
| 相続時の扱い | 亡くなる前の一定期間の贈与だけ加算 | 110万円の基礎控除分を除き、贈与時の価額で加算 |
| あとから変更 | 精算課税を選ぶことは可能 | 暦年課税には戻せない |
暦年贈与の「持ち戻し」は3年から7年へ延びている途中
暦年課税で受け取った財産でも、贈与した親が亡くなった場合、一定期間内の贈与は相続財産に加算されます。2024年1月1日以後の贈与からこの期間が延び、親の亡くなった日に応じて次のように変わります(国税庁タックスアンサーNo.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」)。
| 親の亡くなった日 | 相続財産に加算される贈与 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 亡くなる前3年以内 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から亡くなった日まで |
| 2031年1月1日以降 | 亡くなる前7年以内 |
加算の対象期間内であれば、110万円以下で贈与税がかからなかった贈与も加算されます。「毎年110万円ずつなら相続税と無関係」とは言い切れない点に注意してください。どちらの課税方法が向いているかは、親の財産全体や年齢によって変わるので、まとまった額を移すなら税理士に試算してもらうのが確実です。
売るときの取得価額は「親の買値」を引き継ぐ
取得価額も取得時期もそのまま引き継がれる
国税庁の説明では、贈与で取得した株式等の取得費は贈与者の取得費を引き継ぐとされています(国税庁タックスアンサーNo.1464「譲渡した株式等の取得費」)。つまり、受け取った人がその株を売ったときの利益は「売った金額-親が買ったときの取得価額-売却手数料など」で計算されます。
具体例:評価額190万円の株を受け取り、240万円で売った場合
数字は仕組みを説明するための架空の例です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 親が昔買ったときの取得価額 | 1株500円×2,000株=100万円 |
| 贈与の日の終値 | 1株1,000円 |
| 月平均額(当月・前月・前々月) | 1,050円・980円・950円 |
| 贈与税の評価額 | 最も低い950円×2,000株=190万円 |
| 贈与税(30歳の子・特例税率・ほかの贈与なし) | (190万円-110万円)×10%=8万円 |
| のちに1株1,200円で全株売却 | 240万円 |
| 譲渡益(手数料は省略) | 240万円-100万円=140万円 |
譲渡益の計算に使うのは、贈与税の評価額190万円ではなく、親の取得価額100万円です。上場株式の譲渡益には原則20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)がかかるので、この例では約28万円になります。贈与税8万円と合わせて、受け取ってから売るまでに税金の負担が2回あることを頭に入れておいてください。株の税金の基本は株の税金入門|特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?で整理しています。
例外:親のNISA口座の株を受け取った場合
同じタックスアンサーでは、NISA口座(非課税口座)や未成年者口座(ジュニアNISA)に入っていた上場株式等が贈与で払い出された場合は、原則として贈与の日の終値に相当する金額で受け取った人が取得したものとみなす、とされています。NISA口座の中で生じた値上がり分は非課税のまま区切られ、受け取った後の値動きから課税が始まる、という扱いです。
なお、受け取った株を自分のNISA口座にそのまま入れることはできません。受け取る側の課税口座(特定口座や一般口座)で受け入れることになります。手続きの書類や対応の可否は証券会社ごとに異なるため、親の口座がある証券会社に事前に確認してください。
親の取得価額がわからないときは「売却代金の5%」
親が何十年も前に買った株や、紙の株券から電子化された株などで取得価額がわからない場合は、売却代金の5%を取得費とすることが認められています(同タックスアンサーNo.1464)。ただし、たとえば240万円で売れば取得費は12万円とみなされ、利益の大部分に課税されます。贈与を受ける前に、親の取得価額を確かめて記録を引き継いでおくことが、あとで税金を払いすぎないための一番の対策です。
名義変更(振替)の流れ:5つのステップ
上場株式の生前贈与は、証券会社で親の口座から子の口座へ株を振り替える形で行うのが一般的です。細かな書類の名前や必要書類は証券会社によって違うため、ここでは共通する流れを整理します。
| ステップ | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| 1. 受け取る人の口座を用意 | 子が自分の名義で証券口座を開設する | 親と同じ証券会社だと手続きが簡単なことが多い |
| 2. 親の取得価額を確認 | 取引報告書・特定口座の記録などで、銘柄ごとの取得価額と取得日を確かめる | 一般口座で保有している株は記録が引き継がれないことがある |
