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「60歳になったら、iDeCoは自動で受け取りになるのか」「定年後も掛金を出し続けられるのか」——50代の会社員の方から、こうした質問を受けることが増えました。iDeCoは60歳を境に、掛金を出せるかどうか・いつから受け取れるかのルールが切り替わります。しかも2026年12月から、掛金を出せる年齢の上限が変わります。
山崎正義は、投資で一発逆転を狙って300万円を失った経験があります。当時は「入口」ばかり見て、お金をいつ・どう取り出すのかを考えていませんでした。この記事では、60歳以降にiDeCoがどうなるのか(掛金を続けられる人・受け取れる年齢・75歳までに決めること)を、厚生労働省と国民年金基金連合会の公表資料をもとに整理します。
掛金の上限額は2026年12月からiDeCoの掛金上限はいくらに?で、受け取るときの税金はiDeCoの一時金と会社の退職金、受け取る順番と間隔で税金はどう変わる?で説明しています。この記事は60歳以降の「続ける・止める・受け取る」の選び方に絞った話です。
結論:60歳で自動的に受け取りにはならない。選ぶのは「続ける・運用だけ続ける・受け取る」の3つ
先に要点をまとめます(2026年10月時点で公表されている内容です)。
- 60歳になっても、自動で受け取りは始まらない:受け取るには自分で請求の手続きをします。請求できる期間は、受け取れる年齢になってから75歳になるまでです
- 60歳から受け取れるのは、加入期間などが通算10年以上ある人:10年に満たないと、受け取れる年齢が61歳〜65歳に後ろへずれます
- 掛金を出し続けられるかは、働き方で変わる:60歳以降も厚生年金に入って働く会社員は、今のルールでも65歳になるまで掛金を出せます
- 2026年12月からは、条件を満たせば70歳になるまで掛金を出せる:退職して国民年金の被保険者でなくなった人も、申出をすれば続けられるようになります
- 一度受け取ると、掛金を出す側には戻れない:iDeCoの老齢給付金や老齢基礎年金を受け取った人は、加入できません
| 60歳以降の選択肢 | どうなるか | 気をつける点 |
|---|---|---|
| ① 掛金を出し続ける | 掛金は引き続き全額が所得控除の対象になる | 加入できる条件を満たしている必要がある。所得が減ると、税金が減る額も小さくなる |
| ② 掛金は止めて運用だけ続ける(運用指図者) | これまでの資産を運用しながら、受け取る時期を待つ | 掛金を出さなくても口座の手数料はかかる。値下がりすることもある |
| ③ 受け取る | 一時金・年金・その組み合わせから選んで請求する | 受け取ると加入に戻れない。受け取り方で税金が変わる |
60歳以降も掛金を出せるのは、どんな人か
iDeCoに加入できるのは、原則として国民年金の被保険者です。国民年金基金連合会のiDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」では、会社員や公務員など厚生年金の被保険者は「第2号加入者」として加入でき、60歳以上65歳未満で国民年金の納付済期間が480月に達していない人は、任意加入被保険者として加入できると説明されています。
会社員の場合に置き換えると、今のルールでは次のようになります。
| 60歳以降の働き方 | 今のルール | 2026年12月から |
|---|---|---|
| 再雇用などで厚生年金に入って働き続ける | 65歳になるまで掛金を出せる | 65歳以降も、条件を満たして申出をすれば70歳になるまで出せる |
| 60歳で退職して、厚生年金に入らない | 国民年金に任意加入できる人を除いて、掛金を出せない(運用だけ続けるか、受け取る) | 直前までiDeCoに掛金を出していた人は、申出をすれば70歳になるまで出せる |
| 掛金を止めて運用だけ続けている(運用指図者) | 国民年金の被保険者でなければ、掛金を再開できない | 70歳になるまでなら、再び掛金を出せる |
| 退職して企業型DCの資産をiDeCoへ移す | 国民年金の被保険者でなければ、移した後に掛金は出せない | 移した先のiDeCoで、70歳になるまで掛金を出せる |
右の列は、厚生労働省の「iDeCo加入可能年齢の引き上げイメージ」(厚生労働省・PDF)にもとづきます。この資料では、国民年金の被保険者でない60歳以上70歳未満の人のうち、①直前までiDeCoの加入者だった人、②iDeCoの運用指図者だった人、③企業型DCなどの年金資産をiDeCoに移す人が対象とされています。上限額は月62,000円(企業年金などがある場合は合算)です。
押さえておきたいのは次の2点です。
- 自動では続かない:資料には「申出を行うことで引き続きiDeCoに加入できる」と書かれています。退職などで国民年金の資格を失ったときは、加入先の金融機関(運営管理機関)に手続きを確認してください。
- 経過措置がある:2029年(令和11年)11月末までは、上の①〜③に当てはまらない60歳〜70歳未満の人も、新たに加入できます

