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「うちの就業規則には『副業禁止』と書いてある。少しでも副業をしたら懲戒処分になるのだろうか」——会社員の方からよく受ける質問です。結論から言うと、就業規則に「禁止」と書かれていても、それだけで副業のすべてが処分の対象になるとは限りません。厚生労働省の考え方や裁判例では、会社が副業を制限できるのは「本業に支障が出る」「企業秘密が漏れる」「会社の信用を傷つける」「競業で会社の利益を害する」といった場合が中心です。ただし、許可制・届出制の手続きを無視すれば、それ自体が規律違反として問題になり得ます。「禁止は無効だから何をしてもいい」とも言えないのが実際のところです。
こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。怪しい副業の勧誘には「会社にバレない」「就業規則は関係ない」といった言葉がよく並びます。就業規則の読み方を知っておくと、自分の立場を守りながら副業を選べるようになります。いま届いている副業の勧誘に不安がある方は、山崎の副業相談室(LINE・無料)に案件名を送ってもらえれば、記事より早く直接お答えできます。
この記事でわかること
- 就業規則の副業規定は「禁止」「許可制」「届出制」「定めなし」の4つの型があり、それぞれ何をすればよいか
- 会社が副業を制限できるとされる4つの場面(厚生労働省のモデル就業規則の考え方)
- 副業を理由にした解雇が「有効」とされた例と「無効」とされた例の違い
- 自分の会社の規定を確認する手順と、申請書に書く内容
- 「禁止」のまま黙って始める前に考えておきたいこと
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結論|「禁止」の一文より、制限される4つの場面に当たるかが重要
厚生労働省は「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由」という立場をとり、モデル就業規則でも副業・兼業を原則として認める書き方にしています。そのうえで、会社が禁止・制限できる場合として次の4つを挙げています。
| 制限できるとされる場面 | 具体的にはどんなときか(例) | 自分で確認すること |
|---|---|---|
| ① 労務提供上の支障がある | 深夜まで副業をして本業に遅刻・居眠りが続く、長時間労働で健康を損なう | 本業の勤務時間・休息時間に食い込まないか |
| ② 企業秘密が漏洩する | 本業で知った顧客情報・技術情報を副業で使う | 本業の情報や人脈を使う内容になっていないか |
| ③ 会社の名誉・信用を損なう、信頼関係を壊す | 社会的に問題視される事業に関わる、会社名を出して勧誘する | 副業の内容が会社の信用に関わらないか |
| ④ 競業により会社の利益を害する | 本業と同じ業界の他社で働く、本業の顧客を自分で受注する | 本業と取引先・顧客が重ならないか |
つまり、読むべきは「禁止」という一語ではなく、自分の副業がこの4つに当たるかどうかと、会社が定めた手続き(許可・届出)を踏んでいるかどうかの2点です。前者は副業の中身の問題、後者は手続きの問題で、どちらか一方だけ満たしていても安心とは言えません。
なお、この記事は会社員(民間企業に雇われている人)向けの一般的な整理です。公務員は法律で副業が制限されていて考え方が大きく違うため、後半で別に触れます。個別の処分の可否は会社の規定と事情によって変わるので、判断に迷う場合は後述の相談先を使ってください。
就業規則の副業規定は4つの型に分かれる
就業規則の副業に関する条文は、会社によって書き方がばらばらです。ただ、読み比べていくと大きく4つの型に整理できます。まず自分の会社がどれに当たるかを見てください。
| 型 | よくある書き方 | 副業を始める前にすること | 手続きを飛ばした場合 |
|---|---|---|---|
| 禁止型 | 「会社の許可なく他の業務に従事してはならない」「兼業を禁止する」 | 例外(許可を得る道)があるか確認し、あれば許可を求める | 規律違反として処分の対象になり得る。有効かは中身次第 |
| 許可制 | 「副業を行う場合は、事前に会社の許可を得なければならない」 | 申請書を出し、許可を得てから始める | 無許可での副業として注意・処分の対象になり得る |
