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こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「実家を片づけていたら、押し入れの封筒から現金が出てきた」「親が『銀行は信用できない』と言って、家に現金を置いている」——会社員の読者から、こうした相談が届くことがあります。気になるのは、家に置いてある現金(いわゆるタンス預金)も相続税の対象になるのか、そして申告しなかったら税務署にわかるのか、という点でしょう。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。そのとき学んだのは、「バレないだろう」「なんとかなるだろう」という見込みで動くと、後から払う金額がいちばん大きくなる、ということでした。この記事では、国税庁と財務省が公表している資料をもとに、タンス預金と相続税の関係・税務署が気づく仕組み・申告漏れのペナルティ・見つけたときの手順を整理します。
親から上場株を相続する場合の手続きは親が亡くなったら株はどうなる?で説明しています。この記事は家の中にある現金の話に絞ります。
結論:家に置いてある現金も相続財産。申告漏れは「預金の引き出し」から気づかれやすい
先に要点をまとめます(2026年10月15日時点で確認できた内容です)。
- 現金は、置き場所に関係なく相続税の対象:国税庁は相続税がかかる財産の例として「現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋など」を挙げています。金庫・タンス・封筒の中でも同じです
- 申告が必要なのは、遺産の合計が基礎控除を超えるとき:基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です
- 申告漏れの財産では「現金・預貯金等」が大きな割合を占める:令和6事務年度の国税庁の集計では、申告漏れ相続財産2,879億円のうち、現金・預貯金等は837億円(29.1%)でした
- 隠したと判断されると重加算税がかかる:過少申告なら35%、無申告なら40%です(通常の加算税の代わりに課されます)
- 見つけたら、まず金額を記録して、申告に含める:申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 家の中の現金 | 相続税の対象(預貯金と同じ扱い) | 国税庁 No.4105 |
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 | 国税庁 No.4152 |
| 申告・納税の期限 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 国税庁 No.4205 |
| 実地調査で申告漏れ等が見つかった割合 | 82.3%(9,512件中7,826件・令和6事務年度) | 国税庁 報道発表資料 |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.4105「相続税がかかる財産」、No.4152「相続税の計算」、No.4205「相続税の申告と納税」、国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月)
そもそも、うちは相続税の申告が必要か
タンス預金を心配する前に、まず「申告が必要な家かどうか」を確かめます。国税庁によると、相続した財産の合計(借入金や葬式費用を引き、一定期間内の贈与を足したもの)が基礎控除を超えなければ、申告も納税も要りません。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
ここで注意したいのは、「預金と家と株の合計は基礎控除以下だったが、家の現金を足すと超える」というケースです。現金は金額がはっきりしないまま後回しにされやすく、合計の判断がずれる原因になります。
生前の贈与も足し戻しがある
相続人などが亡くなった人から相続開始前3年以内に受けた贈与(暦年課税)は、原則として相続財産に加算されます。国税庁No.4105は、この3年が「相続開始日が令和8年12月31日以前の場合」の期間だとしており、それより後の相続は期間が段階的に延びます(詳しくは国税庁No.4161)。「生前に現金で渡したから関係ない」とは言い切れません。
税務署はどうやって気づくのか:一次情報からわかること
国税庁は、相続税の実地調査について「資料情報等から申告額が過少であると想定される事案」や「無申告であると想定される事案」を対象にしていると説明しています。調査の手の内がすべて公表されているわけではありませんが、公表されている調査事例から、どこが手がかりになるかは読み取れます。
事例:亡くなる前に引き出した現金を、相続人の自宅で保管していた
