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こんにちは、YAMAZAKI JOB MEDIA編集長の山崎正義です。副業詐欺で300万円の借金を背負い、そこから復活する過程で130件以上の案件を調査してきました。
「株の利益は少しだけだから、申告しなくても気づかれないのでは」「暗号資産を売った利益は、税務署にはわからないと聞いた」——投資を始めた会社員の方から、こうした声を聞くことがあります。
証券会社や金融機関から税務署には、取引の情報が届く仕組みがあります。国税庁が2025年12月に公表した調査の集計では、所得税の無申告者に対する実地調査の1件当たりの追徴税額は524万円で、過去最高でした。この記事では、国税庁の公表資料をもとに、投資の利益が税務署に伝わる経路と、会社員が申告すべき場面、申告を忘れていたときの対応を整理します。
特定口座の「源泉徴収あり」と「なし」の違いは株の税金入門|特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?で、副業の掛け持ちで20万円をどう数えるかは副業を掛け持ちしたら20万円は合計で判定?で説明しています。この記事は申告しなかった場合に何が起きるかに絞ります。
結論:投資の利益は「税務署が知らない」前提で考えない
先に要点をまとめます(2026年10月19日時点で国税庁のサイトで確認できた内容です)。
- 特定口座の取引は、源泉徴収ありの口座も含めて証券会社が税務署に報告している
- 海外の口座や海外との送金も、CRSや国外送金等調書で税務署に情報が届く
- 国税庁は無申告者への調査を強めている:令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の所得税無申告者への実地調査は4,812件、追徴税額の総額は252億円でした
- 暗号資産の取引をしている人への調査は1件当たり745万円の追徴:所得税の実地調査全体(299万円)の2.5倍です
- 申告を忘れたら、調査の連絡が来る前に自分から申告するのがいちばん負担が小さい:自主的な期限後申告なら無申告加算税は5%、調査を受けた後だと15〜30%になります
国税庁の最新データ:無申告と投資関連の調査はどうなっているか
2025年12月に国税庁が公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」から、投資や副業に関係する数字を抜き出しました。
| 調査の対象 | 実地調査の件数 | 1件当たりの申告漏れ所得 | 1件当たりの追徴税額 |
|---|---|---|---|
| 所得税の実地調査(特別・一般)全体 | 3万6,404件 | 1,486万円 | 299万円 |
| 所得税の無申告者 | 4,812件 | 2,992万円 | 524万円(過去最高) |
| 暗号資産等の取引を行っている個人 | 613件 | 2,538万円 | 745万円 |
| 海外投資等を行っている個人 | 2,666件 | 3,459万円 | 866万円 |
| シェアリングエコノミー等(ネット通販・アフィリエイトなど) | 1,155件 | 1,595万円 | 305万円 |
出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月)。追徴税額は加算税を含む。期間は令和6年7月〜令和7年6月
実地調査は申告漏れが見込まれる人を選んで行うので、平均額が一般の人の追徴額というわけではありません。それでも、無申告・暗号資産・海外投資の3つが、全体平均より明らかに高いことは読み取れます。
同じ資料の譲渡所得の集計では、株式等の譲渡所得の調査等は4,278件、そのうち申告漏れなどの誤りがあったのは3,879件(90.7%)、申告漏れ所得の合計は459億円でした。
国税庁は調査の対象選びにAIを活用しており、文書や電話で申告の見直しを求める「簡易な接触」も68万9千件(前年55万8千件)に増えています。
投資の利益が税務署に伝わる3つの経路
国税庁が公表している仕組みのうち、個人の投資に関係が深いものは次の3つです。
| 経路 | だれが出すか | どんな情報か |
|---|---|---|
| 特定口座年間取引報告書 | 証券会社などの金融商品取引業者 | 特定口座での1年間の売却額・取得費・損益、配当など。源泉徴収ありの口座も提出対象 |
| 国外送金等調書 | 送金を扱った金融機関 | 100万円を超える国外への送金・国外からの送金の、送金者・受取人・金額など |
| CRS情報(共通報告基準) | 外国の税務当局(租税条約等にもとづく交換) | 日本の居住者が海外の金融機関に持つ口座の残高・利子・配当など |
出典:国税庁「F3-5 特定口座年間取引報告書(同合計表)」、国税庁「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報」