| 届出制 | 「副業を行う場合は、事前に所定の届出を行う」 | 届出を出す(会社は4つの場面に当たる場合に制限できる) | 届出義務違反として問題になり得る |
| 定めなし | 副業について何も書いていない | 秘密保持・競業避止・職務専念の条文を確認する | 副業規定はなくても、他の条文違反を問われる可能性は残る |
「禁止型」でも、実際は許可を得る道があることが多い
「許可なく〜してはならない」という書き方は、読み方を変えると「許可があればしてよい」という意味になります。全面禁止に見える条文でも、実務上は許可制として運用されている会社は少なくありません。条文だけで諦めず、人事部門に「副業の許可を申請する手続きはあるか」を確認する価値があります。
「届出制」はモデル就業規則と同じ考え方
厚生労働省のモデル就業規則は、2018年1月の改定で副業・兼業を「届出制」とし、4つの場面に当たる場合に禁止・制限できる形に改められました。届出制の会社では、届出を出すこと自体が前提になっています。届け出たうえで会社から制限を求められた場合は、どの場面に当たると判断されたのかを確認し、内容を調整できないか相談するのが筋です。
「定めなし」でも、ほかの条文に注意
副業の条文がなくても、就業規則には「業務上知り得た秘密を漏らしてはならない」「会社の信用を傷つける行為をしてはならない」といった条文があるのが一般的です。入社時に競業避止の誓約書を出している場合もあります。副業規定がないことは「何をしても自由」という意味ではない点に注意してください。
裁判例で見る|処分が有効とされた例・無効とされた例
副業を理由にした解雇などが争われた裁判例では、就業規則に禁止規定があるかどうかだけでなく、副業の頻度・時間・内容が本業にどれだけ影響するかが見られています。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも紹介されている代表的な2件を並べます。
| 事件 | 副業の内容 | 判断 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 小川建設事件(東京地裁・昭和57年11月19日決定) | 勤務後に毎日6時間、深夜に及ぶキャバレーでの無断就労 | 解雇有効 | 余暇利用のアルバイトの域を超え、本業の誠実な労務提供に支障を来す蓋然性が高い |
| 十和田運輸事件(東京地裁・平成13年6月5日判決) | 運転手が年に1〜2回、貨物運送のアルバイト | 解雇無効 | 職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでは言えない |
2件を比べると、分かれ目は「禁止規定があったか」ではなく、本業にどれだけ影響する働き方だったかにあることがわかります。毎日深夜まで続く副業と、年に1〜2回の単発の仕事では、同じ「無断の副業」でも評価がまったく違います。
ただし、裁判例は個別の事情に対する判断です。「年に数回なら必ず大丈夫」「無断でも処分は無効になる」と読むのは危険です。裁判で争うこと自体に時間も費用もかかりますし、その間の職場での立場は元に戻りません。裁判例は「会社と話し合うときの考え方の目安」として使い、無断で始める根拠にはしないのが現実的です。
自分の会社の副業規定を確認する5つの手順
就業規則は、会社が労働者に周知しなければならないものです(労働基準法106条)。社内ポータルや共有フォルダ、事業所の掲示などで確認できるはずです。見つからない場合は人事・総務に「就業規則を確認したい」と伝えれば足ります。副業のことを最初から切り出す必要はありません。
| 手順 | 見る場所 | 確認すること |
|---|---|---|
| 1. 副業の条文を探す | 「服務規律」「遵守事項」「副業・兼業」の章 | 禁止・許可制・届出制・定めなしのどれか |
| 2. 対象の範囲を読む | 「他の会社等の業務に従事」「自ら事業を営む」などの文言 | 雇用だけが対象か、業務委託・個人事業も含むか |
| 3. 手続きを確認する | 条文の本文、別に定める規程・申請書の様式 | いつまでに、誰に、何を出すか |
| 4. 関連する条文を読む | 秘密保持、競業避止、職務専念、懲戒の章 | 副業規定以外で違反になりそうな点はないか |
| 5. 会社の公表情報を見る | 採用ページ、サステナビリティ情報、社内の人事制度の案内 | 副業を認めているか、条件は何か |
