※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
「親が1口100万円の不動産小口化商品を持っているらしい」「副業でワンルームを買って貸しているが、相続のときはいくらの扱いになるのか」——会社員の方から、こうした質問が届くことが増えました。貸している不動産は、相続税の計算では買った値段よりかなり低く評価されることが多く、それを前提にした商品や勧誘も出回っています。その評価のルールが、2027年1月から変わる方針が示されています。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時は「税金が減る」「いまだけ」という言葉に弱く、仕組みを確かめる前に動いていました。この記事では、貸している不動産と不動産小口化商品が、相続のときにいまどう評価され、2027年1月から何が変わる方針なのかを、財務省・国税庁・国土交通省の公表資料をもとに整理します。
上場している株を相続したときの手続きは親が亡くなったら株はどうなる?相続した株の名義変更(移管)の手順と、評価額の決まり方で、非上場の株は親の会社の株(非上場株)を相続したら、いくらで評価される?で説明しています。この記事は貸している不動産と、その小口化商品に絞った話です。
結論:2027年1月以後の相続から、「買って5年以内の賃貸物件」と「不動産小口化商品」は時価に近い金額で評価する方針。細かい範囲はまだ決まっていない
先に要点をまとめます(2026年10月13日時点で確認できた内容です)。
- いまのルールでは、貸している不動産は市場の値段より低く評価されやすい:土地は路線価、建物は固定資産税評価額をもとにし、貸していることによる減額もあります
- 見直し①:亡くなる前5年以内に買った・建てた一定の貸付用不動産は、「通常の取引価額」で評価する:買った値段をもとに地価の変動などを考慮した金額の80%で評価できる、という扱いも示されています
- 見直し②:不動産小口化商品などは、いつ買ったかに関係なく「通常の取引価額」で評価する:5年を過ぎても、路線価ベースの評価には戻りません
- 始まるのは2027年(令和9年)1月1日以後の相続などから:財務省「令和8年度税制改正の大綱」に書かれています
- 「一定の」が指す範囲などの細部は、国税庁の通達で決まる:本稿の時点で、その通達の公表は確認できていません
| 持っているもの | いまの評価の考え方 | 2027年1月以後(大綱の方針) |
|---|---|---|
| 買って(建てて)5年以内の賃貸物件 | 路線価・固定資産税評価額をもとに、貸していることによる減額あり | 通常の取引価額(取得価額をもとにした金額の80%で評価できる扱いあり) |
| 5年を超えて持っている賃貸物件 | 同上 | 大綱に変更の記載なし |
| 不動産小口化商品(一定の不動産特定共同事業契約など) | 持分に応じて、不動産として上と同じ考え方で評価されてきた | 取得の時期にかかわらず通常の取引価額 |
| 自宅など貸していない不動産 | 路線価・固定資産税評価額 | 今回の見直しの対象は「貸付用不動産」 |
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱(2/9)」(2025年12月26日閣議決定)の「相続税等の財産評価の適正化」。
いまのルール:なぜ貸している不動産は「買った値段より低く」評価されるのか
相続税は、亡くなった時点の財産の値段(時価)に対してかかります。ただ、不動産には株のような毎日の値段がありません。そこで国税庁が定めた計算方法(財産評価基本通達)で値段を出します。
土地は路線価、建物は固定資産税評価額がもとになる
市街地の土地は、道路ごとに国税庁が毎年公表する「路線価」に面積を掛けて計算します。路線価は、国が公表する土地の価格(公示価格)の8割程度を目安に決められています。建物は、市区町村が決める固定資産税評価額をそのまま使います。この金額は、新築にかかった費用より低くなるのが普通です。
人に貸していると、さらに減額される
貸している建物の敷地は「貸家建付地(かしやたてつけち)」と呼ばれ、次の式で評価します。
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
入居者がいると、持ち主は土地や建物を自由に使えません。その不自由さのぶんを差し引く、という考え方です。借地権割合は地域ごとに路線価図に書かれています。建物のほうも、貸している部分について借家権割合のぶんが差し引かれます。
出典:国税庁 タックスアンサー No.4614「貸家建付地の評価」
現金のまま持つ場合との差が「節税」として売られてきた
現金1億円は、相続税の計算でも1億円です。一方、1億円で買った賃貸用の不動産は、上の計算を通すと1億円よりかなり低い金額になることがあります。この差に目をつけて、「亡くなる前に現金を賃貸不動産に換える」「1口数百万円の小口化商品を買って子どもに分けやすくする」という提案が広がりました。
