決算書の超入門|売上・営業利益・EPSの見方をやさしく整理

決算書の超入門|売上・営業利益・EPSの見方をやさしく整理
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この記事について

「決算書を見たほうがいいと言われたけれど、PDFを開いたら数字が何十行も並んでいて、どこを見ればいいのかわからない」——山崎の副業相談室に届く投資関連の質問のなかでも、これはかなり多いほうです。結論から書きます。最初に見るのは「売上高」「営業利益」「EPS(1株当たり利益)」の3つだけで十分です。この3つは、上から順に「どれだけ売ったか」「本業でどれだけ稼いだか」「それは株1株あたりいくらか」という流れでつながっています。

ただし、先に大事なことを書いておきます。決算書が読めることと、その株を買うべきかどうかを判断できることは、別の話です。決算書は過去の実績を決められた形式でまとめた記録であり、将来の株価を教えてくれる資料ではありません。ここを取り違えると、「決算を読めば勝てる」という説明に足をすくわれます。

山崎正義は投資で一発逆転を狙い、300万円を失った経験があります。当時、数字はまったく見ていませんでした。見ていたのは他人が出してきた「上がる根拠」だけです。この記事では、決算書のどこを・どの順番で見るのかを整理したうえで、数字だけではわからないことの線引きまで書きます。

結論:決算書は「売上 → 利益 → 1株あたり」の順に読む

細かい項目に入る前に、全体像を表で押さえてください。最初に覚えるのはこの3行だけです。

項目 何を表しているか 読み取れること
売上高 商品やサービスを売って得た金額の合計 事業の規模と、その伸び縮み
営業利益 売上高から、原価と販売・管理の費用を引いた残り 本業でどれだけ稼げているか
EPS(1株当たり利益) 純利益 ÷ 発行済株式数 会社の利益が、株1株あたりいくらにあたるか

売上高は「入口」、営業利益は「本業の実力」、EPSは「株主から見た取り分」。この3点をこの順で追うだけで、決算書の骨格はつかめます。難しい指標を先に覚える必要はありません。

決算書はどこで見られるのか

日本株なら「決算短信」から

日本の上場企業が公表する資料はいくつかありますが、最初に開くなら決算短信が適しています。企業の公式サイトの「IR情報」「投資家情報」というページか、日本取引所グループの適時開示情報閲覧サービス(TDnet)から誰でも無料で読めます。証券口座の銘柄画面からたどれる場合もあります。

資料 性格 初心者にとっての位置づけ
決算短信 決算内容を早くまとめた速報的な資料 まずはここから。1枚目(サマリー)に主要な数字が集約されている
有価証券報告書 法律に基づく詳細な報告書 事業内容やリスク情報まで載る。慣れてから
決算説明資料 企業が投資家向けに作る説明用スライド 図表が多く読みやすいが、会社の見せたい形になっている点は意識する

決算短信は1枚目のサマリーだけで、売上高・営業利益・経常利益・純利益・EPSが横一列に並んでいます。しかも前年同期比の増減率まで付いています。最初のうちは、この1枚目を眺めるだけでも十分に意味があります。

公表の時期は決められた期日があるわけではありませんが、東京証券取引所は決算期末後45日以内の開示を要請しています(30日以内が望ましいとされています)。3月期決算の会社の本決算が5月上旬に集中するのは、このためです。

米国株なら「10-K」「10-Q」

米国株の場合、年次の報告書が10-K、四半期の報告書が10-Qという名前で、米国証券取引委員会(SEC)のEDGARというデータベースで公開されています。日本語ではありませんが、探しているのはRevenue(売上高)、Operating income(営業利益)、EPSの3語なので、単語さえ覚えれば数字の位置は追えます。

なお米国株は決算発表の反応が為替の影響も受けます。円建てで見える金額がどう動くかは米国株取引の基本|取引時間・為替・手数料の仕組みのほうで整理していますので、あわせて読んでみてください。

売上高:まず「規模」と「伸び」を見る

売上高は、商品やサービスを提供して得た金額の合計です。トップラインとも呼ばれ、損益計算書のいちばん上に来ます。

見るポイントはシンプルで、①いくらか(規模)②前年同期と比べて増えたか減ったか(伸び)の2点です。決算短信のサマリーには増減率が併記されているので、自分で計算する必要はありません。

注意したいのは、売上高が増えていることと、儲かっていることは同じではないという点です。値引きして数を売れば売上高は増えますし、大きな買収をすれば売上高は一気に跳ね上がります。売上だけを見て「成長している」と決めてしまうと、その中身を見落とします。だから次の行を見ます。

営業利益:本業でどれだけ稼げているか

利益は段階に分かれている

決算書の「利益」はひとつではありません。売上高から費用を段階的に引いていくため、複数の利益が縦に並びます。名前が似ていて混乱しやすいので、表で整理します。

段階 計算のイメージ 意味
売上総利益(粗利) 売上高 − 売上原価 商品そのものからいくら残ったか
営業利益 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 本業でいくら稼いだか
経常利益 営業利益 ± 営業外収益・費用 本業に、利息や為替などの財務的な損益を加えた結果
当期純利益 経常利益 ± 特別損益 − 税金 最終的に会社に残った利益

