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「父が小さな会社をやっていて、いずれその株を引き継ぐことになりそうだ」「副業で自分の会社を作ったが、この株は相続のときいくらの扱いになるのか」——会社員の方からも、こうした相談が届くようになりました。証券取引所で売買されていない株(非上場株)には、毎日の株価がありません。そのため相続税や贈与税の計算では、国税庁が定めた計算方法で値段を決めます。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時は「値段がどう決まるのか」を知らないまま、人に言われた数字を信じていました。この記事では、非上場株の相続税評価がいまどう決まっているのか(3つの計算方式)と、国税庁が2026年に進めている見直しの議論がどこまで来ているのかを、国税庁の公表資料をもとに整理します。
上場している株を相続したときの手続きと評価は親が亡くなったら株はどうなる?相続した株の名義変更(移管)の手順と、評価額の決まり方で説明しています。この記事は市場で値段がつかない株に絞った話です。
結論:評価額は「誰が受け取るか」と「会社の規模」で計算方式が変わる。見直しは議論の途中で、まだ決まっていない
先に要点をまとめます(2026年10月12日時点で確認できた内容です)。
- 非上場株は、相続税・贈与税の計算では「取引相場のない株式」と呼ばれる:国税庁の財産評価基本通達に沿って評価します
- 計算方式は大きく3つ:類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式です
- 会社を支配できる立場の株主(同族株主など)か、そうでない株主かで方式が分かれる:同じ会社の同じ1株でも、受け取る人によって評価額が大きく違うことがあります
- 国税庁は2026年4月に有識者会議を立ち上げ、評価方法の見直しを議論している:公表資料では、会社の規模で方式を分けるのをやめる方向などが「どうか」という問いかけの形で示されています
- 新しい計算式・数値・始まる時期は、まだ決まっていない:資料に出てくる数字は試算のための「仮定」です。確定した情報として扱う説明には注意してください
| 計算方式 | 何をもとに値段を出すか | 主に使われる場面(現行) |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 似た業種の上場会社の株価と、配当・利益・純資産(帳簿価額)の比較 | 同族株主などが受け取る、規模の大きい会社の株 |
| 純資産価額方式 | 会社の資産と負債を相続税の評価に置き直した、差し引きの純資産 | 同族株主などが受け取る、規模の小さい会社の株 |
| 配当還元方式 | 1年間に受け取る配当金額 | 同族株主以外の株主が受け取る株 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」(令和8年4月1日現在法令等)
いまのルール:まず「誰が受け取るか」で2つに分かれる
国税庁のタックスアンサーNo.4638によると、取引相場のない株式は、株を受け取った人が会社の経営を支配できる同族株主などに当たるかどうかで、評価のしかたが分かれます。
| 受け取る人 | 評価のしかた | 考え方 |
|---|---|---|
| 同族株主など(経営を支配できる側) | 原則的評価方式 | 会社そのものの価値をもとに評価する |
| 同族株主以外の株主(少数株主など) | 特例的な評価方式(配当還元方式) | 会社の規模にかかわらず、受け取る配当をもとに評価する |
たとえば、創業者の子どもが親の持株を引き継ぐ場合は、原則的評価方式になるのが普通です。一方で、経営に関わっていない少数の株主が受け取る場合は、配当還元方式になることがあります。同族株主に当たるかどうかの判定は、親族の範囲や議決権の割合で細かく決まっているため、実際の判定は税理士に確認してください。
原則的評価方式:会社の規模で3つに分かれる
原則的評価方式では、評価する会社を総資産価額・従業員数・取引金額によって大会社・中会社・小会社に区分します。
| 会社の区分 | 原則の方式 | 中身 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 | 類似業種の株価をもとに、配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)の3つを比べて計算する |
| 中会社 | 2つの方式の併用 | 類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせる |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 資産と負債を相続税の評価に置き直し、評価差額に対する法人税等に相当する額を差し引いて計算する |
副業で作った1人会社や、家族だけで営んでいる会社は、多くの場合「小会社」の側に入ります。この場合に効いてくるのは、会社が持っている土地・建物・預金・有価証券などの資産と、借入金などの負債の差し引きです。利益がほとんど出ていなくても、会社名義の資産があれば評価額はゼロになりません。
「特定の評価会社」は扱いが別になる
資産の大半が株式や土地である会社、開業後3年未満の会社、休業中の会社などは「特定の評価会社」とされ、原則として純資産価額方式で評価します(清算中の会社は清算分配見込額による評価です)。会社の形をしていても、実質が資産の入れ物になっている場合は、規模による区分がそのまま当てはまらないということです。
配当還元方式:配当だけをもとに計算する
