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こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「パートの時間を週20時間に増やすと社会保険に入ることになる。手取りが減るなら、扶養内に収めたほうがいいのでは?」——会社員の家庭から、こうした相談がよく届きます。答えを出すには、払う保険料と将来増える年金を同じ物差しで並べる必要があります。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時は「いくら増えるか」だけを見て、「何を払って、何が戻るのか」を数字で確かめていませんでした。この記事では、短時間で働く人が厚生年金に入ると老後の年金がいくら増えるのかを、日本年金機構の計算式で試算し、あわせて2026年10月に変わった加入条件と、勤め先の人数でこれから変わる加入時期を、厚生労働省・日本年金機構の公表資料をもとに整理します。
会社員が副業でアルバイトを掛け持ちする場合の保険料の話は副業で社会保険料は上がる?本業の扶養と「二以上事業所勤務」を整理で説明しています。この記事はパート・アルバイトで働く本人が、新しく厚生年金に入るときの話に絞ります。
結論:週20時間以上なら、2026年10月から賃金の多い少ないに関係なく加入対象に。年金は「標準報酬×加入月数」に比例して増える
先に要点をまとめます(2026年10月14日時点で確認できた内容です)。
- 月額8.8万円以上という賃金要件は、2026年10月1日に撤廃された:いま残っている条件は、週の所定労働時間20時間以上・勤め先の規模・2か月を超える雇用見込み・学生でないこと、です
- 勤め先の規模の条件は、2027年10月から段階的に下がる:いまは従業員51人以上の企業が対象で、2035年10月には10人以下の企業も対象になります
- 厚生年金に入ると、基礎年金に「報酬比例部分」が上乗せされる:上乗せ額は、平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数で計算します
- 標準報酬月額8.8万円で10年入ると、上乗せは年約5.8万円(月約4,800円)の目安:これが一生続く終身の年金です(下の試算の前提を参照)
- 払う側は、同じ条件で本人負担が月8,052円:これに健康保険料が加わります
| 項目 | 2026年9月まで | 2026年10月から |
|---|---|---|
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 | 20時間以上(変更なし) |
| 賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上 | 要件なし(撤廃) |
| 勤め先の規模 | 従業員51人以上 | 51人以上(2027年10月から段階的に縮小) |
| 雇用の見込み | 2か月を超える | 2か月を超える(変更なし) |
| 学生 | 対象外(定時制・通信制などは対象) | 同じ |
出典:日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」、厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「社会保険加入の要件」
2026年10月に何が変わったのか:「106万円」の基準がなくなった
これまでの「月額8.8万円以上」は、年に直すと約106万円です。いわゆる「106万円の壁」の正体がこの要件でした。
日本年金機構は、撤廃の理由を、全都道府県で最低賃金が時給1,016円を超え、週20時間以上働けば所定内賃金が自然に月8.8万円以上になるため、と説明しています。つまり、判断の物差しが「いくらもらうか」から「週何時間の契約か」に一本化されたということです。
「所定労働時間」は契約書の時間で見る
週20時間は、就業規則や雇用契約書に書かれた通常の勤務時間で判断します。残業は原則として含みませんが、厚生労働省の特設サイトは、残業が常に発生している場合は含めることがあるとしています。「契約は週18時間だけれど、毎週22時間働いている」という人は、勤め先に確認してください。
最低賃金の減額特例を受けている人は例外
最低賃金法の減額特例の許可を受けていて、所定内賃金が月8.8万円未満の人は、原則として加入対象外です。ただし、本人が申し出れば加入できます(上記の日本年金機構のお知らせ)。
勤め先の人数で、加入のタイミングが変わる
2025年に成立した年金制度改正法(令和7年法律第74号)で、企業規模の条件は10年かけて段階的に縮小・撤廃されることになりました。厚生労働省の特設サイトでは、次のように案内されています。