老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取った人は、2026年12月以降もどのパターンでも加入できません。「受け取ってから、やっぱり掛金を出したい」はできないので、注意してください。
受け取れる年齢は「通算加入者等期間」で決まる
iDeCoの老齢給付金は、原則60歳から受け取れます。ただし、60歳から受け取るには条件があります。iDeCo公式サイト「iDeCo加入者・運用指図者の方へ」と厚生労働省「iDeCoの概要」によると、60歳になるまでの「通算加入者等期間」が10年以上必要で、足りない場合は次のように受け取れる年齢が後ろへずれます。
| 60歳時点の通算加入者等期間 | 受け取れるようになる年齢 |
|---|---|
| 10年以上 | 60歳 |
| 8年以上10年未満 | 61歳 |
| 6年以上8年未満 | 62歳 |
| 4年以上6年未満 | 63歳 |
| 2年以上4年未満 | 64歳 |
| 1月以上2年未満 | 65歳 |
通算加入者等期間は、確定拠出年金の加入者だった期間と、掛金を出さずに運用だけしていた運用指図者の期間を合わせたものです。iDeCoだけでなく、会社の企業型DCに入っていた期間も合算されます。一方、iDeCo公式サイトのFAQでは、転職・退職後に手続きをせず「自動移換」になっていた期間は算入されないとされています(自動移換については転職・退職したら企業型DCやiDeCoはどうなる?で説明しています)。
年齢別の例
企業型DCの加入歴がなく、iDeCoだけに加入した場合の例です。
| iDeCoを始めた年齢 | 60歳時点の期間 | 受け取れるようになる年齢 |
|---|---|---|
| 48歳 | 12年 | 60歳 |
| 52歳 | 8年 | 61歳 |
| 55歳 | 5年 | 63歳 |
| 58歳6か月 | 1年6か月 | 65歳 |
50代で始めた人は、「60歳で受け取って住宅ローンの返済に充てる」といった予定が成り立たない場合があります。なお、60歳以上で初めて加入した人は、通算加入者等期間がなくても、加入から5年を経過した日から受け取れます。
自分の通算加入者等期間は、加入先から届く書類や加入者向けサイトで確認できます。分からなければ、加入先の金融機関(運営管理機関)のコールセンターに問い合わせるのが確実です。
受け取りの期限は75歳。自分で請求しないと始まらない
受け取れる年齢になっても、何もしなければお金は口座に置かれたままです。iDeCo公式サイトによると、受け取りを始める時期は75歳になるまでの間で選べ、請求は記録関連運営管理機関に対して行います。75歳までに請求しなかった場合は、法務局に供託されるとされています。
受け取り方は次の3つです。
| 受け取り方 | 内容 |
|---|---|
| 一時金 | 一括で受け取る |
| 年金 | 原則5年以上20年以下の有期年金として分けて受け取る(金融機関によっては終身年金を選べる場合もある) |
| 一時金と年金の組み合わせ | 一部を一時金で、残りを年金で受け取る(扱いの有無は加入先に確認する) |
どの受け取り方を選ぶかで、税金の計算が変わります。一時金は退職所得、年金は雑所得(公的年金等)として扱われ、会社の退職金を受け取る時期との間隔も関係します。ここはiDeCoの一時金と退職金の受け取り順の記事で詳しく整理しています。
受け取りを待つ間、投資信託で運用していれば値動きの影響を受け続けます。「待てば増える」とは限りません。受け取りの時期が近づいたら、値動きのある商品にどれだけ置いておくかを考えておく必要があります。
掛金を止めても手数料はかかる
60歳以降に掛金を止めて運用だけ続ける場合も、口座を持っているかぎり手数料がかかります。iDeCoの手数料は、支払先が3つに分かれています。
| 支払先 | 内容 |
|---|---|
| 国民年金基金連合会 | 加入時などに2,829円。掛金を出している間は、掛金の納付のたびに105円 |
| 事務委託先金融機関(信託銀行) | 資産の管理や給付の事務にかかる手数料。金額は金融機関によって違う |
| 運営管理機関(加入先の金融機関) | 口座管理の手数料。無料の金融機関もあれば、有料の金融機関もある |
このうち国民年金基金連合会の分は、見直しが決まっています。国民年金基金連合会「iDeCo加入者に係る手数料を見直します」(PDF)によると、加入中の手数料は105円(掛金拠出時)から120円(月額)に変わり、2027年1月26日の口座引落し分の掛金から適用されます。掛金を毎月出している人なら、年間で1,260円から1,440円になる計算です。加入者側の手続きは不要です。
掛金を出さない運用指図者には、連合会の加入中の手数料はかかりませんが、事務委託先金融機関と運営管理機関の手数料は残ります。残高が少ないまま長く置いておくと、手数料で資産が目減りすることもあるため、加入先の手数料表で「運用指図者」の欄を確認してください。
50代のうちに確かめておきたい5つのこと
60歳になってから慌てないために、山崎が先に確認しておいてほしいと考える項目です。
| 確かめること | 確かめ方・理由 |
|---|---|
| 通算加入者等期間は60歳時点で何年になるか | 加入先の書類・サイトで確認する。10年に満たなければ、受け取れる年齢が61〜65歳になる |