大綱は見直しの理由を、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額がかけ離れている実態を踏まえたもの、と説明しています。マンションについては、先に2024年1月から評価の補正が始まっています(国税庁 タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」)。今回はその対象を、貸している不動産と小口化商品に広げる流れと読めます。
見直し①:亡くなる前5年以内に買った・建てた賃貸物件
大綱に書かれている内容を、順に確認します。
| 項目 | 大綱の内容 |
|---|---|
| 対象 | 被相続人等が課税時期(亡くなった日など)前5年以内に、対価を伴う取引で取得または新築をした一定の貸付用不動産 |
| 評価の方法 | 課税時期における通常の取引価額に相当する金額 |
| 簡便な扱い | 課税上の弊害がない限り、取得価額をもとに地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80で評価できる |
| いつから | 令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産 |
| 適用しないもの | 通達で定める日までに、その日の5年前から持っている土地に新築した家屋(その日に建築中のものを含む) |
読み方のポイントは3つあります。
- 「対価を伴う取引」が対象:お金を払って買った・建てた不動産の話です。親から相続で引き継いだ不動産を貸している場合は、文言上はここに当たりません
- 5年は「亡くなった日からさかのぼって」数える:買った日から5年たてば自動的に安心、という話ではなく、いつ相続が起きるかで決まります。自分で選べない日付が基準です
- 昔から持っている土地に建てたアパートには配慮がある:通達で定める日までに新築した(建築中を含む)家屋は、見直し①の対象から外すと書かれています。その「日」は通達で決まります
見直し②:不動産小口化商品は「いつ買ったか」に関係なく対象
不動産小口化商品とは何か
ひとつの建物を多くの人でお金を出し合って持ち、家賃などの収益を分け合う商品です。国土交通省は、出資を募って不動産を売買・賃貸などで運用し、収益を分配する事業を「不動産特定共同事業」と呼び、行うには原則として国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要としています。
契約の形には、主に次の種類があります。
| 契約の形 | お金を出した人の立場 | よくある商品 |
|---|---|---|
| 任意組合型 | 組合員として、不動産の持分を持つ形になる | 1口100万円〜の小口化商品。相続対策として案内されることが多い |
| 匿名組合型 | 事業者に出資するだけで、不動産そのものは持たない | 1口1万円〜の不動産クラウドファンディング |
| 賃貸型 | 不動産を共有し、事業者に貸す・任せる | 共有持分を買う形の商品 |
大綱に書かれていること
大綱は、「不動産特定共同事業契約」または「信託受益権に係る金融商品取引契約」のうち一定のものにもとづく権利の目的になっている貸付用不動産について、取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額で評価するとしています。
通常の取引価額は、課税上の弊害がない限り、次のような金額を参考にして求めてよいとされています。
- 出資者の求めに応じて事業者が示した、適正な処分価格・買取価格など
- 事業者が把握している適正な売買実例価額
- 定期報告書などに書かれた不動産の価格
これらに当たるものがない場合は、見直し①の方法に準じて評価する、とも書かれています。
つまり、小口化商品を持っている家庭では、相続が起きたときに事業者から届いている報告書や、事業者に問い合わせて示される価格が評価の手がかりになる方向です。書類の保管が、これまで以上に大事になります。
どの商品が当たるのかは、通達を待つ必要がある
「一定のもの」に、どの契約の形が含まれるのかは、大綱からは読み切れません。任意組合型の小口化商品は、これまで「不動産の持分」として路線価ベースで評価されてきたため、見直しの中心になると考えるのが自然です。一方、匿名組合型の不動産クラウドファンディングや、信託受益権を使った不動産デジタル証券(セキュリティトークン)がどう扱われるのかは、通達で確かめる必要があります。
なお、証券取引所に上場している不動産投資信託(J-REIT)は、上場株式と同じように取引所の値段をもとに評価します。もともと市場の値段で評価されているので、今回の話とは別です。
会社員の家庭で確認しておきたい4つのこと
この見直しは、不動産をたくさん持つ資産家だけの話ではありません。親が退職金で小口化商品を買っていた、自分が副業でワンルームを1戸持っている、という家庭にも関係します。
- 親や自分が持っているものの「契約の形」を確かめる:契約書や重要事項説明書に、任意組合・匿名組合・信託受益権のどれなのかが書かれています。商品名だけでは判断できません
- 買った日と買った値段がわかる書類を残す:見直し①は「5年以内か」「取得価額はいくらか」が計算の出発点になります。売買契約書・領収書は捨てないでください
- 事業者から届く報告書を保管する:小口化商品では、定期報告書に書かれた不動産の価格が評価の参考になる方向です