国税庁の同じ資料には、相続開始前に被相続人の口座から多額の現金が引き出されていたことをきっかけに調査が始まり、相続人の自宅の金庫から現金が見つかった事例が載っています。相続人は申告が必要だと知りながら、税理士にも伝えずに申告から外していたと認め、重加算税が課されました(増差課税価格は約2億5千万円、追徴税額は約1億2千万円)。
この事例からわかるのは、現金そのものより先に「預金口座のお金の動き」が見られているということです。銀行から引き出したお金は、引き出した記録が口座に残ります。使い道が説明できない大きな引き出しがあれば、それが調査の入口になります。
事例:家族名義の口座へ移して、基礎控除以下に見せていた
もう1つの事例では、被相続人の口座から相続人や家族名義の口座へ預金を移し、基礎控除以下に見せて申告していなかったケースが紹介されています。こちらも重加算税が課されています。家族の名義に移しても、お金の出どころが亡くなった人であれば、相続財産と判断されることがあります。家族名義の口座の考え方は家族名義の証券口座で取引してもいい?でも触れています。
数字で見る申告漏れの中身
| 申告漏れ相続財産の種類(令和6事務年度) | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 現金・預貯金等 | 837億円 | 29.1% |
| 有価証券 | 393億円 | 13.6% |
| 土地 | 353億円 | 12.3% |
| 家屋 | 50億円 | 1.7% |
| その他 | 1,247億円 | 43.3% |
| 合計 | 2,879億円 | — |
出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」参考計表(グラフの数値を表にしたもの)
なお、同じ資料の贈与税の調査では、申告漏れ等の財産のうち現金・預貯金等が62.9%(1,754件)を占めています。親子の間で現金を渡したときの扱いは、相続でも贈与でも見られている、ということです。
申告漏れが見つかると、いくら上乗せされるのか
本来の税額に加えて、加算税と延滞税がかかります。加算税の割合は国税通則法で決まっていて、財務省の資料に一覧があります。
| 加算税の種類 | かかる場面 | 割合(原則) |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内に申告したが、税額が少なかった | 10%(一定額を超える部分は15%) |
| 無申告加算税 | 期限までに申告しなかった | 50万円以下の部分15%・50万円超300万円以下の部分20%・300万円超の部分30% |
| 重加算税 | 財産を隠したり事実を偽ったりした | 過少申告の場合35%・無申告の場合40% |
無申告加算税の300万円超の部分(30%)は、令和6年1月1日以後に申告期限が来るものから適用されています。また、税務署から調査の通知を受ける前に自分から修正申告・期限後申告をした場合は、割合が下がります(過少申告加算税はかからず、無申告加算税は5%)。気づいた時点で動いたほうが負担は小さい、というのが制度の作りです。

「少額だから大丈夫だろう」と判断する前に、まず金額を数えてください。隠したと判断されるかどうかは、金額の大小より「知っていて外したかどうか」で分かれます。
実家で現金を見つけたときの手順
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 相続人がそろった場で金額を数え、日付・場所・金額をメモする(写真も残す) | 後で「誰かが持ち出した」という争いを防ぐ |
| 2 | 現金は使わず、まとめて保管する(必要なら相続人の合意で一時的に口座へ) | 遺産分割の前に使うと、相続人どうしの争いになりやすい |
| 3 | 亡くなった人の通帳で、大きな引き出しがないか確認する | 家の現金と引き出しの記録がつながるか確かめる |
| 4 | 預金・株・不動産と合計し、基礎控除を超えるか判定する | 申告が必要かどうかが決まる |
| 5 | 超えるなら、現金も財産目録に入れて期限内に申告する。税理士に頼むなら、現金のことも必ず伝える | 税理士に伝えずに外すと、事例のように重加算税の対象になりうる |
| 6 | 申告後に見つかったら、調査の通知が来る前に修正申告を検討する | 自主的な修正は加算税の負担が小さい |
旧札が混ざっていても、そのまま使える
タンス預金には、聖徳太子や福沢諭吉の旧デザインの紙幣が混ざっていることがあります。財務省は、新しい紙幣の発行後も「現行の日本銀行券が使えなくなる」などと偽る詐欺行為に注意するよう呼びかけています。古い紙幣を「交換してあげる」「使えなくなる前に預かる」と言ってくる人には、現金を渡さないでください。金融機関の窓口で入金すれば足ります。
