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「口座を作るときに何となく『源泉徴収あり』を選んだけれど、確定申告を自分でしたほうがいい気がしてきた。今から『なし』に変えられる?」——山崎の副業相談室には、会社員の方からこうした相談が届きます。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時の山崎は口座の設定を「よくわからないまま」にしていて、年が明けてから税金の扱いを調べ、変えたいと思ったときにはもう変えられませんでした。この記事では、特定口座の「源泉徴収あり・なし」をいつまでなら変えられるのか、なぜ年の途中では変えられないのか、そして会社員が選ぶときに何を見ればいいのかを整理します。
特定口座そのものの仕組みや、源泉徴収ありなら確定申告がいらない理由は株の税金入門|特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?で説明しています。この記事は「変えるタイミング」と「選び方」に絞った話です。
結論:変えられるのは「その年の最初の売却の前」まで。売った後は翌年から
先に要点をまとめます。
- 「なし」→「あり」:その年(1月1日〜12月31日)の最初の売却(投資信託なら解約・償還)の前までなら変えられる
- 「あり」→「なし」:その年の最初の売却の前で、かつ口座で配当を受け取る設定なら最初の配当・分配金が出る前まで
- 年の途中で変えられない理由:源泉徴収ありの口座は、1年分の損益をまとめて計算しながら税金を差し引く仕組みだから。途中で切り替えると計算がつながらない
- もう売ってしまった場合:その年は今の区分のまま。翌年分から変える手続きをする
- 選ぶときの目安:確定申告をしたくない人・扶養や国民健康保険への影響を避けたい人は「あり」、会社員で利益が少なく申告の手間をいとわない人は「なし」も選択肢になる
大事なのは、区分は「1年単位」で決まるという点です。変えたいと思ったら、まず「今年もう売ったかどうか」を確認してください。
源泉徴収あり・なしの違いをおさらい
どちらも「特定口座」なので、証券会社が1年分の損益を計算して「年間取引報告書」を作ってくれる点は同じです。違うのは、税金を証券会社が差し引いて納めてくれるかどうかです。
| 項目 | 源泉徴収あり | 源泉徴収なし |
|---|---|---|
| 税金の納め方 | 売って利益が出るたびに証券会社が差し引いて納める | 差し引かれない。必要なら自分で確定申告して納める |
| 確定申告 | しなくてよい(申告不要を選べる) | 原則必要。会社員で給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の申告は不要(住民税の申告は別) |
| 同じ口座内の損失 | 年内の利益と自動で通算され、払いすぎた税金が戻る | 年間取引報告書で通算された結果を申告に使う |
| 配当の受け入れ | 口座に受け入れて、売却損と通算できる(株式数比例配分方式など) | 口座への配当の受け入れはできない |
| 扶養・国民健康保険への影響 | 申告不要を選べば、合計所得金額に含まれない | 申告した利益は合計所得金額に含まれる |
会社員の「20万円以下なら申告不要」の判定は、口座の区分で効き方が変わります。詳しくは株の利益が20万円以下なら確定申告は不要?で整理しています。
変更できるタイミング:方向ごとに期限が違う
期限の早見表
| 変更の方向 | 変えられる期限(その年の分) | 期限を過ぎたら |
|---|---|---|
| なし → あり | その年の最初の売却(解約・償還を含む)の前まで | 翌年分から変更 |
| あり → なし | その年の最初の売却の前まで。口座で配当・分配金・利金を受け取る設定なら、最初の配当等が出る前まで | 翌年分から変更 |
「あり → なし」のほうが条件が厳しいのは、源泉徴収ありの口座では配当も一緒に計算しているためです。たとえば、まだ何も売っていなくても、口座で配当を受け取る設定にしていて3月に配当が出たなら、その年は「なし」に変えられません。大手証券会社のFAQでも、方向ごとにこのような期限が案内されています(みずほ証券 FAQ「特定口座の源泉徴収区分の変更について」)。
翌年分を変えるときの手順
- 証券会社のWebサイトやアプリで「特定口座の源泉徴収区分の変更」の手続き画面を開く(書類で受け付ける会社もある)
- 変更後の区分を選び、「翌年から適用」になっていることを確かめる
