不動産デジタル証券(セキュリティトークン)とは|仕組み・流動性・リスクを整理

不動産デジタル証券(セキュリティトークン)とは|仕組み・流動性・リスクを整理

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「デジタル証券」「セキュリティトークン」という言葉を、証券会社や銀行の案内で見かけるようになりました。山崎の副業相談室にも「不動産に10万円から投資できると聞いたのですが、これは大丈夫なものですか」という質問が届きます。結論から書きます。不動産デジタル証券は、法律上きちんと位置づけられた有価証券の一種です。怪しい仕組みではありません。ただし「少額で不動産に投資できる」代わりに「途中で売りにくい」という、はっきりした引き換え条件があります。

山崎正義は副業詐欺で300万円の借金を負い、そこから130件以上の案件を調査してきました。その経験から言うと、新しい金融商品でつまずく人の多くは、商品が悪かったからではなく「自分が何を引き換えに差し出しているのかを知らないまま申し込んだ」ために困っています。この記事では、仕組み・流動性・リスク・税金の順にフラットに整理します。株式のほうから順を追って学びたい方は、先に株式投資の始め方ロードマップ|口座開設から税金・詐欺対策まで5ステップで整理を読んでいただくほうが入口として穏やかです。

目次

結論:少額で不動産に投資できる代わりに、途中で売りにくい

この記事で伝えたいことを3行にまとめます。

  • 正体は有価証券。ブロックチェーン(分散型台帳)で権利の記録・移転を行う点が新しいだけで、金融商品取引法のもとで発行・販売されている
  • いちばんの制約は流動性。株式のように「今日売って明日現金化」ができる前提の商品ではない。原則は満期(償還)まで持つつもりで検討するもの
  • 元本は保証されない。対象不動産の収益や資産価値、不動産市況・金利の影響で、取引価格や償還される金額が下がることがある

「新しいから危ない」でも「大手が扱っているから安心」でもありません。正しくは「制度としては整っている。ただし換金のしやすさを差し出している」です。この一点を最後まで意識して読んでください。

仕組み:何が「デジタル」になっているのか

まず用語を整理します。セキュリティトークン(ST)の「セキュリティ」は安全という意味ではなく、「有価証券」を指す securities のほうです。ここを取り違えたまま「安全なトークン」と理解している方が実際にいます。

デジタルなのは「権利の記録の仕方」

不動産デジタル証券は、オフィスビルや物流施設などの不動産を裏づけに発行される有価証券です。投資家が持つのは不動産そのものではなく、その不動産から生じる収益を受け取る権利です。従来の有価証券は証券保管振替機構(ほふり)の振替制度で管理されますが、STではブロックチェーン等の技術を使った基盤の上で、誰がどれだけ持っているかが記録・移転されます。

2020年施行の改正金融商品取引法で「電子記録移転権利」として位置づけられ、取り扱うには金融商品取引業の登録が必要になりました。つまり暗号資産(仮想通貨)とは別のもので、値動きを狙って短期売買するために作られた商品でもありません。似た響きの言葉で勧誘してくる相手がいたら、この違いを確認してください。

REIT・不動産クラウドファンディングとの違い

「不動産に少額で投資できる」商品は他にもあります。混同されやすいので、性格の違いを表にします。

種類買い方・売り方対象の見え方換金のしやすさ
J-REIT(上場不動産投資信託)証券取引所で株式と同じように売買複数物件をまとめて運用(分散されている)取引時間中ならその場で売却注文を出せる
不動産デジタル証券(ST)取り扱う金融機関を通じて募集時に申込。売却は限定的物件が特定されていることが多く、中身が見えやすい低い。原則は償還まで保有する前提
不動産クラウドファンディング事業者のサイトで募集時に申込物件が特定されていることが多い低い。多くは運用期間中の解約に制限あり
現物の不動産投資売買契約。ローンを組むことが多い自分の物件そのもの低い。売却に数か月かかることもある

STは「J-REITほど売りやすくはないが、現物ほど手間はかからない」という中間に位置します。分散という点では、複数物件をまとめたREITのほうが有利です。1本のSTは物件が絞られている分、その物件の事情がそのまま自分の損益に効きます。銘柄数も限られており、STだけで分散を組もうとすると無理が出ます。

なお、ここで言う不動産投資は「区分マンションを買って家賃収入を得ませんか」という勧誘とは別のものです。当サイトはその種の勧誘案件も調査しており、RENOSY(リノシー)は怪しい?口コミ・評判や不動産投資の実態を調査モンスターズマネーは怪しい?評判と不動産投資勧誘の実態を調査で扱っています。同じ「不動産」でも、契約の形も背負うものもまったく違いますので、混同しないでください。