この中で営業利益がいちばん「その会社の商売の実力」に近い数字だと考えてください。販売費及び一般管理費(販管費)には、人件費・広告費・家賃など、商売を回すための費用が入ります。営業利益は、それらをすべて払ったうえで残った金額です。

営業利益率という見方

金額そのものは会社の規模で大きく変わるため、規模の違う会社を比べたいときは営業利益率(営業利益 ÷ 売上高)を使います。売上100億円で営業利益5億円なら5%です。

ただし、この数字に「何%以上なら良い」という共通の基準はありません。利益率の水準は業種によって大きく違います。大量に仕入れて薄く売る小売業と、いったん作れば複製コストの小さいソフトウェア業では、そもそも構造が違うからです。比べるなら、同じ業種の会社どうし、あるいは同じ会社の過去の数字と比べるのが基本になります。

経常利益・純利益との違いに注意

ニュースで「最終利益が過去最高」と報じられていても、中身を見ると本業ではなく資産の売却益などの特別利益で膨らんでいることがあります。逆に、本業は堅調でも特別損失が出て純利益が落ち込む年もあります。純利益は一度きりの要因で大きく振れるため、営業利益と並べて見るのが安全です。

EPS(1株当たり利益):株主から見た取り分

計算はシンプル

EPSはEarnings Per Shareの略で、日本語では1株当たり当期純利益といいます。計算式は次のとおりです。

項目 内容
計算式 当期純利益 ÷ 発行済株式数(自己株式を除く期中平均)
純利益100億円/株式数1億株 → EPSは100円
単位 「円」。米国株なら「ドル」

会社全体の利益額は規模によってまったく違いますが、EPSは1株という共通の単位に直した数字なので、株を持つ側の感覚に近くなります。決算短信のサマリーにも記載されているので、自分で割り算する必要はありません。

EPSは利益以外の理由でも動く

ここが見落とされやすいところです。EPSは「純利益 ÷ 株式数」なので、分母である株式数が変われば、利益が同じでもEPSは動きます。

  • 株式分割……1株を2株に分けると株式数が倍になり、EPSは理論上おおむね半分になります。会社の価値が半分になったわけではありません
  • 自己株式の取得(自社株買い)……会社が自社の株を買い戻すと、計算対象の株式数が減り、EPSは押し上げられます
  • 新株発行(増資)……株式数が増えるため、1株あたりの取り分は薄まります(希薄化)

ですから「EPSが伸びた=本業が伸びた」とは限りません。EPSが増えていたら、その理由が利益の増加なのか、株式数の減少なのかを、売上高・営業利益と並べて確認する。この一手間が、数字に振り回されないための基本になります。

EPSは他の指標の材料にもなる

EPSは単体で使うだけでなく、株価と組み合わせて割安・割高を考えるときの材料にもなります(株価 ÷ EPS で計算するPERなど)。ただし、その手前のEPSの意味があいまいなままでは、計算結果も解釈できません。まずはEPSそのものを、売上高・営業利益とセットで読む習慣をつけるほうが先です。

なお、利益がそのまま株主に配られるわけではない点も押さえておいてください。配当がどう決まり、いつ受け取れるのかは配当金と株主優待の仕組み|権利確定日・権利付最終日で扱っています。

数字を見るときの3つの注意点

注意点 理由
1期だけで判断しない 一時的な要因で数字は大きく振れる。3期程度の推移で見る
業種をまたいで比べない 利益率も成長率も、業種の構造で水準がまったく違う
会社の予想は「予想」として扱う 決算短信に載る通期予想は会社の見通しであり、確定した数字ではない

もうひとつ、決算内容と株価の関係についても書いておきます。良い決算が出れば株価が上がる、という単純な関係はありません。市場がすでにそれ以上を織り込んでいれば、増益でも株価が下がることは普通に起こります。決算書は企業の実績を知るための資料であって、値動きの予測装置ではありません。この線引きは、株価チャートの基本の読み方|ローソク足と出来高で書いたチャートの話と同じ構図です。

「決算で勝てる」とうたう勧誘に注意

決算書の読み方は、投資を学び始めた人が最初に触れやすいテーマです。だからこそ、高額な講座や情報商材、無登録業者の勧誘にも使われやすい領域だと、山崎正義の調査では確認されています。次のような説明が出てきたら、いったん立ち止まってください。

  • 「決算をこう読めば勝率◯%」のように、勝率や収益を保証・示唆している
  • 金融商品取引業の登録がない相手が、個別銘柄の売買を指示・助言してくる(無登録営業の可能性)
  • 「発表前の決算情報を持っている」とほのめかす(未公表の重要事実に基づく取引はインサイダー取引に該当するおそれがあります)
  • うまくいった過去の事例だけを並べ、外れた事例を示さない
  • 「今だけ」「先着◯名」と、高額な講座やツールの購入を急がせてくる
  • SNSやマッチングアプリで知り合った相手が、決算の話題から投資グループへ誘導してくる

