iDeCoの一時金と会社の退職金、受け取る順番と間隔で税金はどう変わる?2026年からの「10年ルール」と退職所得控除の重なり

iDeCoの一時金と会社の退職金、受け取る順番と間隔で税金はどう変わる?2026年からの「10年ルール」と退職所得控除の重なり

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

「iDeCoは60歳で一時金にして、会社の退職金は65歳で受け取る。5年空ければ控除が2回使える」——こうした話を聞いて、受け取りの計画を立てていた会社員の方は少なくないと思います。山崎の副業相談室にも、iDeCoを始めた方から「出口のときの税金がよく分からない」という質問が届きます。

山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時は「どう増やすか」ばかり考えて、お金を受け取るときにどんな税金がかかるのかを調べていませんでした。この記事では、iDeCoの一時金と会社の退職金を両方受け取るときに、受け取る順番と間隔で税金がどう変わるのかを、国税庁と財務省の資料をもとに整理します。

iDeCoとNISAの基本的な違いはiDeCoとNISAは何が違う?60歳まで引き出せない代わりに変わる3つのことで、転職したときの資産の移し方は転職・退職したら企業型DCやiDeCoはどうなる?で説明しています。この記事は受け取るときの税金だけに絞った話です。

目次

結論:2026年1月から、iDeCoの一時金を先に受け取った場合の「調整期間」が延びた

先に要点をまとめます。

  • iDeCoの一時金も、会社の退職金も「退職所得」:どちらも退職所得控除を差し引いた残りの2分の1に課税される、税負担が軽くなりやすい扱いです
  • 両方を受け取ると、控除が重なる期間は調整される:iDeCoの掛金を出していた期間と会社に勤めていた期間が重なっていると、その分の控除は2回使えません
  • 2026年1月1日から、調整の対象期間が延びた:退職金を受け取る年の「前年以前4年内」にiDeCoの一時金を受け取っていると調整されるルールが、令和7年度税制改正で「前年以前9年内」になりました。いわゆる「5年ルール」が「10年ルール」になった、と言われているのはこのことです
  • 退職金が先でも調整はある:退職金を先に受け取り、あとからiDeCoの一時金を受け取る場合にも、別の期間で調整があります
  • 年金形式で受け取れば、退職所得控除とは別の控除になる:iDeCoを年金で受け取ると「雑所得」として公的年金等控除の対象になり、退職金の控除とは重なりません

「何年空ければ得か」は人によって違います。この記事では、損得の判断の前にどの控除がどこで重なるのかという仕組みを押さえることを目的にしています。

まず押さえる:退職所得はどう計算されるか

国税庁のタックスアンサーNo.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」によると、退職所得の金額は次の式で計算します。

退職所得の金額 =(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2

退職所得控除額は、勤続年数で決まります(国税庁 No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」)。

勤続年数(A)退職所得控除額例
20年以下40万円 × A(80万円未満なら80万円)15年 → 600万円
20年超800万円 + 70万円 ×(A − 20年)38年 → 2,060万円

iDeCoを一時金で受け取る場合は、掛金を出していた期間(加入者期間)を勤続年数に当てはめて控除額を計算します。たとえば20年間掛金を出していれば、控除額は800万円です。

なお、役員としての勤続年数が5年以下の人が受け取る退職金(特定役員退職手当等)や、勤続5年以下で受け取る退職金(短期退職手当等)には、2分の1課税が使えない・一部しか使えないといった例外があります。会社員の定年退職では通常あてはまりませんが、短い勤続で辞める場合は確認してください。

2つを受け取るときの「重なり」の調整とは

iDeCoの掛金を出していた期間と、会社に勤めていた期間は、多くの会社員で重なっています。40歳から60歳までiDeCoに加入し、22歳から60歳まで同じ会社に勤めていれば、20年分がまるごと重なります。

この重なった期間について、控除を2回ずつ使えるわけではありません。受け取るタイミングによって、次のように扱いが分かれます。

受け取り方控除の扱い
同じ年に両方受け取る合計額に対して、控除を1つにまとめて計算する(期間は重複しない部分を足し合わせる)
iDeCoの一時金が先、退職金が後退職金を受け取る年の前年以前9年内(2025年までは4年内)にiDeCoの一時金を受け取っていれば、重なった期間の分を退職金の控除から差し引く
退職金が先、iDeCoの一時金が後iDeCoの一時金を受け取る年の前年以前19年内に退職金を受け取っていれば、重なった期間の分を差し引く