| 60歳以降の働き方 | 厚生年金に入って働くか、退職するかで、掛金を続ける手続きが変わる |
| 会社の退職金をいつ受け取るか | iDeCoの一時金と退職金の間隔で、退職所得控除の使い方が変わる |
| 公的年金をいつから受け取るか | 老齢基礎年金を受け取ると、iDeCoの掛金は出せなくなる。繰下げを考えている人は年金の繰下げ受給の記事も参考に |
| 60歳以降に使う予定のお金が別にあるか | 受け取れる年齢が後ろへずれても困らないよう、当面の生活費は預貯金などで確保しておく |
掛金を出し続けるかどうかは、「出せるか」だけで決めないでください。再雇用で給与が下がると、所得控除で税金が減る額も小さくなります。掛金は全額所得控除になりますが、これは税金が減る額であって、運用で増える額ではありません。
「60歳からでも間に合う」と急がせる勧誘に注意
制度が変わる時期は、それを口実にした勧誘が増える時期でもあります。山崎が調査してきた中には、「70歳まで積み立てられるようになった」という話を入り口に、iDeCoとは関係のない高額な投資商品や、退職金の運用をうたう投資スクールの契約へつなげる勧誘がありました。退職金というまとまったお金が入る時期は、とくに狙われやすい時期です。
iDeCoの手続きは、加入先の金融機関(運営管理機関)か、国民年金基金連合会が運営するiDeCo公式サイトで確認できます。SNSや電話で「代わりに手続きします」「今月中に決めないと損をします」と言われても、その場で個人情報や口座情報を伝えないでください。投資の勧誘を受けたら、その業者が登録を受けているかを金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確かめるのが確実です。
関連報道:ダイヤモンド・オンライン「50代のうちに絶対やって!「60歳以降のiDeCo活用」を成功させる〈たった1つのコツ〉」
よくある質問(FAQ)
Q1. 60歳になったら、何か手続きをしないといけませんか?
受け取る場合は、自分で請求の手続きが必要です。受け取らずに置いておくこともでき、その場合は75歳になるまでに請求します。掛金を出し続けられるか、手続きが要るかは働き方によって違うため、60歳になる前に加入先の金融機関に確認しておくと安心です。
Q2. 55歳からiDeCoを始めても意味はありますか?
始めることはできますが、60歳時点の通算加入者等期間が5年なら、受け取れるのは63歳からです。60歳で使いたいお金を入れるのには向きません。掛金の所得控除の効果と、受け取りまで引き出せないこと・手数料がかかることを比べて、ご自身で判断してください。
Q3. 一時金で一部だけ受け取って、残りに掛金を出し続けることはできますか?
できません。iDeCoの老齢給付金を受け取った人(一括で受け取った場合を含む)は、iDeCoに加入できないとされています。掛金を出し続けたい間は、受け取りの請求をしないことになります。
Q4. 会社の企業型DCに入っていた期間は、10年の計算に入りますか?
入ります。通算加入者等期間は、企業型DCとiDeCoの加入者だった期間・運用指図者だった期間を合わせて数えます。ただし、転職や退職のあとに手続きをせず自動移換になっていた期間は数えません。正確な期間は、加入先の金融機関で確認してください。
Q5. 75歳まで請求を忘れていたら、お金はなくなりますか?
iDeCo公式サイトでは、75歳までに請求しなかった場合は法務局に供託されると説明されています。その後の受け取りには別の手続きが必要になるため、住所変更の届出を済ませ、加入先から届く書類を確認できる状態にしておいてください。
まとめ
- 60歳になっても、iDeCoは自動で受け取りにならない。受け取るには自分で請求する
- 60歳から受け取れるのは、通算加入者等期間が10年以上ある人。足りないと61〜65歳にずれる
- 受け取りを始める時期は75歳になるまでの間で選べる。請求しないと法務局に供託される
- 厚生年金に入って働く会社員は、今のルールでも65歳になるまで掛金を出せる
- 2026年12月からは、条件を満たして申出をすれば、70歳になるまで掛金を出せる
- iDeCoの老齢給付金や老齢基礎年金を受け取った人は、加入できない
- 掛金を止めても手数料はかかる。国民年金基金連合会の加入中の手数料は、2027年1月の引落し分から月120円になる
困ったときの相談先
- ① 消費者ホットライン(188)
- ② 警察相談専用電話(#9110)
- ③ 法テラス
- ④ 日本弁護士連合会
- ⑤ 金融庁 金融サービス利用者相談室
iDeCoの加入期間・手数料・受け取りの手続きは加入先の金融機関(運営管理機関)に、受け取るときの税金は税務署や税理士に確認してください。
山崎から一言



300万円を失った頃の山崎は、お金を入れることばかり考えて、いつ・どう取り出すのかを決めていませんでした。iDeCoは「出口」を自分で決める制度です。60歳が近づく前に、まず自分の加入期間を確かめるところから始めてください。



本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。制度の内容は2026年10月時点で厚生労働省・国民年金基金連合会が公表している資料にもとづきます。