特定口座年間取引報告書は、原則として翌年1月31日までに税務署へ
国税庁の案内では、証券会社は特定口座年間取引報告書を2通作り、原則として翌年1月31日までに、1通を口座がある営業所の所轄税務署長に提出し、もう1通を口座の持ち主に渡します。つまり、あなたの手元に届く報告書と同じ内容が、税務署にも届いているということです。
「源泉徴収あり」の特定口座なら、利益にかかる税金は証券会社が差し引いて納めているので、原則として申告しなくても問題は起きません。注意が要るのは「源泉徴収なし」の特定口座と一般口座です。こちらは税金が差し引かれていないので、申告が必要かどうかを自分で判断することになります。
海外の口座・海外FX・海外の取引所は「見えない」わけではない
CRSは、各国の税務当局が外国居住者の口座情報を交換する国際的な仕組みです。国税庁の調査事例でも、国外送金等調書とCRS情報から海外口座の利子などの申告漏れを把握したケースが紹介されています。
山崎正義が調べた投資勧誘には「海外の業者なら税務署にばれない」と説明するものもありました。日本に住む人の所得は、海外で得たものも含めて日本で課税されるのが原則です。こう説明する業者そのものを疑ってください。
暗号資産の利益は、原則として雑所得
国税庁のタックスアンサーNo.1524「暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」では、暗号資産の売却などで生じた利益は、原則として雑所得に区分されるとしています。株の特定口座のように税金を自動で差し引く仕組みはないので、利益が出たら自分で計算して申告するのが基本です。国税庁は、暗号資産の取引を行っている個人について「資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施」していると書いています。
会社員が申告すべき場面:「20万円」の数え方に注意
会社員(1か所から給与を受け取り、年末調整を受けている人)は、給与と退職金以外の所得の合計が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要です(国税庁No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。投資の利益をこの20万円に数えるかどうかは、口座や商品で変わります。
| 利益の種類 | 20万円の判定に入るか | 補足 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり)の売却益・上場株式の配当で、申告しないことを選んだもの | 入らない | 税金は差し引き済み |
| 特定口座(源泉徴収なし)・一般口座の売却益 | 入る | 他の所得と合わせて20万円超なら申告 |
| 暗号資産の売却益(雑所得) | 入る | 利益(売却額−取得費など)で数える |
| 副業の所得(アフィリエイト・ネット販売など) | 入る | 売上ではなく、経費を引いた所得で数える |
| 預貯金の利子など源泉分離課税のもの | 入らない | 課税は済んでいる |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.1900の「各種の所得金額の合計額に含まれない所得」の記載をもとに整理
間違えやすいのは、「源泉徴収なし」の口座の利益と、暗号資産・副業の所得は合算する点です(株15万円+暗号資産10万円なら25万円で申告が必要)。
なお、20万円以下で所得税の申告が要らなくても、住民税の申告は別に必要になることがあります。お住まいの市区町村で確認してください。
損失が出た年も申告すれば翌年以降に繰り越せる場合があります。詳しくは損益通算と繰越控除の基本で、年末調整の書類に株の利益を書くかどうかは年末調整で株の利益や損失はどう扱う?で説明しています。
申告しなかったらどうなる:無申告加算税と延滞税
申告が必要なのに期限(翌年3月15日)までに出さなかった場合、本来の税金に加えて無申告加算税と延滞税がかかります。無申告加算税の割合は、いつ申告したかで大きく変わります。
| 申告したタイミング | 無申告加算税(納める税金に対する割合) |
|---|---|
| ① 税務署から調査の事前通知が来る前に、自分から申告 | 5% |
| ② 事前通知の後、調査で指摘される前に申告 | 50万円までの部分10%、50万円超300万円までの部分15%、300万円超の部分25% |
| ③ 調査を受けた後・税務署の決定を受けた後 | 50万円までの部分15%、50万円超300万円までの部分20%、300万円超の部分30% |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」(令和5年分以降=法定申告期限が令和6年1月1日以後の取扱い)
