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「証券会社から『特定口座年間取引報告書を交付しました』という通知が来たけれど、何に使う書類なのかわからない」「確定申告をしないなら見なくていい?」——年明けになると、山崎の副業相談室にはこうした質問が増えます。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時の山崎は、自分が1年でいくら損をして、税金がいくら差し引かれていたのかを把握しないまま次の取引を重ねていました。この書類を最初にきちんと読んだのは、損失がふくらんでからです。この記事では、特定口座年間取引報告書がいつ届くか、どこで見るか、そしてどの欄を見て、確定申告のどこで使うのかを整理します。
特定口座の「源泉徴収あり・なし」の違いそのものは株の税金入門|特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?で、区分を変えるタイミングは特定口座の「源泉徴収あり・なし」はいつ変えられる?で説明しています。この記事は「書類の読み方と使う場面」に絞った話です。
結論:1年分の損益と税金が1枚にまとまった書類。翌年1月に届き、申告するときの「元データ」になる
先に要点をまとめます。
- 何の書類か:特定口座で1月1日〜12月31日に行った売却の損益、受け取った配当、差し引かれた税金を証券会社がまとめた報告書
- いつ届くか:取引の翌年1月。法律上の期限は翌年1月31日までで、同じ内容が証券会社から税務署にも提出される
- どこで見るか:多くのネット証券では、Webサイトやアプリの「電子交付書面」「取引報告書等」の画面でPDFを見る。郵送は電子交付に同意していない人向けなど、会社によって扱いが違う
- 見る欄:「譲渡」の欄(売った金額・買った金額・差引の損益)、「配当等」の欄、「源泉徴収税額」の欄の3つ
- 確定申告で使う場面:源泉徴収なしの口座で申告するとき、源泉徴収ありでも他の証券会社との損益通算・損失の繰越・配当との通算をするとき
- 添付は不要:2019年4月1日以後に提出する確定申告書には、報告書の添付は不要になった。ただし数字は申告書に書き写す(または取り込む)ので、手元に保管しておく
源泉徴収ありの口座で、ほかに通算したい損失もない人なら、届いても何もしなくてかまいません。それでも一度は開いて、1年の結果を数字で確かめることを山崎はすすめています。
特定口座年間取引報告書とは何か
特定口座は、証券会社が1年分の売買損益を計算してくれる口座です。その計算結果を1年に1回、書類の形でまとめたものが特定口座年間取引報告書です。根拠は租税特別措置法の特定口座の規定で、証券会社には作成と交付、税務署への提出が義務づけられています。制度の概要は国税庁のタックスアンサー「No.1476 特定口座制度」で確認できます。
載るもの・載らないもの
| 区分 | 報告書に載るか | 補足 |
|---|---|---|
| 特定口座での株・投資信託・ETFなどの売却 | 載る | 「源泉徴収あり」「なし」どちらでも作られる |
| 特定口座で受け取った配当・分配金 | 載る | 口座で受け取る方式(株式数比例配分方式など)を選んでいる場合 |
| NISA口座の取引・配当 | 載らない | 非課税なので計算の対象外 |
| 一般口座の取引 | 載らない | 自分で損益を計算して申告する |
| 他の証券会社の口座 | 載らない | 報告書は証券会社ごとに1通ずつ届く |
| 郵便局・銀行で受け取った配当(配当金領収証方式など) | 載らない | 発行会社から届く支払通知書で確認する |
「報告書にマイナスが出ていない=今年は損していない」とは限らない点に注意してください。NISA口座で値下がりした分や、別の証券会社の損益はこの1通には入っていません。
いつ届くか:法律上の期限は翌年1月31日
報告書は、取引をした年の翌年1月に交付されます。法律上の期限は翌年1月31日までで、実際には電子交付が1月上旬、郵送はそれより遅れて中旬以降という会社が多い傾向です。たとえば楽天証券は、2025年分について電子交付を2026年1月4日、郵送を1月14日から順次と案内していました(楽天証券「年間取引報告書について」)。
年の途中で口座を閉じた場合
年の途中で特定口座を廃止した(証券会社を解約した)場合は、年明けを待たずに報告書が作られます。廃止した月の翌月中に届くよう案内している会社が多いので、口座を閉じたあとも登録住所やメールは使える状態にしておいてください。
法令では、年の途中で特定口座を廃止した場合の報告書の交付期限は「その事由が生じた日の属する月の翌月末日」までと定められています(e-Gov法令検索「租税特別措置法」第37条の11の3第7項/2026年10月時点)。
取引がなかった年は届かないことがある
特定口座で売却も配当の受け取りもなかった年は、報告書が作られない、または郵送されない場合があります。「今年は届かない」と思ったら、まず取引の有無を確認してください。
どこで見るか:電子交付の画面を探す
ネット証券の多くは、報告書を電子交付しています。郵送されないことがあるので、「届いていない」と思ったら次の順に確認します。
- 証券会社のWebサイトにログインし、「電子交付書面」「取引報告書等」「各種報告書」といったメニューを開く
- 書類の種類で「特定口座年間取引報告書」を選び、対象の年を指定する
- PDFを保存する。会社によってはXMLファイル(データ形式)も同じ画面からダウンロードできる
XMLファイルは、国税庁の確定申告書等作成コーナーに読み込ませて数字を自動で入力するためのものです。さらに、マイナポータルと連携している証券会社なら、e-Taxで申告するときに報告書の内容を自動で取り込めます。対応している会社や連携の開始日は会社ごとに違うので、申告する前に証券会社のお知らせで確認してください。
見る欄はこの3つ:譲渡・配当等・源泉徴収税額