同族株主以外の株主が受け取った株は、会社の規模にかかわらず配当還元方式で評価します。タックスアンサーNo.4638は、この方式を「その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10パーセント)で還元して元本である株式の価額を評価する方法」と説明しています。
考え方の例:年間の配当金額が5円(1株あたりの資本金等の額を50円として計算した場合)なら、5円 ÷ 10% = 50円
会社にどれだけ資産があっても、この方式では配当の額だけが計算の材料になります。そのため、原則的評価方式で計算した額と比べて、評価額が大きく下がることがあります。勤め先が非上場会社で、従業員持株会を通じて自社の株を持っている会社員は、この「少数株主」の側に当たることが多い立場です。
国税庁が進めている見直しの議論:どこまで来ているか
国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を設け、2026年4月20日に第1回を開きました。山崎正義が確認できた範囲では、9月16日の第6回までの資料が公表されています。
きっかけは、方式による評価額の差
第1回の資料には、会計検査院の令和5年度決算検査報告の概要が載っています。令和2年分・3年分の相続税と贈与税の申告から無作為に選んだ1,600件を調べたものです。
| 資料に示された内容 | 数字 |
|---|---|
| 類似業種比準価額の中央値が、純資産価額の中央値に占める割合 | 27.2% |
| 純資産価額に対する申告評価額の割合(中央値):大会社 | 0.32倍 |
| 同:中会社 | 0.50倍 |
| 同:小会社 | 0.61倍 |
出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)資料」(2026年4月20日)
規模が大きい区分の会社ほど、純資産に比べて評価額が低く出る傾向がある、という指摘です。第4回の資料では、ほかにも「配当還元方式の還元率(10%)が社会経済状況の変化を反映していない可能性」や、会社の規模や株主の構成を意図的に変えて評価額を下げる手法があることが、論点として挙げられています。
第5回で示された「見直しの方向性」
2026年8月20日の第5回資料には、「これまでの議論を踏まえた、国税庁の考える評価の見直しの方向性」というページがあります。いずれも「〜ではないか?」「〜してはどうか?」という問いかけの形です。
| 項目 | 資料に書かれている方向性 |
|---|---|
| 評価の体系 | 規模別の区分を廃止し、広い範囲の企業を共通の評価方式で評価することが考えられるか |
| 類似業種比準方式 | 存置することは困難ではないか |
| 主軸にする考え方 | 企業の収益力を重視する評価(インカムアプローチ)を主軸とすべきではないか |
| 純資産価額方式 | 原則的評価方式ではなく「特定の評価会社の株式の評価方式」として位置付けてはどうか |
| 配当還元方式 | 特別の例外措置として、適用の範囲等を見直した上で存置してはどうか |
出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)資料」(2026年8月20日)
共通の方式の候補として、資料では「“仮に”残余利益方式(簿価純資産ベース)を採用した場合」のイメージが示されています。会社の帳簿上の純資産に、数年分の超過収益(通常期待される利益を上回る分。マイナスの場合を含む)を足し引きして評価額を出す考え方です。資料には、利益が期待される水準を下回る会社や赤字の会社は、帳簿上の純資産より低い評価額になるという説明もあります。
数字はまだ「仮定」。試算の結果は前提しだいで動く
9月16日の第6回資料には、加算する期間を5年、還元率を8%と仮定した試算が載っています。1,378社のデータで、純資産価額を100としたときの評価額(中央値・全体)を比べたものです。
| 区分 | 純資産価額を100としたときの水準 |
|---|---|
| 現行の評価額 | 58.2 |
| 残余利益方式(しんしゃく率1.0と仮定) | 71.6 |
| 同(0.9と仮定) | 64.4 |
| 同(0.8と仮定) | 57.3 |
| 同(0.7と仮定) | 50.1 |
出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第6回)資料」(2026年9月16日)
掛ける率を1.0と置くか0.7と置くかで、現行より上にも下にもなります。しかもこれは全体の中央値で、1社ごとの結果は利益の出方や資産の中身で変わります。第6回資料は、還元率・純資産価額方式・配当還元方式を「第7回会議以降での想定論点」としており、計算式の細部も数値もこれから議論する段階です。いつから新しい方法が使われるのかは、山崎が確認した第1回・第4回〜第6回の資料には書かれていませんでした。
なお、国税庁の「審議会・研究会等」のページに掲載されている資料は、第6回(2026年9月16日)までです。第7回の資料はまだ掲載されていません(2026年10月12日時点)。
会社員が自分ごとになる3つの場面
| 場面 | いま確かめておくこと |
|---|---|
| 親が会社を経営している | 誰が何株持っているか(株主名簿)。会社名義の土地・建物・借入金があるか。顧問税理士がいるか |
| 副業で自分の会社を作った | 会社にどれだけ資産がたまっているか。決算書の純資産の額。家族に株を持たせている場合はその割合 |
| 勤め先が非上場で、持株会に入っている | 退職するとき・亡くなったときに株がいくらで買い取られるか(持株会の規約) |