「退職金が先・iDeCoの一時金が後」の「前年以前19年内」は今回の改正でも変わっておらず、現行の所得税法施行令 第70条第1項第2号ハにそのまま定められています(2026年10月時点)。

改正の内容は、財務省の「令和7年度税制改正の大綱」と、国税庁の「源泉徴収のあらまし(令和8年版)税制改正等の内容」に載っています。対象は、2026年(令和8年)1月1日以後に支払を受ける退職金です。

なお、「9年内」の調整の対象になるのは、2026年1月1日以後に受け取ったiDeCo等の一時金に限られます。2025年以前に受け取った一時金は、従来どおり退職金を受け取る年の前年以前4年内かどうかで判断します(所得税法施行令 第70条第1項第2号イ・ロ。2026年10月時点)。

計算例:同じ金額でも、受け取り方で課税される額が変わる

仕組みを数字で見てみます。次の条件の会社員を想定します(計算を単純にした概算です。住民税、端数処理、実際の期間の重なり方は考慮していません)。

  • 会社の勤続38年・退職金2,000万円(退職所得控除 2,060万円)
  • iDeCoの加入20年・一時金1,000万円(退職所得控除 800万円)
  • iDeCoの加入期間20年は、すべて会社の勤続期間と重なっている
受け取り方課税される退職所得(概算)
同じ年に両方(3,000万円 − 2,060万円)× 1/2 = 470万円
iDeCoが先・5年後に退職金iDeCo:(1,000万円 − 800万円)× 1/2 = 100万円
退職金:控除 2,060万円 − 800万円 = 1,260万円 → (2,000万円 − 1,260万円)× 1/2 = 370万円
合計 470万円
iDeCoが先・10年以上あけて退職金iDeCo:100万円
退職金:(2,000万円 − 2,060万円)→ 0円
合計 100万円

2025年までのルールなら「5年後」の段で調整がかからず、合計100万円で済んでいた計算です。「5年あければよい」という前提で計画を立てていた人ほど、影響を受けることになります。

一方で、iDeCoの一時金は原則60歳からしか受け取れず、受け取り開始は75歳までに決める必要があります。60歳でiDeCoを受け取り、退職金を10年後の70歳で受け取る、という形は、70歳まで同じ会社で働く人でなければ現実的ではありません。多くの会社員にとっては、「間隔をあけて控除を2回使う」より、「年金形式も含めて受け取り方を組み合わせる」ほうが検討しやすい選択肢になります。

退職金の額や勤続年数は会社の制度で決まります。自分の数字で計算する前に、会社の退職金規程と、iDeCoの記録関連運営管理機関から届く加入者期間の記録を手元にそろえてください。

年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」になる

iDeCoは一時金のほか、年金形式や、一時金と年金の併用で受け取ることもできます(選べる方法は金融機関によって異なります)。年金形式で受け取った分は、退職所得ではなく雑所得になり、国民年金・厚生年金などと合算して公的年金等控除を差し引きます。

国税庁のタックスアンサーNo.1600「公的年金等の課税関係」では、65歳以上で公的年金等の収入金額の合計が110万円までなら、公的年金等の雑所得は0円になるとされています(公的年金等以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合)。65歳未満では、この金額は60万円です。

一時金年金形式
所得の種類退職所得雑所得(公的年金等)
使う控除退職所得控除(退職金と重なると調整)公的年金等控除(公的年金と合算)
課税のしかた2分の1にしたうえで分離課税ほかの所得と合わせて総合課税
気をつける点退職金との間隔・順番公的年金と合わせた金額、受け取りのたびにかかる手数料、国民健康保険料・介護保険料への影響

年金形式にすれば退職金の控除とは重なりませんが、公的年金が多い人はiDeCoの年金を足すと控除の枠を超えやすくなります。どちらが有利かは、退職金の額・公的年金の見込み額・働き方で変わるため、一律には言えません。

受け取りの手続きで忘れやすいこと

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を出す:退職金やiDeCoの一時金を受け取るときにこの申告書を出していれば、源泉徴収で課税が完結し、原則として確定申告は要りません。出していないと、支払額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります(国税庁 No.1420)
  • 過去に受け取った一時金を申告書に書く:iDeCoの一時金を先に受け取っている場合、退職金の申告書にその内容を書く欄があります。書き漏れると、控除が正しく計算されません
  • 受け取り方は請求のときに決める:一時金・年金・併用のどれにするかは、iDeCoの給付を請求するときに選びます。金融機関の書類が届いてから慌てないよう、50代のうちに退職金の受け取り時期を会社に確認しておくと計画が立てやすくなります