手順5について補足します。厚生労働省のガイドラインは2022年7月の改定で、副業・兼業を認めているかどうかや、条件付きで認める場合はその条件を、会社のホームページなどで公表することを企業に推奨するようになりました。義務ではないので載っていない会社もありますが、自社が採用ページなどで「副業可」と打ち出していないか一度見ておくと、社内で相談するときの材料になります。
手順2は見落としやすいポイントです。「他社に雇用されること」だけを対象にした条文もあれば、ブログやフリマ販売のような個人の事業まで含めて届出を求める条文もあります。株式投資のような資産運用が副業に当たるかについては、株式投資は副業になる?就業規則・住民税・インサイダーの3点で会社員が確認することで整理しています。
許可制・届出制の会社で申請するときに書くこと
申請書や届出の様式が会社で決まっていれば、それに従います。様式がない、または自由記述欄が大きい場合は、会社が気にする4つの場面に先回りして答える形で書くと、判断してもらいやすくなります。厚生労働省のガイドラインで会社が確認する事項として挙げられている内容を、申請する側の目線で並べ直しました。
| 書く項目 | 書き方の例 | 会社が何を見ているか |
|---|---|---|
| 副業先・事業の内容 | 「個人でWeb記事の執筆を受注(クラウドソーシング経由)」 | 競業・信用への影響 |
| 従事する業務 | 「旅行・料理ジャンルの記事作成。本業の業界の記事は受けない」 | 企業秘密の漏洩・競業 |
| 契約の形態 | 「業務委託(雇用契約ではない)」 | 労働時間の通算が必要か |
| 作業する時間・量 | 「平日夜に1時間程度、週5時間以内。土日の一部」 | 本業への支障・健康 |
| 期間 | 「〇年〇月から1年間。継続時は再申請」 | 状況の変化を把握できるか |
| 本業との切り分け | 「本業のPC・社用アカウント・顧客情報は使わない」 | 企業秘密・信用 |
ポイントは、副業先がアルバイトなどの雇用か、業務委託かをはっきり書くことです。雇用の場合、労働基準法38条により本業と副業の労働時間は通算して扱われるため、会社側も時間の把握が必要になります。業務委託の場合は通算の対象になりませんが、働きすぎで本業に支障が出れば4つの場面の①に当たり得る点は同じです。業務委託で受けるときの契約書の見方は、副業の業務委託契約書はどこを見る?サイン前に確認する9か所のチェックリストにまとめています。
申請が通らなかった場合は、理由を聞いてください。「同業だから」なら業界を変える、「時間が長いから」なら量を減らす、というように、4つの場面のどれに当たるとされたかがわかれば、調整の余地が見えてきます。
「禁止」のまま黙って始める前に考えたいこと
副業の相談を受けていると、「どうせ禁止規定は無効になりやすいのだから、黙って始めてしまえばいい」という考えを耳にします。山崎としては、次の3点を理由にすすめていません。
① 会社に知られる経路は税金と社会保険に残る
住民税の天引き額のずれや、副業先で社会保険に加入した場合の手続きなど、会社が副業に気づくきっかけは仕組みとして残っています。住民税を「自分で納付」にしても本業から天引きされるケースは、住民税を普通徴収にしても副業が会社にバレる5つのケースで、社会保険については副業で社会保険料は上がる?本業の扶養と「二以上事業所勤務」を整理で詳しく解説しています。
② 問題になるのは副業の中身より「隠していたこと」になりやすい
副業の内容自体は4つの場面に当たらないものでも、許可や届出の手続きを飛ばしていたこと、あとから確認されたときに説明が食い違ったことが、信頼関係の問題として扱われる場合があります。最初に申請していれば何も起きなかったはずの副業で、職場の居心地を悪くするのはもったいないことです。
③ 「会社にバレない副業」という勧誘は、それ自体が警戒サイン
山崎正義が300万円の被害を受けた頃から、怪しい副業の広告には「会社にバレない」「就業規則に引っかからない」という言葉がセットで使われてきました。バレないことを売りにする案件は、裏を返せば「人に相談されると困る」案件であることが少なくありません。勧誘された副業が安全かどうかの見分け方は、安全な副業の探し方を参考にしてください。
公務員は就業規則ではなく法律で制限されている
ここまでの話は民間企業の会社員向けです。公務員の場合は、国家公務員法(103条・104条)や地方公務員法(38条)で、営利企業の役員を兼ねることや、報酬を得て他の事業・事務に従事することが原則として制限され、許可が必要とされています。民間の裁判例の考え方をそのまま当てはめることはできないので、所属する組織の服務担当に確認してください。