流動性:ここが最大の分かれ目

検討するときに、いちばん先に理解しておくべきなのが流動性です。流動性とは「売りたいときに、妥当な価格で売れるか」という性質のことをいいます。

原則は「償還まで持つ」前提の商品

多くの不動産STは運用期間があらかじめ定められており、期間の終了時に物件を売却して投資家へ償還される設計です。運用期間中の途中売却は「原則できない」または「譲渡制限つきで限定的にできる」という扱いが一般的です。株式のように板があって、いつでも買い手が見つかる状態ではありません。

これは欠陥ではなく設計です。ただし投資家の側から見れば、投じた資金は運用期間のあいだ動かせないものとして扱う必要があるということになります。生活防衛資金や、数年以内に使う予定が決まっているお金を入れる先ではありません。

PTS(私設取引システム)が育つかは、これから

STを売買できる私設取引システム(PTS)の整備は進んでおり、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)などの市場を通じた売買の広がりが期待されています。ただし現状では、取り扱われている銘柄も参加者も限られます。「そのうち売れるようになるだろう」を前提に資金計画を立てるのは避けてください。売却できる場が用意されていることと、自分の売りたいタイミングで妥当な価格の買い手がいることは、別の話です。

加えて、流動性が低い商品は取引が成立するときの価格が振れやすいという性質があります。少ない注文で価格が動いてしまうためです。

リスクの整理:どこで損をしうるか

山崎正義がいつも読者にお願いしているのは、「利益の話より先に、損をする経路を数えてください」ということです。不動産STの場合、主に次の5つです。

リスク内容投資家側にできること
不動産の収益・価値の変動空室・賃料下落・修繕費の発生などで収益が減る。物件の評価額が下がる対象物件の用途・所在・稼働状況を目論見書で確認する
市場環境・金利不動産市況や金利動向により、取引価格や償還される金額が下落することがある運用期間の長さと自分の資金計画を突き合わせる
流動性リスク売りたいときに売れない、または不利な価格でしか売れない使う予定のない資金に限る。期間を跨げる金額に抑える
発行体・関係者の信用運用会社や関係する事業者の経営が悪化した場合の影響登録の有無と、誰が何を担っているかを確認する
基盤・事務のリスクブロックチェーン基盤や運営の不確実性により、受渡しや分配金の支払いが遅れる可能性「遅れうるもの」として、入金の予定に組み込まない

ここに手数料を足してください。購入時の手数料や運用報酬は商品ごとに異なり、手取りに直接効きます。「何に対して、いつ、いくらかかるのか」を申し込み前に自分の言葉で説明できるかを基準にしてください。説明できないうちは、まだ検討中の段階です。

損失の上限と、やめる条件を先に決めておく考え方は、株式でもSTでも共通です。まだ整理していない方は損切りとリスク管理の基本|資金管理ルールの作り方を先に読んでください。

税金:スキームで扱いが変わるので、目論見書で確認する

不動産STの分配金や売却損益がどの所得区分になるかは、その商品がどういう法的スキームで組まれているかによって変わります。受益証券発行信託の形をとるものでは、申告分離課税として源泉徴収され、同じく申告分離課税の対象である上場株式等との損益通算ができるという案内がなされているケースがあります。一方、匿名組合など他のスキームでは雑所得(総合課税)となる場合もあります。

つまり「不動産デジタル証券の税金はこうです」と一本に決められないということです。確認する場所は決まっていて、その商品の目論見書・契約締結前交付書面の税制の記載です。給与所得との損益通算はできないのが原則である点も含め、申し込み前に読んでください。

株式の税金の考え方(特定口座・源泉徴収・確定申告の要否)を先に押さえておくと、この手の書面がぐっと読みやすくなります。株の税金入門|特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?が土台になります。

申し込み前のセルフチェックと、勧誘の見分け方

制度として整った商品であっても、その名前を借りた勧誘は別に存在します。山崎正義のもとには「デジタル証券に投資すれば毎月分配が入る」とSNSで持ちかけられた、という相談も届いています。次の表を、申し込みの前に一度通してください。

確認項目見るところ危ないサイン
取扱業者の登録商号と金融商品取引業の登録番号を、金融庁の業者一覧と突き合わせる登録番号がない。グループ会社の登録を自社のものとして説明する
書面の有無目論見書・契約締結前交付書面が事前に渡されるか「あとで送る」「アプリ内で説明する」で書面が出てこない
リスクの記載量元本割れ・流動性・手数料が具体的に書かれているか利回りの数字が大きく、リスクの記載が極端に短い
換金の条件運用期間・途中売却の可否・売却時の制限「いつでも解約できます」と口頭で言われるが、書面にその記載がない
勧誘の経路誰から、どこで話が来たかSNSのDM、マッチングアプリ、知人経由の「特別枠」