- 「相続税がいくら減る」という試算の前提を聞き直す:購入時にもらった試算が、いまのルールで計算されたものなら、2027年以後の相続には当てはまらない可能性があります
相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、財産の合計がこれ以下なら相続税はかかりません。評価が上がっても、そもそも課税されない家庭もあります。あわてる前に、まず家全体の財産をおおまかに書き出すことをおすすめします。
「年内に買えば間に合う」という勧誘に注意する
制度が変わる前後は、変更そのものを材料にした勧誘が増えます。山崎正義が130件以上の副業・投資案件を調べてきた経験では、「期限」と「節税」が同時に出てくる話は、立ち止まって確かめる価値があります。
| よくある言い方 | 確かめること |
|---|---|
| 「年内に買えば、いまの評価が使えます」 | 基準は買った日ではなく、相続などが起きる日です。2027年1月以後に相続が起きれば、年内に買ったものも見直し①の「5年以内」に入りえます |
| 「小口化商品なら5年たてば元の評価に戻ります」 | 大綱は、小口化商品などを「取得の時期にかかわらず」としています |
| 「相続税が7割減ります」 | いまのルールでの試算か、見直し後の試算かを聞いてください。数字を保証する説明は、それだけで注意のサインです |
| 「国の許可を受けた事業者なので安心です」 | 許可は事業を行うための条件で、元本や収益を保証するものではありません。許可の有無は国土交通省・都道府県の公表情報で確かめられます |

不動産小口化商品は、元本が保証されず、運用期間の途中で換金しにくいものが多い商品です。税金の話だけで決めず、「途中でお金が必要になったらどうなるか」を先に確認してください。
山崎の見解:節税は「おまけ」。投資として納得できるかを先に見る
山崎正義は、税金が減ること自体を悪いとは考えていません。ただ、評価のルールは今回のように変わります。変わったとたんに買った理由がなくなる商品は、もともと投資としての中身が弱かった、ということです。
貸している不動産や小口化商品を検討するなら、順番は次のとおりです。まず、家賃収入・空室・修繕・売るときの値段を含めて、投資として納得できるか。次に、途中で現金が必要になったときに換金できるか。税金の効果を見るのは、そのあとで十分です。山崎が300万円を失ったときは、この順番が逆でした。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「富裕層の相続対策を直撃!『貸付不動産5年ルール』と『不動産小口化商品』の評価が来年から激変へ」
よくある質問
Q1. すでに持っている小口化商品も、見直しの対象になりますか?
大綱は、小口化商品などについて「取得の時期にかかわらず」と書いています。また、見直しは令和9年1月1日以後に相続等で取得する財産に適用するとされています。文言どおりなら、すでに持っているものでも、2027年1月以後に相続が起きれば新しい評価の対象になりえます。自分の商品が「一定のもの」に当たるかは、通達の公表後に事業者または税理士へ確認してください。
Q2. 10年前に買って貸しているワンルームは、どうなりますか?
見直し①の対象は、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産です。5年を超えて持っている賃貸物件について、大綱に評価を変える記載はありません。ただし、区分所有のマンションには2024年1月から別の補正(国税庁 タックスアンサー No.4667)が入っています。
Q3. 贈与の場合も関係しますか?
大綱の表現は「相続等により取得をする財産」です。財産の評価方法は相続税と贈与税で共通の通達を使うため、贈与にも関係する見込みですが、正確な範囲は通達で確認してください。
Q4. 評価が上がるなら、いまのうちに売ったほうがいいですか?
この記事では、売る・買うの判断はお伝えできません。売れば譲渡所得の税金がかかることがあり、小口化商品は途中で売れない・売値が下がることもあります。相続税がかかる家庭かどうか、ほかの財産とのバランスはどうかで答えが変わるので、税理士に全体を見てもらうのが確実です。
Q5. 自宅の評価も上がりますか?
今回の見直しは「貸付用不動産」が対象です。自分や家族が住んでいる家は、大綱のこの項目には含まれていません。
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
不動産の評価額や相続税・贈与税の計算は税務署または税理士に、不動産特定共同事業の事業者についての相談は許可をした国土交通省または都道府県の窓口に確認してください。
山崎から一言



300万円を失った頃の山崎は、「いまだけ」「税金が減る」と言われると、仕組みを確かめる前に動いていました。制度が変わる年は、その言葉がいちばん増える年です。まずは親や自分が持っている商品の契約書と、買った日・買った値段のわかる書類を、手元にそろえるところから始めてください。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年10月13日時点で財務省・国税庁・国土交通省が公表している資料にもとづきます。個別の税額の計算は税理士にご確認ください。