| 勤め先の従業員数 | 短時間労働者が加入対象になる時期 |
|---|---|
| 51人以上 | すでに対象 |
| 36〜50人 | 2027年10月から |
| 21〜35人 | 2029年10月から |
| 11〜20人 | 2032年10月から |
| 10人以下 | 2035年10月から |
出典:厚生労働省「社会保険加入の要件」、厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
ここでいう従業員数は、パートの人数をそのまま数えるのではなく、フルタイムなどで厚生年金に入っている人の数が基準です(日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」)。自分の勤め先がどこに当たるかは、勤め先の人事・総務に聞くのが確実です。
厚生年金に入ると、年金はいくら増えるのか
老後の年金は、全員が受け取る「老齢基礎年金」と、厚生年金に入っていた人だけが受け取る「老齢厚生年金(報酬比例部分)」の2階建てです。短時間で働く人が厚生年金に入ると、2階部分が加入した期間のぶんだけ上乗せされます。
報酬比例部分(2003年4月以後の期間)= 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
「平均標準報酬額」は、加入期間中の標準報酬月額と賞与額の合計を、加入月数で割った額です。出典:日本年金機構 用語集「報酬比例部分」
試算:標準報酬月額8.8万円・賞与なしの場合
厚生年金の標準報酬月額は、いちばん下の等級が8.8万円です(報酬月額9.3万円未満)。週20時間前後で働く人の多くは、この等級かその近くになります。
| 加入した期間 | 報酬比例部分の目安(年額) | 月あたり |
|---|---|---|
| 5年(60か月) | 約2.9万円 | 約2,400円 |
| 10年(120か月) | 約5.8万円 | 約4,800円 |
| 20年(240か月) | 約11.6万円 | 約9,600円 |
計算例(10年):88,000円 × 5.481/1000 × 120か月 = 57,879円。この試算は、過去の報酬を今の価値に直す「再評価」や、毎年度の年金額改定を入れていない簡略版です。実際の見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認してください。
払う保険料と並べてみる
令和8年度の保険料額表では、標準報酬月額8.8万円の厚生年金保険料は全額16,104円、本人負担(折半額)は8,052円です(日本年金機構「保険料額表」)。10年続けると本人負担は約96.6万円です。
年に約5.8万円の上乗せで割ると、受け取り始めてからおよそ17年で、払った本人負担分に届く計算です。65歳から受け取るなら82歳前後が目安になります。ただし、これは厚生年金保険料と報酬比例部分だけを比べた単純な計算です。実際には次の点で、人によって見え方が変わります。
- いま国民年金(第1号)の人:厚生年金に入ると、月17,920円(令和8年度)の国民年金保険料を自分で払う必要がなくなります。厚生年金の本人負担のほうが少ない場合もあります
- いま配偶者の扶養(第3号)の人:これまで国民年金保険料の負担はなかったので、保険料はまるごと新しい負担です。そのかわり、2階部分の年金が増えます
- 健康保険にも入る:保険料が加わる一方、病気やけがで休んだときの傷病手当金、出産手当金が受け取れるようになります
- 障害・遺族の保障も厚くなる:厚生年金には、障害厚生年金・遺族厚生年金があります
小さな会社の人向けに、保険料を軽くする仕組みがある
2026年10月から「保険料調整制度」が始まりました。厚生労働省の説明では、従業員50人以下の企業などで新たに加入対象になる短時間労働者のうち、標準報酬月額12.6万円以下の人について、事業主が負担割合を増やして本人負担を軽くでき、事業主が追加で負担した分は制度から支援される仕組みです。期間は3年間です(厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」)。
日本年金機構の計算方法のページでは、利用開始から24か月目までと、25〜36か月目で軽減の割合が分かれ、3年目は軽減割合が半分になると説明されています(日本年金機構「保険料調整制度を利用した場合の保険料額の計算方法」)。使うかどうかは事業主が決めるので、勤め先が使う予定かを聞いてみてください。
会社員の家庭で確認しておきたい4つのこと
- 雇用契約書の「週の所定労働時間」を見る:加入するかどうかは、この数字でほぼ決まります
- 勤め先の従業員数(厚生年金の加入者数)を聞く:いつから自分が対象になるかがわかります
- ねんきん定期便で、いまの加入記録と見込額を確認する:上の試算より正確な数字が出ます