| 3. 贈与契約書を作る | 贈与する人・受け取る人・銘柄・株数・日付を書き、双方が署名する | あげる・もらうの合意を書面で残す |
| 4. 証券会社に振替を依頼 | 親が証券会社所定の依頼書を出し、子の口座へ振り替える | 他社への振替は日数がかかる。書類名・所要日数は各証券会社で確認 |
| 5. 翌年に申告 | 年間の受贈額が110万円を超えたら、翌年2月1日〜3月15日に贈与税を申告・納税 | 相続時精算課税を選ぶ年は選択届出書も同時に出す |
振替が終わったら、子の口座の取得価額・取得日が親の記録どおりになっているかを確認してください。他社へ株を移したときの取得価額の扱いは持っている株を別の証券会社へ移す(移管)とどうなる?取得価額の引き継ぎでも説明しています。
生前贈与で失敗しやすい3つの場面
1. 子の口座に移したのに、親が売り買いを続けている
振替は済んでいても、IDやパスワードを親が持ち、親の判断で売買を続けているなら、実質は親の財産とみなされる可能性があります。これは借名取引や「名義株」の問題につながります。贈与したら、その後の運用は受け取った本人に任せるのが原則です。
2. 毎年同じ額を「最初から約束して」渡している
毎年110万円以下に分けて贈与する方法はよく知られていますが、たとえば「10年間で毎年100万円ずつ渡す」と最初に約束していると、約束した時点で総額の贈与を受けたとみなされる(定期金に関する権利の贈与)おそれがあると、税理士事務所などが注意を促しています。毎年、その年ごとに贈与契約を結び、銘柄や株数をその都度決めるほうが説明しやすくなります。
3. 「贈与で節税できる投資話」に乗ってしまう
相続税や贈与税の不安につけ込み、「この未公開株を子どもに贈与すれば相続税がゼロになる」「家族名義で口座を作れば税金がかからない」といった勧誘をする業者がいます。金融商品取引業の登録がない業者が未公開株を勧誘することは、それだけで危険なサインです。勧誘してきた業者の登録は、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認できます。山崎が300万円を失ったときも、「今だけ」「あなただけ」という話でした。税金の話を持ち出されても、まず相手の登録を確かめてください。
もらった株が親の会社などの非上場株だった場合の評価額の出し方は、非上場株の評価方法の記事にまとめています。
祖父母から孫への教育資金の一括贈与の非課税措置が終わったあとの扱いは、孫の教育費の一括贈与(1,500万円まで非課税)は2026年3月で終了。いまある教育資金口座はどうなる?30歳の残額と、これからの渡し方で説明しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 親から受け取った株が110万円以下なら、何もしなくていいですか
その年に受け取った財産の合計が110万円以下で、暦年課税であれば贈与税はかからず、申告も不要です(国税庁タックスアンサーNo.4402)。ただし、同じ年に現金などほかの財産も受け取っていれば合計で判定します。また、親が亡くなった場合の相続財産への加算(持ち戻し)の対象にはなりえます。
Q2. 贈与税の評価額と、売るときの取得価額は同じですか
違います。贈与税の評価額は、贈与の日の終値と3か月分の月平均額のうち最も低い価額です。一方、売るときの取得価額は、親が買ったときの取得価額を引き継ぎます。例外として、親のNISA口座から贈与で払い出された株は、贈与の日の終値が取得価額とみなされます。
Q3. 未成年の子どもに株を贈与することはできますか
できます。ただし、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳未満なら、特例税率ではなく一般税率で計算します。また、受け取った株を親が管理し続けると、実質は親の財産とみなされる可能性があります。
相談先まとめ
贈与や投資の勧誘について不安があるときは、次の窓口が使えます。
- 国税庁 電話相談センター(最寄りの税務署):贈与税・相続税・譲渡所得の一般的な扱いの相談
- 消費者ホットライン(188):最寄りの消費生活センターにつながります
- 警察相談専用電話(#9110):未公開株の勧誘など、詐欺被害の疑いがあるとき
- 金融庁 金融サービス利用者相談室:金融商品取引業者に関する相談・無登録業者の確認
- 法テラス:法的なトラブルの相談先の案内
山崎から一言

親から株を受け取るのは、お金だけでなく「親が何十年かけて持ってきた判断」も一緒に受け取ることだと思っています。だからこそ、評価額や税金の数字だけでなく、いつ・いくらで買ったのかという記録まで引き継いでください。受け取った後は自分の資産として、自分の判断で、無理のない範囲で持つ。それが親の思いをいちばん守る方法だと考えています。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。本文中の贈与税・相続税・譲渡所得の扱いは2026年10月時点の国税庁の公表資料(令和8年4月1日現在法令等)をもとに一般的な内容を整理したものであり、個別の事情によって扱いが異なります。税金の判断は税務署または税理士にご確認ください。












