年末の「損出し」とは?2026年は12月28日が期限になる理由と、同じ株を買い直すときに損失が小さくなる落とし穴

年末の「損出し」とは?2026年は12月28日が期限になる理由と、同じ株を買い直すときに損失が小さくなる落とし穴

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「今年は利益が出た株と、大きく下がったままの株がある。年末に“損出し”をすると税金が戻ると聞いたけれど、いつまでに何をすればいいのか分からない」——山崎の副業相談室には、12月が近づくとこうした相談が届きます。

山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時は含み損の株を「いつか戻る」と抱えたまま年を越し、利益が出た株の税金だけはしっかり引かれていました。仕組みを知っていれば、同じ年の利益と損失を相殺できる場面があったのです。この記事では、年末の損出しの仕組み、年内に間に合わせるための期限、そして同じ株を買い直すときに損失が思ったより小さく計算される落とし穴を、計算例で整理します。

損益通算そのものの基本(どの所得と相殺できるか、複数口座の扱い、繰越控除)は損益通算と繰越控除の基本で説明しています。この記事は、それを年末にどう使うかという「手順とタイミング」の話に絞ります。

目次

結論:損出しは「年内に受渡しが終わる日」までに売り、買い直すなら翌営業日以降に

先に要点をまとめます。

  • 損出しとは:含み損のある株をいったん売って損失を確定させ、同じ年に確定した利益と相殺して、利益にかかる税金を減らすこと
  • 期限:特定口座では受渡日(決済日)の年で損益を数える。2026年は大納会が12月30日(水)なので、年内に受渡しが終わる最後の約定日は12月28日(月)
  • 買い直すとき:同じ銘柄を同じ日に売って買い直すと、取得価額が平均化されて確定する損失が小さくなる。損失を確定させたいなら、買い直しは翌営業日以降にするのが基本
  • 注意点:損出しは税金を「なくす」のではなく、多くの場合先送りにするだけ。売ってから買い直すまでの値動きと、売買手数料のぶんの負担もある

なお、NISA口座の損失は損益通算に使えないので、損出しの対象になりません。理由はNISAで損失が出たらどうなる?で整理しています。

損出しの仕組み:同じ年の利益と損失を相殺する

なぜ税金が戻るのか

上場株式の売却益には、所得税・住民税などを合わせて約20.315%の税金がかかります。この税金は1つの取引ごとではなく、1年間(1月1日〜12月31日)の利益と損失を差し引きした金額にかかります。

そのため、年の途中で利益を確定していても、同じ年のうちに別の株の損失を確定させれば、課税される金額が減ります。特定口座(源泉徴収あり)なら、口座の中で自動的に差し引きされ、払いすぎた税金は口座に戻ってきます。特定口座の基本は株の税金入門|特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?を参照してください。

計算例:利益30万円と含み損10万円がある場合

次の条件で、損出しをした場合としなかった場合を比べます。仕組みを説明するための単純な例で、売買手数料は含めていません。

  • A株:今年すでに売却して30万円の利益を確定(特定口座・源泉徴収あり)
  • B株:1株1,500円で200株(30万円)買い、いまは1株1,000円(評価額20万円・含み損10万円)
ケース 年間の差し引き かかる税金(約20.315%)
B株を売らずに年を越す 利益30万円 約60,945円
年内にB株を売って損失を確定(損出し) 30万円−10万円=20万円 約40,630円(約20,315円が口座に戻る)

差は約2万円です。ただし、これは「B株の損失がなかったことになる」という意味ではありません。損出しは、すでに出ている損失を、税金の計算の上で今年に確定させるだけです。

期限:特定口座は「受渡日」で年を判定する

2026年の年末スケジュール

国内株式は、売買が成立した日(約定日)を含めて3営業日目に受渡し(決済)が行われます。特定口座では、この受渡日がどの年に入るかで、その年の損益に含めるかが決まります。国税庁の通達でも、株式等の譲渡による収入は原則として株式等の引渡しがあった日(=受渡日)の年に計上すると定められています(国税庁「措置法第37条の10関係」通達37の10−1、2026年10月時点)。受渡日の数え方は株を売った代金はいつ引き出せる?受渡日と約定日の違いで詳しく説明しています。