- 年が明けたら、最初の売却の前に区分が切り替わっているかを口座情報で確認する
多くの証券会社は、年内に手続きをすれば翌年1月から新しい区分で扱う受付をしています。ただし、受付の締め切り日は会社ごとに違います。年末が近づいたら、利用している証券会社のお知らせやFAQで締め切りを確認してください。
なぜ年の途中で変えられないのか
源泉徴収ありの口座は「1年分の計算」を続けている
源泉徴収ありの口座では、証券会社が1月1日からの損益を合計しながら、売るたびに「今年の利益の合計にかかる税金」から「すでに納めた税金」を差し引いて計算しています。損が出たときに税金が戻るのも、この1年分の計算があるからです。
年の途中で「なし」に切り替えると、それまでに差し引いた税金と、その後の取引をどうつなげるかが決められなくなります。逆に途中から「あり」にしても、それまでの利益に税金がかかっていない状態から計算を始めることになります。そのため税法上も、源泉徴収を選ぶ届出(特定口座源泉徴収選択届出書)は「その年最初の売却の時までに出す」と決まっていて、区分は1年を通して1つです。制度の概要は国税庁のタックスアンサー「No.1476 特定口座制度」で確認できます。
区分は変えられなくても、確定申告に含めることはできる
源泉徴収ありの口座の利益や損失を、あえて確定申告に含めることはできます。たとえば、別の証券会社の口座で出た利益と通算したいときや、損失を翌年以降に繰り越したいときです。逆に、源泉徴収なしの口座の利益に、あとから源泉徴収をかけてもらうことはできません。手続きの考え方は損益通算と繰越控除の基本を参考にしてください。
会社員が「あり・なし」を選ぶときの考え方
「あり」が向いている人
- 確定申告をしたことがない、またはしたくない
- 配偶者などの扶養に入っている、または家族を扶養に入れている(申告不要にすれば合計所得金額に含まれない)
- 国民健康保険に加入していて、保険料への影響を避けたい
- 配当を口座に受け入れて、売却損と自動で通算したい
扶養の判定は税金と健康保険で基準が違います。詳しくは扶養に入っている人が株で利益を出したら扶養から外れる?で説明しています。
「なし」も選択肢になる人
- 会社員で年末調整を受けていて、給与以外の所得(株の利益や副業の所得の合計)が年20万円以下に収まりそう
- 利益が出たら自分で確定申告をする手間をいとわない
この条件なら所得税の申告をしなくて済むため、源泉徴収ありなら差し引かれていた所得税の分を納めずに済む場合があります。ただし、住民税には20万円以下の申告不要の決まりがないので、市区町村への住民税の申告は別に必要です。また、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)などで確定申告をする年は、20万円以下でも株の利益を含めて申告することになります。ふるさと納税との関係はふるさと納税をしている会社員が株の利益で確定申告すると上限は変わる?を参照してください。
住民税だけ別の方式を選ぶことは、もうできない
以前は「所得税は申告するが、住民税は申告不要にする」といった選び方ができました。令和6年度(2024年度)の住民税からはこれができなくなり、住民税は所得税で選んだ課税方式と同じになると各自治体が案内しています(東京都北区「所得税と異なる課税方式を選択することが出来なくなりました」)。源泉徴収ありの利益を確定申告に含めると、住民税の計算や扶養・保険料の判定にも反映される点に注意してください。港区の案内でも、令和6年度(令和5年分)以降は所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことはできず、確定申告のあとに修正申告や更正の請求で課税方式を変えることもできないとされています(港区「上場株式等に係る配当所得等・譲渡所得等の課税方法の統一」・2026年10月時点で確認)。
迷ったときの判断表
| あなたの状況 | 考え方 |
|---|---|
| 確定申告をしたくない/扶養・国保が気になる | 「あり」にしておけば申告不要を選べる |
| 会社員で給与以外の所得が年20万円以下に収まりそう | 「なし」も選べる。ただし住民税の申告は必要 |
| 配当を受け取りながら売買もする | 口座で配当と売却損を通算したいなら「あり」 |
| 副業の所得もあり、毎年確定申告をしている | 副業と株を合わせて20万円を超えるなら、どちらの区分でも申告の手間は大きく変わらない |