欄の名前や並び順は証券会社によって少しずつ違いますが、中身はほぼ共通です。次の3つのまとまりを探してください。
| まとまり | 主な欄 | 意味 |
|---|---|---|
| 譲渡(売却) | 譲渡の対価の額(収入金額) | 1年間に売った金額の合計 |
| 取得費及び譲渡に要した費用の額等 | 売った株を買ったときの金額と、売買の手数料の合計 | |
| 差引金額(譲渡所得等の金額) | 上の2つの差。プラスなら利益、マイナスなら損失 | |
| 配当等 | 配当等の額 | 口座で受け取った配当・分配金の合計(税金を引く前) |
| 税金 | 源泉徴収税額(所得税・住民税) | 証券会社が差し引いて納めた税金。源泉徴収なしの口座では0 |
| 外国所得税の額 | 米国株の配当などで、現地で差し引かれた税金 |
読み方の例
架空の数字で見てみます。源泉徴収ありの特定口座で、1年間に次のような結果だったとします。
| 欄 | 金額(例) |
|---|---|
| 譲渡の対価の額 | 1,200,000円 |
| 取得費及び譲渡に要した費用の額等 | 1,350,000円 |
| 差引金額 | ▲150,000円 |
| 配当等の額 | 50,000円 |
この場合、売却では15万円の損失が出ています。源泉徴収ありの口座では、同じ口座で受け取った配当5万円と損失が自動で通算されるため、配当から差し引かれていた税金は年内に戻されています。報告書には、通算したあとの源泉徴収税額が載ります。
残った損失10万円(15万円−5万円)を翌年以降に繰り越したいときは、確定申告が必要です。何もしなければ、この10万円の損失はその年で消えます。
確定申告で使う場面・使わない場面
| 状況 | 報告書の使い方 |
|---|---|
| 源泉徴収ありで、ほかに通算する損失もない | 申告不要を選べる。見て保管しておくだけでよい |
| 源泉徴収なしで利益が出た | 原則として申告に使う(会社員で給与以外の所得が20万円以下なら所得税の申告は不要。住民税は別) |
| 複数の証券会社で、片方が利益・片方が損失 | 各社の報告書の数字を合わせて申告し、損益通算する |
| 損失を翌年以降に繰り越したい | 申告に使う。翌年以降も続けて申告が必要 |
| 米国株の配当で外国の税金が引かれた | 外国税額控除を受けるなら、外国所得税の額を申告に使う |
申告するときは、確定申告書の分離課税用の書類(第三表)と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」に、報告書の「譲渡の対価の額」「取得費及び譲渡に要した費用の額等」などを書き写します。作成コーナーでは、報告書と同じ並びの入力画面が用意されています。申告の判断は株の利益が20万円以下なら確定申告は不要?、損失の通算と繰越は損益通算と繰越控除の基本で整理しています。

源泉徴収ありの口座を申告に含めるかどうかは、口座ごとに選べます。申告すると、その利益が合計所得金額に入り、扶養や国民健康保険料に影響することがあります。迷うときは税務署や税理士に相談してください。
投資詐欺にも使われる「書類の読めなさ」に注意
山崎が調査してきた投資詐欺の中には、「運用益が出ているので税金分を先に振り込んでください」「確定申告の手続きを代行するので手数料が必要です」と、税金の知識が少ない人を狙って追加の支払いを求めるものがありました。
正規の証券会社の特定口座なら、利益と税金は年間取引報告書に数字で示され、源泉徴収ありなら税金は口座の中で差し引かれます。「税金を個人の口座に振り込んで」という連絡は、その時点で立ち止まるのが安全です。取引している業者が金融商品取引業の登録を受けているかは、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 報告書を紛失したら再発行できますか?
電子交付なら、保存期間内であればWebサイトから何度でもダウンロードできます。郵送で受け取った書類の再発行は、証券会社に依頼すれば対応してもらえるのが一般的です。保存期間や再発行の方法は会社ごとに確認してください。
Q2. 確定申告書に報告書を添付する必要はありますか?
2019年4月1日以後に提出する確定申告書には、添付は不要です。証券会社から税務署にも同じ内容が提出されているためです。ただし、申告書には報告書の数字を記載する必要があります。
Q3. NISAで売った分はどこで確認すればいいですか?
NISA口座の取引は年間取引報告書には載りません。証券会社の取引履歴や、NISA口座の保有・売却の明細画面で確認してください。NISAの損失は税金の計算に使えない点はNISAで損失が出たらどうなる?で説明しています。
Q4. 1月31日を過ぎても見当たりません。
まず電子交付の画面を確認し、その年に特定口座で売却や配当の受け取りがあったかを見てください。取引があったのに見当たらない場合は、証券会社の窓口に問い合わせます。
まとめ
- 特定口座年間取引報告書は、特定口座での1年分の損益・配当・税金をまとめた書類
- 翌年1月(期限は1月31日)に交付され、多くは電子交付の画面で見る
- 見る欄は「譲渡」「配当等」「源泉徴収税額」の3つ。NISA・一般口座・他社口座の分は載らない
- 源泉徴収なしの申告、他社との損益通算、損失の繰越、外国税額控除をするときに数字を使う
- 確定申告書への添付は不要だが、手元に保管しておく
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
税金の計算や申告の内容については、最寄りの税務署の電話相談や税理士に確認してください。
山崎から一言



300万円を失った頃の山崎は、損の合計を数字で見るのが怖くて、この書類を開きませんでした。年に1回、1枚を読むだけで、自分の取引が冷静に見えるようになります。届いたら、まず「差引金額」の1行だけでも確かめてみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。