約定日(国内株式) 受渡日 どの年の損益になるか
2026年12月28日(月) 2026年12月30日(水) 2026年分
2026年12月29日(火) 2027年1月4日(月) 2027年分
2026年12月30日(水・大納会) 2027年1月5日(火) 2027年分

つまり、12月29日と30日にも取引はできますが、そこで売った損失は2026年の利益とは相殺されません。「大納会までに売れば間に合う」と思い込んでいると、1日違いで翌年の扱いになります。

米国株・投資信託は期限が違う

米国株は現地の取引日と日本の受渡日の関係が国内株と異なり、投資信託は商品ごとに受渡日までの日数が違います。年内の期限は証券会社が毎年案内を出すので、必ず確認してください。

2026年10月時点では、主要証券会社から2026年の年末年始の案内はまだ出ていません。例年12月に「年内受渡となる最終約定日」の案内が出るので、米国株・投資信託で損出しをする場合はその案内を見てから日程を決めてください。

米国株の税金の基本は米国株の税金と確定申告にまとめています。

落とし穴:同じ日に買い直すと、確定する損失が小さくなる

特定口座では「買いが先」とみなして計算する

損出しをしたあと、「この会社の株は今後も持っていたい」と考えて同じ銘柄を買い直す人は多くいます。日本には、損失確定直後の買い直しを禁じるルールはありません。問題になるのは、売りと買い直しを同じ日に行ったときです。

特定口座では、同じ日に同じ銘柄を売買した場合、実際の注文の順番にかかわらず買いが先にあったものとみなし、それまでの取得価額と当日の買付価額を平均してから売却損益を計算します(SBI証券 よくあるご質問「保有株式を売却して同日に買付した場合の取得単価」)。

計算例:B株を同じ日に売って買い直した場合

やり方 計算に使う取得単価 確定する損失 買い直した株の取得単価
12月25日に売り、12月28日に買い直す(別の日) 1,500円 −10万円 1,000円
12月25日に売って、同じ日に1,000円で買い直す (1,500円×200株+1,000円×200株)÷400株=1,250円 −5万円 1,250円

同じ日に買い直すと、確定できる損失が半分になってしまいます。残りの損失は消えるわけではなく、買い直した株の取得単価(1,250円)に持ち越されますが、今年の税金を減らすという目的は半分しか果たせません。

別の日に買い直すときのリスク

翌営業日以降に買い直せば損失はそのまま確定しますが、売ってから買い直すまでの間に株価が上がれば、同じ株数を買い戻すのに多くのお金が必要になります。数万円の税金を取り戻すために、それ以上の値上がりを取り逃すこともあり得ます。売買手数料が2回かかる点も含めて、「本当に損出しをする意味があるか」を先に計算してください。手数料の見方は株の売買手数料の仕組みで整理しています。

損出しは「節税」より「税金の先送り」に近い

先ほどのB株を、損出し後に1,000円で買い直したとします。取得単価は1,000円になるので、将来1,500円まで戻ってから売ると、今度は10万円の利益として課税されます。

時期 損出しをしない場合 損出し+買い直しをした場合
今年 利益30万円に課税 利益20万円に課税(約2万円が戻る)
将来1,500円で売ったとき 取得単価1,500円なので損益0円 取得単価1,000円なので利益10万円に課税(約2万円)

トータルで見ると、税金は減ったのではなく後ろにずれただけです。それでも、戻ってきたお金を手元に置ける、将来の年に別の損失と相殺できる可能性がある、といった意味はあります。ただ、「損出しで得をする」という言い方には注意が必要です。