決算資料は誰でも無料で読めます。断定はできませんが、「無料で公開されている情報の読み方」に高額な対価を求め、しかも数字で成果を約束してくる時点で、その説明は信頼できないと考えてよいでしょう。相手が登録業者かどうかは、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認できます。

副業歴8年・130件以上の調査経験から判断すると、「専門的で難しそうな知識」と「保証された数字」がセットで提示される構図は、分野を問わず繰り返し現れる典型的なパターンです。山崎正義が300万円を失ったときも、まさにその形でした。なお、そもそも会社員が株式投資をすることと就業規則の関係が気になる方は、株式投資は副業になる?会社員が知っておくべき基本を先に読んでおくと安心です。

セルフチェック表

チェック項目 確認できたか
気になる企業のIRページ、またはTDnetで決算短信を開いてみた
決算短信の1枚目で、売上高・営業利益・EPSの位置を確認した
売上高が増えていても利益が増えるとは限らない、と説明できる
営業利益が「本業の利益」だと理解している
純利益は特別損益で振れることがあると知っている
EPSは株式分割や自社株買いでも動くと理解している
利益率は業種によって水準が違うと理解している
決算が良くても株価が下がることはある、と理解している
勝率や利益を数字で保証してくる相手を信用していない

決算書の前後で何を学ぶかは、株式投資の始め方ロードマップで順番に並べています。

利益のうちどれだけを配当に回しているかという見方は、配当利回りと配当性向の読み方で扱っています。

決算書で読み取った利益を株価と結びつけて見る指標は、PERとPBRの見方で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 決算書は無料で読めますか?

A. 読めます。決算短信も有価証券報告書も、企業のIRページや日本取引所グループの適時開示情報閲覧サービス(TDnet)、金融庁のEDINETで公開されています。米国株の10-K・10-QもSECのEDGARで公開されています。「決算情報」を有料で売る、あるいは会員限定で配るという勧誘があれば、その前提を疑ってください。

Q2. 営業利益と経常利益は、どちらを見ればいいですか?

A. まずは営業利益です。本業でどれだけ稼いだかが最もはっきり出るためです。経常利益は、そこに受取利息・支払利息・為替差損益といった財務面の損益を加えたものなので、両者に大きな差があるときは「本業以外で何が起きているか」を見るサインとして使うとよいでしょう。

Q3. EPSが高い会社ほど良い会社ということですか?

A. そうとは限りません。EPSの金額は発行済株式数の設定によって変わるため、水準そのものを会社間で比べてもあまり意味がありません。同じ会社の推移を追う、あるいは株価と組み合わせて考えるほうが実用的です。EPSが高いこと自体が良し悪しを示すわけではない、と押さえてください。

Q4. 決算発表の直前に買っておけば有利ですか?

A. 有利とは言えません。決算発表の前後は値動きが大きくなりやすく、内容が良くても株価が下がる、悪くても上がるといったことが起こります。方向を事前に読むことはできません。「発表前に仕込めば取れる」という説明は、収益を示唆する表現として警戒してください。なお、未公表の重要事実を知って取引すればインサイダー取引に該当するおそれがあります。

Q5. 決算書が読めるようになれば、銘柄を選べるようになりますか?

A. 材料は増えますが、それだけで選べるようになるわけではありません。決算書は過去の実績の記録であり、将来を保証するものではないからです。決算書が読めることの一番の効き目は、「この会社は儲かっている」という他人の説明を、自分で確かめられるようになることです。山崎正義は、儲けるためというより断るために効く知識だと考えています。

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

また、記事中の会計項目の説明は一般的に用いられている整理を平易にまとめたものです。会計基準(日本基準・IFRS・米国基準など)によって表示される項目や名称は異なる場合があり、開示制度の内容も改正されることがあります。実際の資料については各企業の開示および各制度の公式情報をご確認ください。

相談先まとめ

相談先 連絡先・内容
消費者ホットライン 188(いやや)/契約トラブル全般
警察相談専用電話 #9110/詐欺被害の相談
法テラス 法的トラブルの無料相談窓口の案内
日本弁護士連合会 各地の弁護士会の相談窓口
金融庁 金融サービス利用者相談室/登録業者の確認

山崎から一言

決算書は、開いた瞬間に「自分には無理だ」と思わせる見た目をしています。けれど実際に必要なのは、上から3つの数字を追うことだけです。売上高、営業利益、EPS。この順に目を通す習慣がつくと、企業の話が急に具体的になります。

山崎正義が300万円を失ったとき、数字はひとつも見ていませんでした。見ていたのは「上がります」という言葉だけです。逆に言えば、数字を自分で確かめる習慣さえあれば、あの勧誘は途中で止まっていたはずです。

まずは自分が普段使っている商品やサービスの会社を1社選んで、決算短信の1枚目だけ開いてみてください。それで十分です。急がなくて大丈夫です。判断に迷ったときは、「山崎の副業相談室(LINEオンラインサロン・無料)」でも相談を受け付けています。個別銘柄の売買助言はできませんが、勧誘の手口が怪しいかどうかの相談は歓迎です。

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