「受け取り方で税金がゼロになる」と持ちかける勧誘に注意

退職金やiDeCoの受け取りが近づく時期は、まとまったお金が動くため、勧誘が増える時期でもあります。山崎が調査してきた中には、「退職金の税金を減らす方法がある」と持ちかけて、高額な投資商品や不動産の契約につなげる勧誘がありました。

この記事で見たとおり、受け取り方で変わるのは控除の重なり方であって、制度の外にある「裏ワザ」ではありません。税金の計算は税務署の電話相談や税理士に、受け取り方の選び方は加入している金融機関に確認するのが安全です。投資の勧誘を受けたら、その業者が金融商品取引業の登録を受けているかを金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確かめてください。税金の基本的な考え方は株の税金入門でも整理しています。

関連報道:ダイヤモンド・オンライン「税率30%になることも…59歳から要注意!税金で大損する「老後資金の受け取り方」とは?」

受け取りの前に、いま払える掛金の上限を確かめたい場合は2026年12月からiDeCoの掛金上限はいくらに?会社員は企業年金の有無で変わる「自分の上限」の確かめ方と増額の手続きを参照してください。

退職金やiDeCoとあわせて公的年金の受け取り時期も考えるなら、年金の繰下げ受給は70歳で何%増える?働きながら繰り下げる会社員が知っておく「増えない部分」と損益分岐の考え方もあわせて確認してください。

受け取り方を考える前に、60歳以降も掛金を続けられるか・何歳から受け取れるかを60歳になったらiDeCoはどうなる?掛金を続けられる人・受け取れる年齢・75歳までに決めることで確認しておくと、全体の順番を組み立てやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「5年ルール」はもう使えないのですか?

2026年1月1日以後に受け取る退職金については、iDeCoの一時金を受け取った年から数えて前年以前9年内なら、重なった期間の控除が調整されます。調整を受けずに両方の控除を使うには、おおむね10年の間隔が必要になりました。

Q2. 退職金を先に受け取れば、調整はかからないのですか?

かかります。退職金を先に受け取った場合も、その後に受け取るiDeCoの一時金について、別の期間で重なりの調整があります。順番を入れ替えるだけで控除が2回使えるわけではありません。

Q3. 勤め先に退職金制度がない場合も関係ありますか?

会社から退職金が出ない場合は、iDeCoの一時金だけが退職所得になるため、この記事の重なりの調整は基本的に関係ありません。ただし企業型DCなど、ほかに一時金で受け取る制度がある場合は、それも退職所得として扱われることがあります。

Q4. 一時金と年金の併用を選ぶと、どう計算されますか?

一時金で受け取った部分は退職所得、年金で受け取った部分は雑所得として、それぞれの控除で計算します。一時金の部分には、この記事の重なりの調整がかかります。

まとめ

  • iDeCoの一時金と会社の退職金は、どちらも退職所得控除を使う「退職所得」
  • 掛金を出していた期間と勤続期間が重なると、その分の控除は2回使えない
  • 2026年1月1日から、iDeCoの一時金を先に受け取った場合の調整期間が「前年以前4年内」から「9年内」に延びた
  • 退職金が先でも、iDeCoの一時金の側で調整がある
  • 年金形式で受け取れば公的年金等控除の対象になり、退職金の控除とは重ならないが、公的年金と合算される

困ったときの相談先

  • ① 消費者ホットライン(188)
  • ② 警察相談専用電話(#9110)
  • ③ 法テラス
  • ④ 日本弁護士連合会
  • ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室

退職所得の計算は最寄りの税務署の電話相談や税理士に、iDeCoの受け取り方法は加入している金融機関(運営管理機関)に確認してください。

山崎から一言

300万円を失った頃の山崎は、増やすことばかり考えて、受け取るときのことを一度も考えていませんでした。iDeCoは受け取り方まで含めて1つの制度です。受け取りの10年前から、退職金の時期と合わせて計画しておくと安心です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

iDeCoの一時金と会社の退職金、受け取る順番と間隔で税金はどう変わる?2026年からの「10年ルール」と退職所得控除の重なり

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