年末に損出しをする前に確認する5つのこと

確認すること 理由
今年、課税口座で確定した利益(または配当)があるか 相殺する利益がなければ、損出しをしても今年の税金は戻らない
損失のある株と利益の出た株が同じ口座か 別の証券会社の口座どうしは自動では相殺されず、確定申告が必要
受渡日が年内に入るか 国内株は2026年12月28日約定まで。米国株・投資信託は別途確認
買い直すなら別の日にするか 同じ日だと取得単価が平均化され、損失が小さくなる
手数料と、買い直すまでの値動きの負担に見合うか 戻る税金より負担のほうが大きければ意味がない

源泉徴収ありの特定口座で配当を株式数比例配分方式で受け取っている場合は、口座内の配当とも相殺されます。複数の証券会社にまたがる場合や、相殺しきれなかった損失を翌年以降に繰り越したい場合は、確定申告が必要です。源泉徴収の有無を変えるタイミングは特定口座の「源泉徴収あり・なし」はいつ変えられる?を参照してください。

山崎の見解:損出しを「売る理由」にしない

山崎正義が相談を受けていて気になるのは、年末になると「損出しのために売る」ことが目的になり、もともとの投資判断がぼやけてしまうケースです。損出しは、すでに出ている損失を税金の計算に反映させる手続きにすぎません。その株を持ち続けるか手放すかは、損出しとは別に、損切りとリスク管理の基本で書いたような自分のルールで決めるべきものです。

また、年末には「損失を取り戻せる」「税金対策になる投資がある」とSNSやDMで勧誘されることがあります。損失を抱えて焦っている時期ほど、無登録業者の誘いに乗りやすくなります。勧誘を受けたら、まず無登録業者の見分け方の手順で登録を確かめてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 12月29日や30日に売った損失は無駄になりますか

無駄にはなりません。受渡日が2027年になるので、2027年の損益として扱われます。2027年に利益が出れば、その利益と相殺されます。ただし、2026年の利益とは相殺できません。

Q2. 損出しした株を翌日に買い直すのは問題ありませんか

日本の税制には、損失を確定した直後の買い直しを制限するルールはありません。翌営業日以降に買い直せば、売った日の損失はそのまま確定します。ただし、その間の値動きと手数料の負担はあります。

Q3. 含み損のある株を売らずに、損失だけ確定させる方法はありますか

ありません。税金の計算上の損失は、実際に売って確定したものだけが対象です。含み損のまま持っていても、利益と相殺はできません。

Q4. 損失のほうが大きい場合はどうなりますか

その年の利益と相殺しきれなかった損失は、確定申告をすれば翌年以降3年間繰り越せます。特定口座(源泉徴収あり)でも、繰り越すには確定申告が必要です。詳しくは損益通算と繰越控除の基本を参照してください。

Q5. 利益が20万円以下の会社員でも損出しの意味はありますか

源泉徴収ありの特定口座では、利益が20万円以下でも口座の中で税金が引かれているので、損出しで戻る場合があります。一方、源泉徴収なしの口座や一般口座で「20万円以下なら申告不要」の扱いになる人は、そもそも所得税がかかっていないことがあります。判定は株の利益が20万円以下なら確定申告は不要?で整理しています。

相談先まとめ

投資の勧誘や取引についての不安があるときは、次の窓口が使えます。

  • 消費者ホットライン(188):最寄りの消費生活センターにつながります
  • 警察相談専用電話(#9110):詐欺被害の疑いがあるとき
  • 金融庁 金融サービス利用者相談室:金融商品取引業者に関する相談・無登録業者の確認
  • 税務署・国税庁の電話相談センター:確定申告や損益通算の具体的な扱い

山崎から一言

300万円を失った頃の山崎正義は、含み損の株を見ないようにして年を越していました。損出しを知ったのは、ずっと後のことです。ただ、仕組みを知った今だから言えるのは、損出しは魔法の節税ではなく、「すでに出ている損を、税金の計算に正しく反映させる」だけの手続きだということです。12月28日の期限と、同じ日に買い直さないこと。この2つを押さえておけば、年末に慌てずに済みます。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。本文中の税率・受渡日・年末の日程は2026年10月時点の一般的な取り扱いを整理したものです。最新の内容は国税庁・日本取引所グループ・各証券会社の公式情報でご確認ください。

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