- 配偶者の会社の家族手当の条件を確認する:「配偶者が社会保険の扶養に入っていること」を条件にしている会社があります。年金と保険料だけで比べると、ここを見落とします

「扶養を外れると損」「入ったほうが得」のどちらも、人によって答えが変わります。山崎が言えるのは、払うものと受け取るものを同じ表に並べてから決めてほしい、ということだけです。
「年金が減るから」と投資商品をすすめる話に注意する
制度が変わる時期は、変更そのものを材料にした勧誘が増えます。山崎正義が130件以上の副業・投資案件を調べてきた経験では、「年金だけでは足りない」「いまのうちに」と不安をあおり、高額な商品や情報商材に話をつなげる手口は珍しくありません。
| よくある言い方 | 確かめること |
|---|---|
| 「社会保険に入ると手取りが減るので、その分を投資で取り戻しましょう」 | 手取りの減少と、将来の年金・保障の増加はセットです。減る面だけを強調する説明は、話の半分しかしていません |
| 「年金は破綻するので払うだけ損です」 | 年金額の決まり方は公表されています。保険料の負担は加入条件に当てはまれば義務で、自分で選べるものではありません |
| 「月利◯%で年金の不足分を補えます」 | 利回りを約束する投資の勧誘は、それだけで注意のサインです。業者が金融庁に登録しているかを先に確かめてください |
年金額の決まり方そのものは株高でGPIFの運用が好調だと自分の年金は増える?で、受け取りを遅らせる選択肢は年金の繰下げ受給は70歳で何%増える?で整理しています。
山崎の見解:保険料は「消えるお金」ではない。ただし、元を取れるかは長生き次第
山崎正義は、厚生年金の保険料を「取られるだけのお金」とは考えていません。払った分に比例して一生続く年金が増え、病気や障害、遺族の保障もつく仕組みだからです。一方で、上の試算のとおり、払った分を年金だけで取り戻すには長い時間がかかります。損得を一言で決められるものではありません。
だからこそ、順番が大事です。まず、自分がいつ加入対象になるのかを確かめる。次に、手取りの変化と将来の年金・保障を同じ表に並べる。投資で何かを補うかどうかを考えるのは、そのあとで十分です。300万円を失った頃の山崎は、この順番が逆でした。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「『扶養内で働く方がお得』はホント?」
よくある質問
Q1. 週20時間未満なら、厚生年金には入らなくていいのですか?
短時間労働者としての加入条件は、週の所定労働時間20時間以上です。ただし、フルタイムの4分の3以上働く人は、短時間労働者の条件とは別に、もともと加入の対象です。契約の時間が20時間未満でも、実際の勤務が常に20時間を超えている場合は扱いが変わることがあるので、勤め先に確認してください。
Q2. 賃金要件がなくなったので、月5万円しかもらっていなくても加入しますか?
週20時間以上の契約で、勤め先の規模などの条件を満たせば加入対象です。ただ、最低賃金以上で週20時間働けば、所定内賃金は月8.8万円以上になるのが前提の制度です。月5万円になるのは、通常は週20時間未満の契約の場合です。
Q3. 掛け持ちのパートを合計して週20時間なら、加入しますか?
短時間労働者の条件は、勤め先ごとに判断します。2か所の合計ではなく、それぞれの勤め先で週20時間以上かどうかを見ます。複数の勤め先で加入する場合の扱いは副業で社会保険料は上がる?で説明しています。
Q4. 10年入ったら、年金は本当に年5.8万円増えますか?
この記事の数字は、標準報酬月額8.8万円・賞与なしで、再評価や年金額改定を入れない簡略版の目安です。実際の額は、加入期間中の報酬や受け取る年度で変わります。ねんきん定期便・ねんきんネットの見込額を確認してください。
Q5. 保険料調整制度は、自分で申し込めますか?
この制度は事業主が利用を申し出るものです。対象になるか、勤め先が使う予定かは、勤め先の担当者に確認してください。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
自分の加入条件や年金の見込額は、勤め先の担当者、または近くの年金事務所(日本年金機構)に確認してください。
山崎から一言



「扶養内がお得」「入ったほうが得」という言葉は、どちらも前提を省いています。まずは雇用契約書の労働時間と、ねんきん定期便の見込額を手元に並べてください。数字がそろえば、あわてて決める必要はなくなります。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年10月14日時点で厚生労働省・日本年金機構が公表している資料にもとづきます。個別の加入判断や年金額は、勤め先または年金事務所にご確認ください。