出典:財務省「わが国の紙幣」
「現金のままだと危ないから」と投資をすすめる話に注意する
相続で現金がまとまって手に入ると、「このまま置いておくと税務署に見つかる」「海外の口座に移せば相続税がかからない」「この商品に入れておけば評価が下がる」といった話が寄ってきます。山崎正義が300万円を失った頃から、「まとまったお金が入ったタイミング」は勧誘がいちばん増える時期です。
- 「税務署にばれない」をうたう話は、それ自体が危険信号:国税庁の資料にあるとおり、家族名義への移し替えや持ち出しは調査で把握され、重加算税の対象になっています。海外の資産についても、国税庁は租税条約にもとづく情報交換を活用していると公表しています
- 金融商品を扱うのに必要な登録を確かめる:投資の勧誘をしてくる業者は、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で登録があるか確認できます。登録がないのに勧誘してくる業者とは取引しないでください
- 急かされたら、その場で決めない:「今月中に」「今だけ」という期限は、考える時間を奪うための言葉です。相続税の申告期限は10か月あり、慌てて運用先を決める理由はありません
相続した株やお金の扱いで迷ったときは、まず税務署の相談窓口か税理士に確認し、運用はそのあとで考えても遅くありません。非上場株や賃貸不動産を相続する場合の評価は、親の会社の株(非上場株)を相続したら、いくらで評価される?と不動産小口化商品や買って5年以内の賃貸物件は、相続のときいくらで評価される?で説明しています。
山崎の見解:現金は「隠しやすい」のではなく「説明しにくい」財産
現金は手元にあるので、隠しやすい財産だと思われがちです。しかし国税庁の事例を見ると、実際には預金からの引き出しという記録が残るうえに、使い道を説明できる資料が残りにくい財産です。だからこそ、親が元気なうちに「家にいくら置いているか」を家族で共有し、亡くなったあとは見つけた日にきちんと記録する。この2つだけで、相続人が困る場面の多くは避けられると山崎は考えています。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「『タンス預金』をあぶり出す、税務調査官の『意味がわかると怖い質問』」
現金のほかに実家の土地も相続する場合は、実家の土地を相続したら評価が8割減る?小規模宅地等の特例を別居の会社員が使える条件と、住民票を移すだけでは使えない理由もあわせて確認しておくと、申告が必要かどうかの判定に役立ちます。
よくある質問
Q1. 家にある現金が少額でも、申告に入れる必要がありますか?
遺産の合計が基礎控除を超えて申告する場合は、金額の大小にかかわらず現金も財産として含めます。合計が基礎控除以下なら、そもそも申告は要りません。
Q2. 亡くなる直前に親の口座から引き出した葬儀費用は、どう扱いますか?
引き出したお金のうち、亡くなった時点で残っていた分は現金として相続財産に入ります。実際に支払った葬式費用は、要件を満たせば遺産から差し引けます。領収書を残しておいてください。
Q3. 申告したあとで別の場所から現金が見つかりました。どうすればいいですか?
税額が増えるなら修正申告をします。財務省の資料では、税務署から調査の通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税はかかりません(延滞税はかかることがあります)。
Q4. 旧デザインの一万円札が大量に出てきました。価値は変わりますか?
相続財産としては額面の現金として扱います。財務省は、現行の紙幣が使えなくなると偽る詐欺に注意するよう呼びかけています。交換や預かりを持ちかけられても応じず、金融機関の窓口で入金してください。
Q5. 家族名義の口座に親が積み立てていたお金は、誰の財産ですか?
名義が家族でも、お金を出したのが亡くなった人で、家族が自由に使えない状態だった場合は、相続財産と判断されることがあります。判断が難しいので、通帳の入出金の記録を残したうえで税理士か税務署に相談してください。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
相続税の申告が必要かどうか、計算のしかたは、税務署の電話相談センター(国税局電話相談センター)や税理士に確認してください。
山崎から一言



「見つからなければいい」と考えた時点で、払う金額は増える方向にしか動きません。見つけた日に数えて、記録して、家族で共有する。地味な手順ですが、それがいちばん安く済む方法です。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年10月15日時点で国税庁・財務省が公表している資料にもとづきます。個別の申告の要否や税額は、税務署または税理士にご確認ください。