- 株主名簿を確かめる:古い会社では、名前だけ借りた株主が残っていることがあります。誰の株なのかがはっきりしないと、評価の前の段階で止まります
- 直近の決算書と法人税の申告書を保管しておく:どの方式でも計算の材料になります
- 生前に株を渡す場合も同じ評価を使う:贈与税の計算でも、取引相場のない株式の評価方法は共通です。上場株の贈与については親から株をもらったら(生前贈与)どうなる?で整理しています
- 見直しの情報は、国税庁の公表資料で日付を確かめる:議論の途中の案と、決まった内容を分けて読みます
「いまのうちに評価を下げましょう」「上場予定の未公開株です」という勧誘に注意
制度が変わりそうだという話が出ると、それを入口にした勧誘が増えます。山崎正義が300万円を失ったときも、「今だけ」「制度が変わる前に」という言葉で判断を急がされました。
- 「改正前に対策しないと大損する」と契約を急がせる:新しい計算式も時期も決まっていない段階で、損得を断定することはできません
- 評価額を下げる仕組みを、高額な手数料で売り込む:国税庁の資料は、会社の規模や株主構成を操作して評価額を圧縮する手法への対応を、見直しの目的のひとつに挙げています
- 「近く上場する」と言って未公開株の購入を持ちかける:非上場株は自由に売れる市場がなく、買った後に手放せないことがあります。未公開株の勧誘を業として行えるのは、登録を受けた金融商品取引業者などに限られます
勧誘してきた相手が登録業者かどうかは、無登録業者の見分け方の手順で確かめられます。典型的な手口は投資詐欺の典型手口と見分け方にまとめています。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「資産家・企業オーナー必読、自社株を含む「非上場株の相続税評価」が激変へ!新ルール案の中身と対策を税理士兼会計士が指南」
不動産を小口に分けた商品や、買ってから間もない賃貸物件の評価の見直しは不動産小口化商品や買って5年以内の賃貸物件は、相続のときいくらで評価される?2027年1月からの見直しと、変わらないもので説明しています。
株以外に、実家に置かれていた現金も相続財産に含まれます。申告漏れになりやすい点は親の家のタンス預金は相続税の対象?税務署が気づく仕組みと申告漏れのペナルティ、見つけたときの手順で説明しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 利益が出ていない小さな会社の株なら、評価額はゼロですか?
ゼロとは限りません。小会社は原則として純資産価額方式で評価するため、会社名義の預金・土地・建物などの資産が負債を上回っていれば、その分が評価額になります。
Q2. 同じ会社の株なのに、受け取る人で評価額が違うのはなぜですか?
経営を支配できる株主にとっての株と、配当を受け取るだけの少数株主にとっての株では、持っている意味が違うという考え方によるものです。前者は原則的評価方式、後者は配当還元方式で評価します。
Q3. 見直しはいつから始まりますか?
山崎が確認した国税庁の有識者会議の資料(第1回・第4回〜第6回)には、始まる時期は書かれていませんでした。評価方法は国税庁の通達で定められているため、変わる場合は国税庁から公表されます。日付のある公表資料で確かめてください。
Q4. 自分で評価額を計算できますか?
国税庁は「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の様式を公開しており、計算の流れは誰でも確かめられます。ただし、株主の判定や資産の評価には専門的な判断が多く含まれるため、申告に使う金額は税理士に依頼するのが現実的です。
Q5. 親の会社の株を相続したくない場合はどうなりますか?
誰が株を引き継ぐかは、遺言や相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)で決まります。相続そのものを放棄する場合は、期限のある家庭裁判所での手続きが必要です。会社に借入金の保証が絡むこともあるため、早めに弁護士や税理士に相談してください。
まとめ
- 非上場株は、相続税・贈与税では「取引相場のない株式」として、国税庁の通達に沿って評価する
- 計算方式は、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式の3つ
- 同族株主などは会社の規模に応じた原則的評価方式、それ以外の株主は配当還元方式(配当を10%で還元)
- 国税庁は2026年4月から有識者会議で見直しを議論しており、規模別の区分をやめる方向などが問いかけの形で示されている
- 試算に使われている期間・還元率・しんしゃく率は仮定で、計算式も時期も決まっていない
- 「改正前に」と急がせる勧誘や、未公開株の勧誘には応じる前に相手の登録を確かめる
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
株の評価額や相続税・贈与税の計算は税務署または税理士に、会社の株主が誰なのかという争いや相続の手続きは弁護士に確認してください。
山崎から一言

300万円を失った頃の山崎は、値段の決まり方を知らないまま、相手の言う数字を信じていました。非上場株は市場の値段がないぶん、計算の前提を知っているかどうかで見え方が変わります。まずは親の会社や自分の会社の株主名簿と決算書を、手元にそろえるところから始めてください。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年10月12日時点で国税庁が公表している資料にもとづきます。個別の税額の計算は税理士にご確認ください。