副業をしている会社員の場合、20万円の判定は株の利益と副業の所得を合計して行います。副業と株の関係は株式投資は副業になる?でもまとめています。
「税金が安くなる口座設定を教えます」という勧誘に注意
山崎の副業相談室には、SNSで知り合った相手から「税金がかからない口座の使い方を教える」「口座の設定を代わりにやってあげる」と持ちかけられた、という相談も届きます。ログインIDやパスワードを渡してしまうと、口座を勝手に操作される危険があります。300万円を失った頃の山崎も、「知らないと損をする情報」という言葉に弱いタイプでした。
特定口座の区分は、証券会社の画面で自分で変えられます。口座のログイン情報を他人に教える必要は一切ありません。有料で個別の売買を助言するには投資助言・代理業の登録が必要なので、相手の登録は金融庁の登録一覧で確かめてください。
これから口座を作る人へ:区分は口座開設のときに選ぶ
源泉徴収あり・なしは、証券口座を開設する画面で選ぶのが一般的です。開設のときに「確定申告をするつもりがあるか」「扶養や国民健康保険の状況はどうか」を先に考えておくと、あとで変えたくなったときに慌てずに済みます。口座の種類の違いは証券口座の選び方入門で整理しています。
口座を開設できる証券会社のひとつに、DMM.com証券の「DMM 株」があります。ほかの証券会社と同じく、口座開設時に特定口座の源泉徴収あり・なしを選ぶ形です。手数料や取扱商品は各社の公式サイトで比べてください。
年末に含み損の株を売って利益と相殺する「損出し」をする場合の期限と、買い直すときの落とし穴は年末の「損出し」とは?2026年は12月28日が期限になる理由と、同じ株を買い直すときに損失が小さくなる落とし穴で説明しています。
年明けに届く特定口座年間取引報告書の読み方は特定口座年間取引報告書とは?いつ届くか・どこで見るか、確定申告で使う欄を読み方つきで整理で整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 今年すでに1回売ってしまいました。今からでも「なし」にできますか
今年分はできません。その年の最初の売却が終わった時点で、今年の区分は確定しています。年内に翌年分の変更手続きをしておけば、来年1月からの取引は新しい区分で扱われます。
Q2. NISA口座の取引も「源泉徴収あり・なし」の対象になりますか
なりません。NISA口座の利益や配当は非課税なので、源泉徴収の区分は関係ありません。区分が関係するのは特定口座(課税口座)の取引だけです。NISA口座で出た損失の扱いはNISAで損失が出たらどうなる?を参照してください。
Q3. 投資信託の分配金を受け取っただけでも、変更できなくなりますか
「あり」から「なし」への変更では、口座で分配金を受け取る設定になっていれば、その年最初の分配金が出た時点で今年分は変えられなくなります。「なし」から「あり」への変更は、売却(解約)の前であれば手続きできます。具体的な判定は証券会社の案内で確認してください。
Q4. 証券会社を複数使っている場合、区分はそろえる必要がありますか
そろえる必要はありません。区分は口座ごとに選べます。ただし、ある口座の利益と別の口座の損失を通算したいときは、確定申告が必要になります。
相談先まとめ
投資の勧誘や取引についての不安があるときは、次の窓口が使えます。
- 消費者ホットライン(188):最寄りの消費生活センターにつながります
- 警察相談専用電話(#9110):詐欺被害の疑いがあるとき
- 金融庁 金融サービス利用者相談室:金融商品取引業者に関する相談・無登録業者の確認
- 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC):証券会社との取引に関する苦情・紛争の相談
- 国税局電話相談センター:自分の場合に確定申告が必要かどうかの確認(所轄の税務署に電話して案内に従う)
山崎から一言
300万円を失った頃の山崎正義は、口座の設定を「後でなんとかなる」と考えていました。でも源泉徴収の区分は、1回売った時点でその年の分が決まってしまいます。変えたいと思ったら、まず「今年もう売ったか」を確かめる。売っていたら、焦らず翌年分の手続きをする。それだけで十分です。税金の扱いは地味ですが、知っているかどうかで手元に残るお金と手間が変わります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。本文中の変更期限・税制・住民税の扱いは2026年10月時点の一般的な取り扱いを整理したものです。最新の内容は国税庁・お住まいの自治体・各証券会社の公式情報でご確認ください。