とくに最後の行です。本来の不動産STは、証券会社や銀行が取り扱い、募集の情報も公開されています。SNSのDMで個別に持ちかけられ、送金先が個人名義だったり、暗号資産での入金を求められたりする時点で、それはもう別の話になっています。典型的な手口の整理は投資詐欺の典型手口と見分け方|「絶対儲かる株情報」が届いたときの確認手順にまとめてあります。

山崎の見解:STは「入口」ではなく「余力の置き場所」

山崎正義の見方を書きます。不動産デジタル証券は、投資を始める最初の一歩に向いている商品ではありません。理由は単純で、途中で売れないからです。始めたばかりの時期は、自分がどれくらいの値動きに耐えられ、どれくらいの期間なら資金を寝かせておけるのかが、まだ自分でも分かっていません。その状態で数年動かせないお金を作ると、想定外の出費が来たときに身動きが取れなくなります。

順番としては、換金しやすいものから慣れていくほうが穏やかです。その考え方はインデックス投資と個別株投資の違い|初心者はどちらから始めるかの考え方で書いたことと同じで、「自分が説明できる範囲」から広げるのが原則です。STを検討するのは、生活防衛資金があって、数年使わない余力がはっきりしてからで遅くありません。

不動産デジタル証券を取り扱うサービスは複数あり、たとえば三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社が運営する「ALTERNA(オルタナ)」もそのひとつです。同社は金融商品取引業者として登録を受けている事業者ですが、登録があることは登録があるという事実にすぎず、値動きや元本を保証するものではありません。最低投資額は原則10万円で、下のリンクの先で行うのは資料請求や無料登録ではなく、実際の投資の申し込みです。対象物件・運用期間・手数料・途中売却の条件は、公式の商品資料と目論見書でご自身で確認してください。

山崎正義は、この商品を「やめておいたほうがいい」とも「やったほうがいい」とも書きません。10万円を数年動かせない資金として出せるかどうか、そこが判断の分かれ目で、それは読者ご自身の家計にしか答えがないからです。迷っている段階なら、申し込まないという判断も、同じだけ正当です。

よくある質問

Q. セキュリティトークンは暗号資産(仮想通貨)と同じものですか?
A. 別のものです。セキュリティトークンの「セキュリティ」は有価証券という意味で、金融商品取引法のもとで発行・販売されます。ブロックチェーンという共通の技術を使っている点だけが似ています。「デジタル証券に見せかけた暗号資産の勧誘」もあるため、取扱業者に金融商品取引業の登録があるかを確認してください。

Q. 途中でお金が必要になったら解約できますか?
A. 商品によりますが、運用期間中の途中売却は原則できない、または譲渡制限つきで限定的にできる、という設計が一般的です。「使う予定のない資金に限る」という前提で検討してください。口頭で「いつでも解約できます」と言われた場合は、書面のどこに書いてあるかを聞いてください。

Q. J-REITと比べて、どちらがよいのでしょうか。
A. 優劣ではなく性質の違いです。J-REITは取引所で売買できて分散も効いている一方、株式市場全体の値動きの影響を受けます。STは物件が特定されていて中身が見えやすい代わりに、換金しにくい。自分がどちらの不便を受け入れられるかで選ぶものです。

Q. 新NISAの枠で買えますか?
A. 商品や口座によって取り扱いが異なります。NISAの対象商品には要件があり、すべての金融商品が入るわけではありません。取扱金融機関の商品説明で、対象かどうかを確認してください。

Q. 「デジタル証券の特別枠がある」とSNSで案内されました。
A. 募集の情報は取扱金融機関が公開しています。個別のDMで「特別枠」「今だけ」と持ちかけられる形は、当サイトが調査してきた投資詐欺の入口と同じ構造です。相手の登録を確認し、金銭の話が出た時点で消費者ホットライン(188)に相談して構いません。

困ったときの相談先

相談先連絡先扱う内容
消費者ホットライン188契約トラブル全般
警察相談専用電話#9110詐欺被害の相談
法テラス0570-078374法的トラブルの相談窓口の案内
日本弁護士連合会各地の弁護士会弁護士への相談
金融庁 金融サービス利用者相談室0570-016811無登録業者・金融商品の勧誘に関する相談

山崎から一言

新しい仕組みが出てくると、「よく分からないから危ない」と全部避ける人と、「新しいから先に乗ったほうが得だ」と急ぐ人に分かれます。山崎正義が300万円を失ったときは、後者でした。急いだ理由は、その商品を理解していたからではなく、理解していないことを認めたくなかったからです。不動産デジタル証券は、仕組みも書面も公開されている商品です。読んで分からなければ、分かるまで申し込まなくていい。それだけのことだと思っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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