副業を始める前のセルフチェック表
| チェック項目 | はい/いいえ | 「いいえ」のときにすること |
|---|---|---|
| 就業規則の副業に関する条文を読んだ | □ | 社内ポータル・人事で就業規則を確認する |
| 自社が禁止・許可制・届出制・定めなしのどれかわかる | □ | 条文の文言と別規程・申請様式を確認する |
| 副業が本業の勤務時間・休息時間に食い込まない | □ | 作業時間を減らす、曜日を限定する |
| 本業の顧客・情報・設備を使わない | □ | 副業の内容を変える |
| 本業と同じ業界・取引先と重ならない | □ | 業界を変える、または事前に会社へ相談する |
| 必要な許可・届出を出した | □ | 始める前に出す |
| 副業の収入の税金(確定申告・住民税の申告)を把握している | □ | 20万円ルールと住民税の申告を確認する |
最後の項目の税金については、副業の確定申告入門|「20万円ルール」の正しい意味と住民税の申告で整理しています。
公務員の副業で何が承認されうるのかは、2026年4月の見直しを含めて公務員の副業の線引きで整理しています。
よくある質問
Q1. 就業規則に「副業禁止」とあります。それでも副業をしてよいのですか?
「禁止」とあっても、副業のすべてを一律に禁じる規定がそのまま有効とされるとは限らない、というのが厚生労働省の考え方や裁判例の傾向です。ただし、規定がある以上、無断で始めれば規律違反として扱われる可能性があります。まず許可を得る手続きがないかを確認し、会社に相談するのが安全です。
Q2. ブログやフリマアプリでの販売も「副業」に当たりますか?
就業規則の書き方によります。「他の会社に雇用されること」だけを対象にしている条文もあれば、「自ら事業を営むこと」まで含めている条文もあります。不用品を売る程度なら事業に当たらないと考えるのが一般的ですが、継続的に仕入れて販売する場合は事業と見られやすくなります。迷ったら届け出ておくほうが後々の説明が楽です。
Q3. 副業の申請をしたら、上司や同僚に知られてしまいますか?
申請の回付先は会社によって違います。人事部門だけで扱う会社もあれば、直属の上司の承認を経る会社もあります。気になる場合は、申請前に人事部門へ「副業の申請はどのような流れで承認されるか」を確認しておくと安心です。
Q4. 許可されなかった副業を続けていたら、どうなりますか?
会社の懲戒規定に基づいて処分の対象になる可能性があります。処分が有効かどうかは副業の内容や本業への影響によって個別に判断されますが、「不許可を知りながら続けた」という事情は不利に働きやすいと考えてください。不許可の理由に納得できない場合は、続ける前に下の相談先に相談することをおすすめします。
相談先まとめ
| 相談先 | こんなときに |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内) | 副業を理由に処分や不利益な扱いを受けた、就業規則の扱いに疑問がある |
| 法テラス(0570-078374) | 弁護士への相談を検討したい、費用が心配 |
| 日本弁護士連合会・各地の弁護士会 | 処分の有効性など、具体的な法的判断が必要 |
| 消費者ホットライン(188) | 「会社にバレない」とうたう副業にお金を払ってしまった |
| 警察相談専用電話(#9110) | 副業の勧誘で脅された、金銭を要求されている |
※本記事は2026年9月時点の公開情報(厚生労働省のモデル就業規則・副業・兼業の促進に関するガイドライン等)をもとにした一般的な解説で、個別の事案についての法的判断ではありません。実際の扱いは、お勤め先の就業規則と個別の事情によって異なります。
山崎から一言
副業歴8年のなかで感じるのは、就業規則でつまずく人の多くが「規定そのもの」ではなく「黙って始めたこと」で苦しんでいる、ということです。会社が本当に気にしているのは、本業に支障が出ないか、情報が漏れないか、信用に傷がつかないか、の3つか4つしかありません。そこに先回りして答える申請ができれば、思っているより話は進みます。急がなくていいので、まずは自分の会社の条文を1回読むところから始めてみてください。
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