過去に加算税を課された人は10%上乗せされる場合があり、さらに納めるまでの日数分の延滞税もかかります。
一方で、期限から1か月以内に自主的に申告し、税金を全額納めているなど、期限内に申告する意思があったと認められる要件をすべて満たす場合は、無申告加算税がかからない扱いもあります(No.2024)。忘れに気づいたら、早いほど負担は小さくなります。
書類を捨てると「隠した」と扱われることがある
国税庁の資料には、会社員が給与のほかにゲーム機やスマートフォンの転売で収入を得ていながら申告していなかった事例が載っています。この人は経費の書類は残していましたが、売上の書類をすべて捨てていました。税務署は取引先への調査で売上を把握し、書類の破棄は隠蔽にあたるとして重加算税を課したうえ、所得税は7年分さかのぼって課税されています。
投資でも、取引履歴は口座を閉じると取り出しにくくなることがあります。年に一度ダウンロードして保管しておくと安心です。
申告を忘れていたときの手順
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. 取引の記録を集める | 特定口座年間取引報告書、一般口座・暗号資産の取引履歴、副業の売上と経費の記録を年ごとにそろえる |
| 2. 年ごとの所得を計算する | 給与以外の所得の合計が20万円を超えるかを確かめる(源泉徴収ありの特定口座の分は除いてよい) |
| 3. 期限後申告をする | 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Taxで作成して提出できる。税務署の窓口でも相談できる |
| 4. 税金を納める | 申告した日が納期限。延滞税も合わせて納める |
計算に自信がなければ、税務署の電話相談や税理士に相談してください。
「税金を先に払えば出金できる」は税務署の仕組みとは無関係
税金の話題に便乗した投資詐欺にも注意してください。山崎正義の調査では、投資アプリやSNSで勧誘された人が「利益を出金するには、先に税金を払う必要がある」と言われ、追加でお金を振り込ませられる手口が繰り返し確認されています。
投資の利益の税金は、証券会社が差し引くか、自分で確定申告して税務署に納めるものです。業者に「税金」を先払いして出金する仕組みはありません。手口の具体例はStockEaseは怪しい?出金前に税金を求めるFXアプリを調査でまとめています。

「出金のために税金を払って」と言われたら、振り込む前に消費者ホットライン188か警察相談専用電話#9110に相談してください。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「富裕層必見!国税庁の『最新課税戦略』とは?無申告者を徹底追及、新興ビジネスへの対応強化…国税庁・富裕層管理チームOBの税理士が徹底分析【後編】」
よくある質問
Q1. 源泉徴収ありの特定口座だけで取引しています。申告しなくても大丈夫ですか?
源泉徴収ありの特定口座の売却益や上場株式の配当は、申告しないことを選べば、20万円の判定にも入りません(No.1900)。ただし、ほかの口座で損失が出ていて相殺したい場合や、損失を翌年に繰り越したい場合は、申告したほうが有利になることがあります。
Q2. 何年前までさかのぼって課税されますか?
個別の事情で変わります。国税庁の公表事例には、書類の破棄が隠蔽と判断され、所得税を7年分さかのぼって課税したケースがあります。気づいた時点で早めに税務署か税理士に相談してください。
Q3. NISAの利益も申告が必要ですか?
NISA口座の売却益や配当は非課税なので、確定申告は不要です。ただし、NISA口座で出た損失はほかの口座の利益と相殺できず、繰り越すこともできません。
Q4. 申告を忘れたことを会社に知られますか?
期限後申告をすると、住民税の額が変わることがあります。住民税を給与から天引き(特別徴収)している場合、会社に届く住民税の通知の金額が変わる可能性があります。副業や投資の収入を会社にどう伝えるかは、就業規則を確認したうえで判断してください。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
確定申告が必要かどうかや税額の計算は、税務署の電話相談センター(国税局電話相談センター)や税理士に確認してください。
山崎から一言



300万円を失ったころの山崎は、税金のことまで頭が回っていませんでした。利益が出たときこそ、記録を残して申告の要否を確かめる。地味ですが、それが自分のお金を守るいちばん確実な方法です。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度・数値は2026年10月19日時点で国税庁が公表している資料にもとづきます。個別の申告の要否や税額は、税務署または税理士にご確認ください。










